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Day4: 「朝起きて、一番最初に頭に浮かぶ”やりたいこと”」から始まる対話で、患者の生きる力を引き出す医師の実践 #PositiveNIPPONプロジェクト

2019.4月から始まった、限定15人の「ポジティヴヘルス」を日本に拡める伝道者研修「PositiveNIPPONプロジェクト」。このマガジンでは、2019.4.13、27の国内研修、5.30〜オランダでの現地研修、そして日本におけるポジティヴヘルスについて、個人の見地をアーカイブしていきます。


▶︎ 家庭医の実践

ミスター・ポジティヴヘルスの異名を持つ、ハンス医師の元を訪ねました。オランダにおける医療制度で、医療のオープンゲートナーである家庭医であるハンス医師。ポジティヴヘルスを土台とした、対話を元にして、どのように患者と話をしているのか、その様子や、蓄積されたデータを紹介してくれました。

ハンス医師からは、以下の話が中心になります。

・症状についての話よりも、「生きがい」について話すことが最も重要であること
・医師は、患者が話し始めて16秒で遮ってしまう。遮らずに患者自身が2分間話をする時間をとるとーーー
→結果的に全体の診療時間は短くなる
→患者自身がなぜ診療に来たのかを自覚する
→患者の半分が、患者自身が問題だと思っていたことが、そもそも問題ではなかった
という結果になった。

【ポジティヴヘルスを土台にしたレベル別手法:ナノレベル】
・同じ職業同士が、学びあえる本を作成、広く周知する

【ポジティヴヘルスを土台にしたレベル別手法:診療所の職員レベル】
・共有のインフラに書き込み、情報を常にアップデートする
・職員の間でも困ったことからではなく、「メンバーに共有したい、うまくいっていること」から会話や打ち合わせをスタートさせる

【ポジティヴヘルスを土台にしたレベル別手法:地域・地区レベル】
・地区ごとの課題を確実に収集する
・出来るだけ、違う業種や、地区にある企業、お店など地域のリソースを使う
・収集した上で、この地区でうまくいっていることをピックアップし、それを強化していく

【ポジティヴヘルスを土台にしたレベル別手法:行政レベル】
・「Affeden samen beter アファーデン(地域の名前)で一緒に良くなろう」プロジェクトを作る。
行政の職員も共に、ポジティヴヘルスの研修を受け、共通言語を持ちチームビルディング。民間も行政も一緒になり地域に必要な動きをつくっていく。

【ポジティヴヘルスを土台にしたレベル別手法:マクロレベル】
・保険会社との交渉
・データを蓄積し、医療費の削減に繋がる証拠を確実に作り、市民も医療者側も払いすぎない・受け取りすぎない、医療保険の仕組みをつくる努力を続ける

を中心に1時間以上に及ぶレクチャーをしてくださいました。

ご自身が医師になった経緯や娘さんを亡くし、喪失の中で出会うこととなったポジティヴヘルスの考え方、そして実践事例を余すところなくお話ししてくださいました。

▶︎ ポジティヴヘルスを土台にした問診の様子

ハンス医師と共に、ある方のご自宅を訪問。ポジティヴヘルスのツールであるクモの巣を使って、対話の様子を実際に見せてもらいました。

ハンス医師が持つ、物腰の柔らかさ、傾聴する姿勢。わずかな時間の中で、これまで培ってきた患者さんとの信頼関係や、患者さんがやりたいと思うことへの献身的なサポートをするやりとりが、とても印象的でした。

医師と患者の関係性が変わるだけで、こんなにも前を向く表情が生まれるのか、ということに、大きな可能性を感じる時間になりました。

▶︎ 住宅共同組合が行う居場所づくり Living room project

ハンス医師と共に、地域の居場所 Living room project へ伺いました。
高齢者の日中の活動場所として、住宅共同組合が場づくりをしている場所です。

ここで最も印象的だったのは、出来ることは自分でやる、という姿勢をみなさんが持っているということ。座ってただお茶が運ばれて来るのを待つのではなく、欲しいから取りに行く、誰かに配りたいから、動く。ケアされる側とケアする側が行き来するような瞬間が何度もありました。

また、こうした居場所があることを、地域の医師が知っていること・もしくは関わっていることで、診療で出す処方箋が、「Living room project へ行くこと」となることもあり得る話です。

いわゆる薬以外の社会的処方というようですが、そうしたことが地域内で当たり前に行われている様子を見聞きすることができました。

★なお、今回ご紹介している視察先は2024年現在、大変な知名度を誇り有名なため、受け入れが難しくなっているとのことです。ご承知おきください。

Day1:「ポジティヴヘルス」を日本に拡める伝道者研修「#PositiveNIPPONプロジェクト」の始まり
Day2:自ら実践できないものを、人に強いることはできない。「クモの巣」を使った対話が、ポジティブヘルスの土台。
(Interval)  よき「老い方」ってなんだろう?大前提として、隠しだてをしない「話しあえる」文化をつくること。
Day3: 自ら・そして人の強みに目を向ける習慣をつくっていく。
▶︎Day4: 「朝起きて、一番最初に頭に浮かぶ”やりたいこと”」から始まる対話で、患者の生きる力を引き出す医師の実践
Day5:人を含めた地域全体が持続的に健康な状態であることを目指す実践こそ、持続的かつ確実な変化を促せる。

更新日:2024.3.31

藤岡聡子
福祉環境設計士⁑軽井沢町・ほっちのロッヂ 共同代表⁑PositiveNIPPONプロジェクトメンバー