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4、福祉拠点が担うべき防災、「ここにくれば誰かに会える」がもたらす暮らしの確かさ #介護×防災

74才のベテランのパタンナーの方から、熱心に洋服のリメイクを教わっているまちの方々の様子。2017年より約1年間にわたって運営した、東京、豊島区は椎名町の「長崎二丁目家庭科室」を撮影したものです。1000名が通ってくださった、毎日の暮らしの中で居場所として存在したこの場所。
今回のテーマ、防災についても非常にリンクするものがありました。

福祉の環境を設計する上で、防災について学んでおこうと、9月1日(防災の日)に開催された、リアル防災ワークショップ ~介護×防災 自然災害にどう備えるか?!命を守る介護現場の防災対策~(主催:慶應ヘルスサービス研究会、共催:KAIGO LEADERS、ケースメソッド・ラボ、日本ケースメソッド学会ケース作成研究部会)に参加しました。

「日常における居場所を持てるか持てないかで、災害時の結果が大きく変わる」

ワークショップでは、第一部にケーススタデイを用いたデイスカッション形式のワーク。ある社会福祉法人の現場での実話を元にしたシーンで、登場人物を追体験しながら、どう意思決定するべきなのか、するべきだったのか?考えを巡らせる体験をしました。

私が一番印象に残ったのは、第二部。「災害時の外部支援を考える」でした。東日本大震災で実際に被災された岩手県大船渡市の社会福祉法人 典人会 専務理事の内出幸美さんが語る生々しい被災状況。
何より、「福祉避難所」という言葉。福祉施設に助けを求める地域住民の数や求められた役割については、私の予想以上のものでした。内出さんの体験談を続けます。

避難生活における、高齢者は高齢者だけ、子どもは子どもだけ、障がい者は障がい者だけという考え方を払拭し、赤ちゃんからお年寄りまで総世代で生きることの多様な助け合いにつながることを実感できた拠点づくりの核(サポートセンター)を地域住民と共に推進していくことが重要

(地域共生の可能性・社会福祉法人 典人会 専務理事 内出幸美さん)

一瞬の判断が生死を分ける極限の中での様子は、言葉にするのも非常に難しいですが、こうした体験談を話してくださるのは大変貴重なことでした。


内出さんのメッセージは、福祉に関する人が必ず頭に入れておかなければならないことだと思います。(少し、整理してテキストにしています)

災害時の大事な価値観は、「全員の命を守る」ということ。そのために、物・人・心構えについて備える必要がある。

物・人について。
予め複数の市町村や都道府県・各種団体と災害時の支援体制をつくり、平時に訓練を兼ねて行き来すること。

心構えについて。
厄災にしなやかに対応できる、まちづくり。ケア事業者が利用者のケアを行なうだけではなく、昨今では地域づくりへの貢献も社会的に求められている。住民一人一人に目を向けた「拠点(居場所)づくり」、「地域介護力アップを目指す」「心構えとして、お互いさまの関係であるという地域共生の考え方」が必要。

社会福祉法人 典人会 専務理事 内出幸美さん

ここにくれば誰かに会える、核のコミュニティが点在する。それは生きる上での確かさにつながります。そうしたコミュニティが存在することは、暮らす楽しさも、暮らしの安心も同時に意味するのだと、とても貴重なメッセージを頂きました。

そのコミュニティがあれば、介護のこと、お互い様のこと、自然と知識も考えも共有できてゆくものです。それも普段から、さりげなく当たり前にある存在同士として。

私は出来れば、その「核」を、福祉に関係する場所が担えればより良いなと思っています。普段からケアする対象者を限定せず、広げてゆく。それを実践していくことが、私が出来る防災の考え方なのだと、今回、防災を改めて学びながら、今後の福祉環境を設計する上で大きく後押しをして頂いた時間でした。


当日のレポートはこちら。ワークショップの光景がとても丁寧にレポートされているので、ご一読をおすすめします。

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このワークショップのわずか5日後、9月6日に北海道胆振東部地震が起きてしまいました...。内出さんの所属するサンダーバード、災害派遣介護チームでは、被災地の介護現場の支援活動を進めるための寄付・支援も募られていらっしゃるとのこと。

支援をぜひ共に寄せましょう。


藤岡聡子
株式会社ReDo 代表取締役/福祉環境設計士
info(@)redo.co.jp
http://redo.co.jp/

私、藤岡聡子については、下記記事を読んでみてください。
・灯台もと暮らし
【子育てと仕事を学ぶ #1 】藤岡聡子「いろんなことを手放すと、生死と向き合う勇気と覚悟がわいてきた
月刊ソトコト 巻頭インタビュー
・soar
「私、生ききった!」と思える場所を作りたかった。多世代で暮らしの知恵を学び合う豊島区の「長崎二丁目家庭科室」

おまけに:
読み物:人の流れを再構築する、小さな実践について|藤岡聡子
人の流れはどのようにして新しく、懐かしく再構築できるのだろうか?その大きな問いに対して、小さな実践を綴っているマガジンもあります(本音たっぷりで書いています。)