大塚家具の16ヶ月決算について。決算は最長で1年半まで可能という事実

昨日、渦中の大塚家具が決算期を変更する旨を開示しました。
決算期の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ
これによると現在12月31日としている決算月を4月30日に変更するようです。
前々回の記事にて、「一定期間の儲け」の一定期間は通常1年と書きましたが、ちょうどいいところに大塚家具が決算期を変更してくれたのでここぞとばかりにネタにさせてもらいます。

会計期間は「原則」1年

出ました「原則」。日本人の性格なのか、原則を設けるも例外ばかり採用され例外が原則みたいな感じになるアレです。
まあそれは置いておくとして実はこの1年という期間は法律で決まっています。(正確には法律に紐づく法務省令ですが、簡便的に法律とします。)

会社計算規則第59条第2項
各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
会社計算規則第71条第2項
各事業年度に係る計算書類の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。

59条の方は株式会社の規定で、71条の方は持分会社(合同会社等)の規定ですが、書いてある内容はほぼ同一です。
計算書類は決算書と思ってもらえればいいです。附属明細書も決算書の脚注的と思ってもらえれば十分です。ここで事業に係る年度は1年を超えることができないと決められているため通常の会社は1年を基準に決算書を作成しているんですね。(この規定を意識したうえで決算書を作成している人はそうそういないと思いますが)
しかし、よく見たら1年というワードの後にかっこ書きでなんか書いてありますね。

事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月

そうです。決算期を変更した直後の決算期のみ1年半までは許可されているのです。これが原則1年とする決算期の例外です。
なので、決算期を変更した直後であれば最大18ヶ月の期間に対して儲けを計算することになります。今回大塚家具は最大の18ヶ月ではなく16ヶ月の決算としたわけですから法律の定める範囲内で当然合法です。
しかし、決算期を変更した理由が少し気になりますね。開示された文書を見ると変更理由は「事業の繁忙期と年度決算手続きの時期が重なる現状に鑑み~」とあります。
スタートアップや中小企業のような経理も営業もみんな一丸だぜ!みたいな会社であれば事業の繁忙期と決算手続きが重なると大変なのは理解できます。
しかし大塚家具は昭和44年に設立し、昭和55年にはジャスダックに上場しています。そんな会社がいまさら繁忙期と決算手続きが重なるから決算期を変更しますってなんか変じゃないですか?まして大塚家具のビジネスは極めてシンプルで、家具販売事業しか行っておらず、かつ、子会社の規模が非常に小さいため連結決算書も作成していません。有価証券報告書も100ページ超の会社が当たり前のようにある中でわずか76ページ(直前期)です。それで決算手続きが大変なんです~と言われても正直本当に?って感じです。
もちろん僕は大塚家具の人間ではないので実際のところはわかりません。本当に繁忙期と決算手続きが重なってもうダメだみたいな状況なのかもしれません。また、新事業にも取り組んでいくようなのでそちらの兼ね合いかもしれません。(仮にそうだったとしても変更の理由は「現状」を理由にしているので食い違うことになりますが)

税務上は1年を超えることができない

はあ?と思われる人が多いと思いますが、法人税の計算をするうえでは1年を超えることはできません。会社法は1年半を許しても法人税法は許していません。

法人税法第13条1項  事業年度の意義
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第3項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第4項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が1年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、その1年未満の期間)をいう。

そのため、大塚家具の場合、2019年1月1日~2019年12月31日まででいったん法人税の計算をし、さらに2020年1月1日~2020年4月30日でもう一回法人税の計算をすることになります。その後は2020年5月1日~2021年4月30日で会計上も税務上も計算期間はお互い一致することになります。
国としては年に1回は最低でも税金計算しろよということなんでしょう。

まとめ

通常は会計上も税務上も一致する決算期ですが、実は細かい違いがあることがわかりました。
会計(会社法)上は最大1年半まで、税務(法人税)上は最大1年までです。
もちろん最大値が異なるだけなので、決算期を変更して1年未満で決算をすることになる場合はお互い一致します。
定款を変更して事業の範囲を大幅に増やしたり、監査法人をできたばかりの監査法人に変えたり、監査等委員会設置会社から監査役会設置会社に変更したりと色々変えようとしていることがわかる大塚家具ですが、果たしてこれらが功を奏するのかは誰にもわかりません。今後の大塚家具の行く末を見守っていきたいですね。

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