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【全文無料】R-1グランプリに出る前に【アマチュア必読】


はじめに

お世話になります。

どくさいスイッチ企画という名義で一人コントを、
銀杏亭魚折という名義で新作落語の口演を行っている者です。

R-1グランプリ2024の開催決定が発表されました。

公式発表前に開催情報をすっぱ抜いた一部報道にあったとおり「芸歴制限を撤廃し、全ての方に出場していただける大会にいたします」との文言があります。この「全ての方」にアマチュア=事務所に所属していない素人も含まれているとするならば、つまり、本当に誰でも出られる大会になる、ということです。誰でも出られるなら出てみようかな、とお考えのあなた。あなたに向かって僕は文章を書いています。これは、R-1グランプリに出場を考えているアマチュア向けの記事です。ぜひ最後までご覧ください。

本当に出場しますか

まず、アマチュアがR-1グランプリに出るメリットは基本的にありません。
同じくアマチュアが参加できるお笑いの賞レース「M-1グランプリ」と比較してメリットの無さを説明します。

・大会自体の知名度
学校や職場の飲み会で「こいつM-1グランプリに出場したことあるんだぜ」という話題が出たら「誰と出たんですか?」「ウケたんですか?」「有名人と会いました?」「そういえば今年のM-1ってどうだった?」という感じで話が広がっていくことが予想されます。かなり盛り上がるでしょう。
では「僕、R-1グランプリに出たことがあるんですよ」と自己申告した場合はどうでしょうか。「R-1グランプリ?なにそれ?」「一人芸の大会です」「へーっ、そういうのがあるんだ」以上です。会話は進展しません。
M-1グランプリと比較して、R-1グランプリは圧倒的に知られていません。昨年の決勝の視聴率は関西地区で9.5%だったそうです。今年(2023年)の優勝者を覚えていますか?田津原理音さんです。では去年の優勝者は?R-1のチャンピオンがテレビで活躍しているのを見たことがありますか?僕はアマチュアでは唯一2022年と2023年に連続で準々決勝まで進出したのですが、それによってお笑い界隈以外から受けた恩恵は全くありません。3300人くらい出た大会の110人くらいに2回連続で残ったにも関わらず、です。話のネタにするならM-1グランプリに出て、大失敗したほうがよほど有益です。

・パフォーマンスすることに意義がある?
「たくさんの人に自分を見てもらいたい」という欲求があったとします。R-1グランプリの一回戦でそれを叶えることは可能でしょうか。
M-1グランプリは毎年参加者数が増え、一回戦の段階で会場は満席、中には当日券がとれない会場も出てきています。さらに各日の「ベスト3」と「ナイスアマチュア賞」の動画はYoutubeにアップされ、大会および芸人さんの知名度向上に一役買っています。
一方、R-1グランプリはどうでしょうか。一回戦のお客さんの人数は例年20人程度です。当日券は余裕で確保できるでしょう。そしてその20人は、海底に眠る古代遺跡のように、ほぼ全く反応を返しません。500円を払い笑いに来ているはずなのに、です。全員が沈痛な面持ちで押し黙っているのです。
エントリー料2000円に対し持ち時間は2分です。その上で恐怖を感じるほど重たい空気の中でパフォーマンスを行うことになります。あなたの自己表現欲求はおそらく満たせません。カラオケ、オープンマイク、エントリー制のお笑いライブなど、あなたがもっと輝ける場所は他にあるかもしれません。

・努力を分かち合える仲間がいない
R-1グランプリはひとりで出場する大会です。M-1グランプリと違い、相方が存在しません。あなたの思いつきで笑い(もしくはあなたを思いつきで笑わせ)、あなたとカラオケボックスや夜の公園で練習し、あなたとともに舞台袖で緊張し、あなたとともにスマホを観ながら当落に一喜一憂し、あなたと打ち上げでああだこうだ言い合い、あなたとの大切な思い出を作ってくれる相方はいません。M-1グランプリ出場を通じて得られる誰かとの特別な絆は、基本的にR-1グランプリにはありません。

以上を踏まえたうえで、もう一度、R-1に出るかご検討願います。
なお、去年(2022年)の優勝者はお見送り芸人しんいちさんです。

本当に出場できますか

再三の確認となり申し訳ありません。繰り返しお伺いするのには理由があります。R-1に限らず、賞レースの一回戦は、アマチュアによる当日無断キャンセルが非常に多いからです。出場すると決めた以上は出場してください。以下、例年のR-1グランプリの申込手順について簡単に記載します。

・事前の応募
申込用紙の入手(HPからのダウンロード)→記入→事務局への送付→HPで発表される出場日程と集合時間の確認(メール等による告示はありません。ご自身での確認が必要です)→音響を使用する場合はオペレーターの確保(オペレーターは自力で確保する必要があります)

・当日の会場にて
集合時間に会場に行く→エントリー費2000円を払う→進行表を書く(大道具や音響の使用の有無を聞かれます)→楽屋で待機する→出番(2分)→出番を追えたら速やかに帰る(引き続き一回戦を観る場合は入場料が必要です)

・当日の夜
審査結果をアメブロで確認する(メール等による告示はありません。ご自身での確認が必要です)→2回戦に進出していれば日程を確認する→希望日程をメールで送付する

以上、当落に関わらずこれだけの手続きを踏む必要があります。
無断キャンセルは最悪です。R-1の場合、あなたは会場に行かないだけで総てを終わらせられますが、その分、多数の大人が余計な仕事をすることになります。申し込む前に熟考をお願いします。そして申し込んだ場合、無断キャンセルをすることなく、必ず連絡して辞退するか、出場してください。

「面白い」ことをしますか

R-1グランプリは「とにかく面白いピン芸」の№1を決める大会と規定されています。この「ピン芸」の部分はとても幅が広いです。漫談もコントもフリップ芸も、ダンスも歌もパントマイムも、その他あらゆる一人で行う表現が「ピン芸」に該当してしまいます。これがR-1グランプリの魅力でもあり、一回戦のお客様を疲弊させる原因ともなっています。
規定の中でもうひとつ考えておくべき言葉があります。「面白い」です。この場合の「面白い」は「興味深い」「感動を与える」よりも「笑える」という意味が適切です。中学英語で恐縮ですが、interestingよりもfunny、というやつです。R-1グランプリは「お笑い」の大会です。ここを把握していない方が毎年、毎年、悲劇を繰り返しています。R-1グランプリはお笑いの大会です。特定の政党への舌鋒鋭い批判、前衛的なダンス、真心をこめたオリジナルソング、これらは単体では一回戦を合格する可能性が限りなく低いです。クオリティや情熱の話以前に、笑いをとることを目的としていないからです。繰り返しになりますがR-1の一回戦にたくさんの人は集まっていません。多くの人にアピールしたいという理由でR-1一回戦への出場を検討している場合、もっと他に出るべき場所がないか再考してみてください。

ネタを作れますか

では、どのようにして笑いをとればいいのでしょうか?ここで必要になるのが「ネタ」です。R-1一回戦におけるネタとは、笑いをとることを目的とした2分間程度のパフォーマンスです。これを読んでいるあなたが、どれくらい面白い方なのかは分かりませんが、ネタについては絶対に準備していったほうが良いです。アドリブで乗り切るには2分は長すぎます。当たり前ですが、プロの芸人さんですらめちゃくちゃ準備しています。徒手空拳で挑む素人は見れば分かるし見ていられません。ネタを作りましょう。

下記の動画は、僕がR-1グランプリの予選で上演したネタです。ジャンルとしては「コント」に該当するもので、2022年に1回戦・2回戦を通過することができたネタです。2分のネタ作りの参考になれば幸いです。(需要があれば別途、ネタ作りについても記事を書きたいです)

ネタを人に見せられますか

作成したネタは積極的に人に見せましょう。家族や友人など誰でもOKです。ネタの形になっていなくても「こういうことをやろうと思っている」というふわっとした相談でもOKです。誰かに話して笑ってもらえれば自信になるし、批評をもらえれば改善ができます。ネタを人に見せることを推奨する理由は他にもあります。R-1グランプリ一回戦出場を通じて、他人と対話ができるのは、この「ネタを見せる」過程だけだからです。あなたがR-1グランプリに真摯に向き合い、何かしらの努力をしていることを周知するタイミングはここしかありません。知り合いにネタを見せるのは恥ずかしい、という方、あなたはこれからもっと恥ずかしいことをしようとしています。海底に眠る古代遺跡に向けてネタをしなければいけないのです。それとも、知人には見せられない何かをする予定なのですか?

何が書いてあるのか全くわからない方へ

R-1グランプリに出てください。やりたいことがあるのですね。R-1グランプリに出て下さい。理屈ではないですね。R-1グランプリに出てください。出ていないのにガタガタ言うのが一番ダサいですからね。R-1グランプリに出てください。一回出てから来年以降のことを考えましょう。R-1グランプリに出てください。当日無断キャンセルだけはしないようお願いします。

おわりに

繰り返しになりますが、アマチュアがR-1に出るメリットは基本的にありません。それでも、R-1グランプリに出場する方を僕は心から応援します。一人で舞台に立つ人、笑いをとろうと努力する人こそ本当に凄いと思うからです。皆様が熟考の上、R-1グランプリに注目し、何かを得てくださることを願っています。そしてR-1グランプリという大会そのものが、より大きく、より盛り上がっていくことを、一ファンとして心から願っています。

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「どくさいスイッチ企画と銀杏亭魚折」
というアカウント名でYoutubeをやっています。
コントと新作落語の動画を投稿しています。
ぜひご視聴、高評価、チャンネル登録をお願いいたします。

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