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【異世界しっこく日記】「英雄」の影を追って【FF7】

‎‎ そちらの世界で、恐らくこの作品を相当好きだった人が手放したのだろう。
‎ この暗闇に、『FINAL FANTASY Ⅶ』というタイトルのゲームが、束になって流れてきたことがある。同じタイトルで、前か後ろに少したされた作品がいくつか入っていたので、シリーズもしくは派生作品と捉えるのが良いだろうか。
 
‎ それにしても何作も派生作品があるというのは、余程人気がある作品のようだな。「VII」とついているからには1〜6まで同じタイトルの別作品があるのだろうし、前にプレイしたドラゴンクエスト然り、そちらの世界でゲームというものがどれだけの人々に支持されているのかが伺える。
 
‎ パソコン、インターネットというのは便利なもので、ファイナルファンタジーという作品について私に詳しく教えてくれた。
‎ FFという略称で世界中から親しまれている……これには少し口元が緩んだ。そちらの世界では何でもかんでも略称をつける文化があるのだな。前回の日記で綴ったドラゴンクエストも「ドラクエ」と呼ばれているようだし、そもそもパソコンというのもパーソナルコンピュータの略称だと言うでは無いか。
‎ 私も異世界の文化にどんどん染ってきているということか。
 
‎ FF7をプレイするためのハードが流れてくるまで、またしばらく時間がかかった。
‎ ひとつのハードでは全てのFF7をプレイすることは不可能だったので、恐らく何十年と待ったと思われる。正確な時間を把握出来ていない点については許して欲しい。如何せん私の世界での時間を確認するものが手元に無いので、一体どれだけの時間が経ったのか私には分からないのだ。
 
‎ 長い年月がたったと思われる頃、ネットで調べた通りのハードが全て揃ったので、私はFF7という作品の全てを知ることにしたのだった。





進化する世界

‎ まず電源をつけて驚いたことといえば、画面の中に広がる世界である。
‎ 初めて触ったゲームがドラゴンクエストだった私だが、そちらで言う「ドット絵」から驚きの進化を遂げていることに目玉が兜から飛び出そうになった。
‎ 異世界人の技術力には圧倒されるばかりである。もうほぼ現実と変わらないでは無いか!
‎ 作り込まれたフィールドを探索するのは、普段道を歩いているのと何ら変わらない。
‎ 容量の増加により使用BGMの数も増えているようだ。ゲームの世界はなんと面白い。
 
‎ と、最初にただの『FF7』をプレイして驚いていた私だが、この後『CRISIS CORE』『ADVENT CHILDREN』『REMAKE』をプレイ・鑑賞してさらに驚くことになった。
 
‎ なんだあれは、もはや現実ではないか!
 
‎ これからあと何回この反応をすることになるだろうか。考えるだけでワクワクが止まらない。異世界人はもっと前からこの感動を味わっていたのだな。
‎ 感動するということを長い年月忘れていた私にとって、そちらの世界の人間たちがとても羨ましい。
 
‎ これを読んでいる異世界人たちは、ぜひ自分の好きな物に対するプラスの感情を大切にして欲しい。
‎ それは永久的なものでは無い。いつか、前触れもなく奪われることになるかもしれないのだ。


大きくて強すぎる二文字

 「英雄」
 
‎ 聞いただけで目を細めてしまう、強い言葉だ。
‎ 前回の日記で「勇者になりたかった」と綴ったが、勇者と英雄を同意義とするならば、私は英雄になりたかったのだろう。

‎ 守りたかったものは全て失った今、英雄から一番遠い場所まで流されてしまった。しかし、英雄となった私の周りに人々の笑顔が咲くのを、今でも夢に見る。
 
‎ 私の世界にも世間から英雄と呼ばれる者がいたのだろうが、それが一体どんな顔をして何を成し遂げのか私は知らない。だが、私の記憶にはたった一人、英雄と呼ぶにふさわしいと思える男がいる。彼の話は、いつか日記に綴るだろう。
 
‎ 本作に登場するキャラクターの中で、「ソルジャー」と呼ばれる職業につく者たちは、皆が英雄になることを夢みているようだった。
 
‎ 本作で明確に周りから英雄と位置付けられているのはセフィロスのみだが、プレイヤー目線から見ればザックスももう1人の英雄と言っても過言では無いだろう。
  
‎ 田舎の少年が都会で活躍する英雄に憧れる……というのは私の世界でもよくある話だ。
‎ ザックスがソルジャーになったこと、ジェノバに意識を囚われたクラウドが、ザックスの記憶を自分の記憶と混同して話していたことのどちらを見ても、彼らにとって英雄がどれだけ大きな存在かが良くわかる。
 
‎ 私にとっても英雄とはあまりにも大きすぎる存在だった。
‎ ……少し私の話をしすぎたか。

‎ ここからは、私が特に気に入ったキャラクター・宿敵セフィロスに焦点を当てて、私の主観で感じ取ったことを書いていく。


抱えた闇はどれほどか

‎ クラウド
‎ セフィロス 
 
‎ 2人の男が抱えた闇と孤独は私には計りきれない。
‎ 2人はどちらも孤独を抱えているが、お互いがお互いを分かり合うことはないのであった。
 
‎ クラウドの孤独は故郷が燃えたこと、英雄だと信じていた人物に裏切られたこと、母を失ったこと、自分の大切なものを何一つ守れなかったことから来ていると私は思う。

‎ ここで言う彼の大切なものとは、セフィロスという「英雄像」も含む。

‎ 都会のミッドガルから離れたニブルヘイムよりはるばる英雄の影を追って来たのだ、彼にとってセフィロスという英雄は自分の道標だったことだろう。信じていた英雄を失ったことで、幼なじみに誓った夢も同時に失ってしまったのだ。
‎ 限界まで追い詰められた彼の精神はジェノバによって蝕まれ、我々のよく知るクラウドが完成したわけである。

‎ セフィロスの孤独については、触れれば全身黒く染ってしまいそうなほど闇が深い。
‎ 彼は自分の出生について何も知らない。 父親も、本当の母親も知らず、故郷もない。自分の父親である宝条からは、母の名は「ジェノバ」だと聞かされていた。  宝条博士とセフィロスの付き合いはかなり長い(というか産まれたときから?)はずだが、その間、宝条はセフィロスに一度も、自分が父親であることを明かさなかったようだ。セフィロスも、宝条に対しては「コンプレックスの塊のような男だ」とどこか嫌悪感を抱いていたようだった。
‎ 宝条という男もまた孤独な男だったのかもしれないが、セフィロスが救われない世界線は産まれたそのときから始まっていたということには変わりない。


執着心はない

‎ そちらの世界ではセフィロスと言えば「ストーカー」というイメージが強いようだな。 ストーカーとは対象をしつこく付け回す者のことを指すようだが、私はセフィロスのことをそんな風に呼ばれて心外である。

‎ FF7をやったことがあるならわかってくれると思うのだが、実際最初に追いかけられていたのはセフィロスのほうだ。

‎ ストーリー序盤では、星の命を救うために魔晄炉を破壊しようと立ち上がった反神羅組織「アバランチ」と、アバランチに雇われた自称元ソルジャークラス1stのクラウド、そしてストーリーの鍵となるエアリスが、神羅カンパニーと対立する様子が描かれる。 序盤はセフィロスはほぼ出番なし。 クラウドの過去についても特に触れられずにストーリーが進む。
‎ しかし、プレジデント神羅(神羅カンパニーの社長)がセフィロス(の姿を模したジェノバ)に殺されたことをきっかけに、クラウド達はセフィロスを追うことになる。

‎ ここまで読んで理解してくれただろうか、クラウド達の方がセフィロスを消そうと(復讐?)追いかけているのだ!!

‎ それに、クラウドとセフィロス(と言ってもセフィロスに化けたジェノバだが)が最初に会話するシーンでは、セフィロスはクラウドに対して「クラウド……? 誰だそれは」と返している。  アドベントチルドレンやリメイクで垣間見れる、セフィロスのクラウドへの執着は、原作ではほぼ無いに等しい。

‎ セフィロスは、「お前は人形だ」という台詞からみてとれるように、クラウドのことを利用しているだけに過ぎず、恐らく彼に対して特別な感情がある訳ではない。 利用するだけなら誰でもよかったのかと聞かれるとそうではないだろうが、ただ、彼がセフィロスと同じ因子のジェノバ細胞を持っているから選ばれた、それだけだと私は思う。

‎ だからここで私は声を大にして書かせてもらう。

‎ セフィロスはクラウドのストーカーではないのだ! 

 

光は儚く消えるもの

 ‎ セフィロスという男のどこに惹かれたのか、思い返してみれば、彼のその儚さと出生から今までの闇の重さが、自分と少し重なって見えたからかもしれない。

‎ 彼は産まれてからソルジャーとして活躍し世間に「英雄」と謳われるその日まで、ただ孤独だったことだろう。きっと同年代の友達などおらず、仕事を淡々とこなす日々が続くだけ。無機質な時間がずっと続いていたのだと思う。

‎ しかし、そんな彼にも心を許せる仲間ができる。ジェネシスとアンジールだ。

‎ 3人は同じクラス1stのソルジャーとして活躍し、お互いがお互いに心を許し合える、唯一の友といえた。

‎ FF7CCでは、そんな心を許せる友が皆、自分に何も言わずに消えていく過程が描かれる。(主人公はザックスだが) その友を、神羅は「殺せ」と命じる……セフィロスにとって、これがどれだけ辛い出来事だったかは計り知れない。

‎  孤独な日々が続いていた彼に差し込んだ唯一の光が消えたのは、このときだ。

‎ 私にも唯一の光と呼べる人物がいた。
‎ 上に書いた「私にとって英雄のような人」の事だが、彼のことを書くにはまだ少し時間がいる。


英雄はなぜ英雄をやめたのか

‎ プレイ済の者ならば誰もが知っている、セフィロスがニブルヘイムを炎に包んだあの日の話をしよう。

‎ セフィロスが村ひとつ丸ごと燃やしてしまったのは、神羅屋敷で自分とジェノバの関係を知ったからだ。 長くなってしまうので、そこについては詳しく書かない。是非プレイしてくれ。

‎ 私がここで話したいのは、「なぜ彼がここまで壊れてしまったのか」ということ。

‎ あくまで私の考えだが、そこには

・親友2人との別れ
・ジェノバの影響
・昔からの孤独


‎ の3つが関係していると思われる。

‎ 神羅屋敷でジェノバのことを知る前、セフィロスは、アンジールの死やジェネシスとの対立を経験した。心を許し、信頼していた友との別れ。 知らずのうちに彼の心の支えとなっていたものが、2つ、なくなった。

‎ もうひとつは、彼の心に積み重ねられた孤独。 両親を知らずに育った。故郷も知らなかった。人の温もりに触れることはなく、目の前のものを斬るだけ。 セフィロスは、神羅屋敷の地下にこもっていたそのときも、ずっとずっと孤独だったのだ。

‎ そして、ジェノバの影響。 ジェノバ細胞を植え付けられた人間は、身体能力が飛躍的に上昇する。 しかし、強い精神力をもちあわせていないとジェノバに乗っ取られ「分離した体」と同じ状態になる。 これは当初のクラウドの状態だ。

‎ セフィロスもジェノバに乗っ取られてしまったのではないかと思う。

‎ 今までは、「何も知らなかったから」精神が崩れる云々など関係なかった。 しかし、親友との別れや孤独の積み重ねが相まった状態で、ジェノバのことを知り、「神羅が自分の母を奪った」と憎しみに包まれて、それまで保たれていたものが崩れた。
‎ そうして彼の強い精神は弱り、ジェノバに乗っとられた。 今度は「何も知らなかったから」精神が崩れてしまったという訳だ。 周りの人間があまりにも言葉足らずすぎる。誰かが何か一つでも教えてあげていれば……。

‎ この私の考えの裏付けは、セフィロスの一人称の変化である。
‎ 英雄時代……本来のセフィロスの一人称は「俺」。 しかし、ニブルヘイムを燃やしてジェノバの首と共に魔晄炉へ落ち、死んだと思われていたが再び戻ってきたセフィロスの一人称は、「私」なのだ。

‎ 別人だ……!

‎ ではなぜ

‎ 死んだはずのセフィロスはライフストリームと同化しなかったのか?

‎ 
調べたところによると、設定ではセフィロス自身の強大な自我によって人格が保たれていたとなっている。

‎ 私はこれにもジェノバの影響があると思う。そして、それに加えてセフィロス本人の意思もある。

‎ セフィロスの
「自分を利用した神羅への復讐」

‎ ジェノバの
「星を支配しようとする欲望」

‎ 
この2つがセフィロスの体を通してひとつになり、セフィロスの強大な自我を生んだ。
‎ そして、彼は災厄の存在として生まれ変わってしまったわけである。


この物語の土台とは

‎ FF7CC(クライシスコア)にて、アンジールのセリフにこのようなものがある。 

「モンスターの目的など、復讐か世界征服しか思いつかん」

‎ 
私はこれが、「セフィロス」と「ジェノバに乗っ取られたセフィロス」のことも暗示しているのではないかとかんじた。
‎ 本作の物語は、セフィロスという男の復讐と征服のふたつが複雑に絡まって土台をつくりあげているのだ。

‎ セフィロスは本作の中で最も傷つけられた、神羅の、研究の被害者。彼は研究者たちの欲望が産んだ哀れなモンスターである。
‎ ガスト博士とイファルナさえ出会わなければ、セフィロスはずっと古代種として生きていられた。しかし、2人は出会い、ガスト博士は真実を知ってセフィロスの元から去り、エアリスが生まれたことによって、セフィロスは正真正銘「モンスター」となった。

‎ 悲しくも、エアリスとセフィロスは対極の存在となったのだ。

‎  セフィロスは「父親のように慕っていたガスト博士」「"古代種の血を引くもの"という肩書き」「必要だった仲間」も全てエアリスにある意味では取られてしまったわけだが、こう考えると彼ほど悲しい男はいないだろう……。
‎ どうしても主人公の悲しい過去に目が行きがちだが、良く考えればクラウドには仲間がいるのだ。
‎ セフィロスにはもう、力以外何も残っていないのである。


英雄の影

‎ セフィロスは、元に戻すことも出来ないほど壊れた心で、永遠に誰かを憎み続けた。 これからも永遠に憎み続けるのかもしれない。

‎ 悠久と言えるほどの時間を暗闇で漂っている私には、彼の気持ちが少しわかる。

‎ 憎しみは無いが、寒くて凍えるような、だが煮えたぎるような、矛盾した感情が渦をまくほどの孤独が私の体内を巡っている。彼もきっとそうだろう。私などに推測されたくはないだろうがね。

‎ 彼にまだ心があったなら、彼はきっと、英雄の肩書きも、賞賛の声もいらなかっただろう。

‎ ただ、みんなと同じ「当たり前の愛」が欲しかった。 誰にでも平等に与えられるはずの、無償の愛。 
‎ そして、人間になりたかった。 誰も彼もと同じ、普通の人間に。

‎ こうして暗闇を漂い続ける、私と同じようにね。




‎ 英雄、勇者

‎ 人を惑わせる、なんて強い言葉だ。

‎ 私もそんな、なにか壮大なものになりたくて騎士になったが、今の私の姿を見れば誰もが理解する。
‎ 夢敗れたものの末路がどれだけ悲惨かを。


‎ 今の私には何もないが、いつか、誰かが私のことを見つけてくれる日を待っている。
‎ この暗闇に手を差し伸べてくれるその日を。



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