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【2】フリースクールなのに学習支援が大切な理由~なっちゃんへの引継ぎnoteフリースクール学習支援の手引き~

本シリーズは、「おうちフリースクールを一緒に手伝ってくれている新卒のなっちゃん(23才/山形県鶴岡市出身/かに座)に向けて書いた業務引き継ぎノート」というスタイルで構成します。
わたなべの「おうちフリースクールでぃありす」での実践内容の中でも、もっとも大切にしていた”学習”についてのあれこれを書き残していきます。
おうちフリースクールを運営中の方、ホームラーナーをサポート中の方にお役立て頂けたら嬉しいです。

【1】はじめに より

なっちゃん、今日もお疲れ様でした。
先週は自主研修として、県外4か所ものフリースクールの見学に行かれたとのこと。いかがでしたか?
市の施設の中にあるような大規模なスクール、畑のど真ん中にある農業スクール、プログラミングに特化したスクール、1日の過ごし方は完全に生徒さんの意思に任せられているスクール…。
よそのフリースクールを巡れば巡るほど、その多様性にびっくりしたことと思います。

現在日本のフリースクール事情のいい所でもあり課題でもある点、それはフリースクールの運営様式が、まだまだ各スクールに委ねられているところです。悪く言えば、国の管理がほとんど届いていない状態なので、子ども達やその保護者は、慎重にスクールを選ばなくてはいけません。
一方で我々スクール運営者にしてみれば、自分が「これは本当に大切だと思う」ことを存分に詰め込んだスクールづくりが行いやすいとも言えます。

私が「おうちフリースクールでぃありす」を運営する上で一番大切にしている事は、ご存知の通り学習支援、そして徹底した進路支援です。
「でぃありす」って変なスクール名ですね。
これは「Dear Restarters」の略で、「もう一度頑張りたい君のための場所」という意味です。「Dear シマリスさん」じゃないんだな。
フリースクールを始めようと決心する人の多く(というか99%)が、何かしらの強いきっかけを経験し、その出来事に突き動かされるようにして立ち上がるように思います。

私は、学校やその他の環境でたまたま運悪くうまくいかなくなってしまったけれど、心の底では「もう一度頑張りたい」と葛藤している中学生に再起の場所を用意したくて、おうちフリースクールを作りました。

だから、「無理しなくていいよ」とか「頑張らなくていいよ」というスタンスのスクールさんとは、結構性格が違うんじゃないかな。
(この国では、ある時期から「頑張れ」とか「頑張ろう」という言葉が絶対的禁句みたいになってしまったような圧を感じています。もちろん、「頑張れ頑張ろう」が絶対禁句のケースもあります。でもそのような例外を除いては、「頑張ろう」って言葉、時には必要じゃないかなと思うんです。特に10代の若い子達にはね)

だから、HPにも「学習意欲のあるお子さん向けです(ただしブランクは一切問いません)」と書くし、保護者の方にも「本人の意思が固まってから連れて来てください」とお願いするし、入会してくれた子には「え?ここ本当にフリースクール?」って思われるくらい、普通に、塾みたいな勉強をやってもらいます。

私がここまで学習・進路支援にこだわるのには理由があります。

まずキレイごと抜きに、ほとんどの人には、いつか独り立ちしなくてはならない時が来る。
独り立ちするには、まずは体がある程度丈夫に育っていることが望ましい。そして、できれば健康であると良い。

また当面資本主義社会が続く限りは、世の大多数の人々は手に職をつけるか、自給自足のスキルを身につけるか、学力をつけるかのいずれかをしなくては生き残れないのではと私は考えます(生涯100%面倒見てくれる人がいるラッキー?な子は別かもしれないけど)。
※この見立ても時代が変わればまた変わると思います。

そういう理由で、手に職をつけさせてくれる、自給自足のスキルを教えてくれる、学力をつけるの3点のうち、いずれか1つの特性をもつスクールだったら、お月謝を払って通う価値あるんじゃないかなぁと私は思っています。向こう30年くらいはね。
※また、上記3点に当てはまらなくとも、医療、福祉、心理などの専門的なケアを提供する良質なスクールもあると思います。

以上3点のうち、私が唯一子ども達の自立の助けになれるのが「学習支援」だと思ったので、私の場合は学習室としてフリースクールを開業しました。

学習支援を頑張ることのメリットをもう少し短いスパンでお話させてください。

私が過去に出会ってきた中学生の話を聞いていると、学校を欠席するに至った原因が解決されてからも「何となくもう登校するのが億劫」と感じてしまう理由として、「授業がわからなくなった」「授業についていけなくなった」「宿題をこなしきれなくなった」が原因だったと打ち明けてくれる子が多かったのです。

友達と気まずくなったが、仲直りした。
隣の席になった子が苦手だったが、席替えで離れた。
部活の顧問の先生が合わなかったけれど、今年異動になった。
宿題が多すぎて行けなくなったけど、調子が戻るまでは提出しなくていいよと約束してくれた。

欠席に至った原因は排除された。でも、もう行けない。
「勉強がわからないから」
「周りの目が気になる」と訴える子と同様に、「授業についていける自信がない」を長期欠席の理由に挙げる子が私の周りでは多いのです。(授業がわからない→恥をかくのがこわい=周りの目が気になるという子もいます)

私は基本的に、「学校が嫌い」「学校が恐い」「もう当面行くつもりはない」などと言っているうちは、その子に登校復帰を促す必要はないと考えています。

しかし、心の底では「学校にもう一度行きたい」そこまで言わなくとも「いつか戻る道も”一応には”残しておきたい」と1ミリでも考えている子に関しては、支援者の側は、いつでもその準備を万全に整えてあげておく必要があると考えます。
本当に登校復帰するかどうかは置いておいても、少なくとも支援者はちゃんと準備しておく。

また、「中学校にはもう行かない。けれども高校から学業を再開したい」だとか、「小学校はもう行けないけど、中学校はどんなところだろう?」と”何となくでも”思い描いている子に対しても同様です。

最近では、定期試験を学級とは別室で受験させてくれる学校もあるので、「試験だけでも受けてみたい」と突然言い出す中学生もいます。
ただでさえ、日々変化と成長が著しい中学生。
ある日いきなり「明日学校行ってくる」って言いだすこともあります(本当に突然言い出すんだこれが)。
生徒さん本人がリスタートを宣言し、行動に移したあかつきに「やってみて良かったなぁ」と実感してもらえるような準備を整える。
「休んでいる間も努力を続けたから、授業が思った以上に理解できた」
「努力していたから、胸を張って教室に入れた」
そんな、努力を根拠とする自信をもって成し遂げた行為のことを、真の成功体験と呼ぶのだと私は思います。(そういえば、”努力”って言葉も最近は否定されがちね…さびしい)

そういう理由から、私はフリースクールだって学習支援を充実させる必要があると思うんです。
というか、フリースクールだからこそ、学習支援がとっても大切だと考えています。

最後になりますが、おうちフリースクールでぃありすの支援を学ぶだけに満足せず、複数のスクールに足を運んでいるなっちゃん、あなたは素敵な支援者ですね。

私のやり方に偏らず、時には疑いながら、引き続きたくさんの先生の仕事ぶりに学んでください。
教育に携わる人って、結構クセの強い人、こだわりの強い人、多いでしょ?(そう、このワタクシのように)
いろんな先生を理解することは、いろんな子ども達の気持ちに寄り添うための練習になります。

また、支援者としての幅を広げ、いろんな引き出し、いろんなチャンネルをもつこともとても大切ですからね。
これからもあっちこっち行ってみてね。

今度は学習支援における支援者の姿勢についてお話ししましょう。

※画像はimai_soliwoodさんの作品をお借りしました。








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