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生粋の日本人のボクが仕事で英語を話すようになるまでにしたこと

英語は嫌いじゃなかったけど、帰国子女でもないし、周りに外国人の友人がいたわけでもないので、初めて英語でしゃべったのが大学入学時に通い始めた英会話学校の先生だった。

そんなボクが35歳の頃はあちこちに海外出張させてもらい、大きい話では日米の会社から資金を調達して合弁会社を設立する交渉に入ったり、取引先の重役から「通訳として」アメリカ出張に同行して欲しいと依頼されたりすることもあった。

自慢じゃないけど、今も英語や英会話に自信はないし、アメリカ映画を日本語字幕なしで見るなんてとんでもないし、ペーパーバックを1冊読み切るのに半年かかったりもする。

そんなボクが曲がりなりにもビジネス英語を必要とする場に呼ばれるようになったのか。決して英語が得意ではなかったボクが30代前半の時にしていたことをここに記します。

まず結論から一言でいうと「死ぬほど英語を勉強した」時期があったこと。

帰国子女でない人が外資系とかでバリバリ仕事してる友人とかに聞くと、必ず返ってくる答えが「目から血が出るほど勉強した時期がある」ということ。

8人聞いて8人とも口を揃えて言ってた。あと「中学レベルでいいので文法がとても大事」というのも共通して言ってた。

世の中には聞いているだけで英語が聞き取れるとか、廉価なオンライン英会話スクールで英会話はばっちり!とか触れこんでいるサービスがあるけど、ボク個人と知人友人の経験談を聞く限り、そんなことは「絶対にない」。

生粋の日本人ならやっぱり英語を聞く耳が出来ていないし、頭の中で英単語や英文法の順番(日本語とはまったく逆だからね)を自然に理解できる力はない。

ボクも30代の頃半年ほど集中して起きてから寝るまで英語漬けの毎日を送っていたことがあり、ぶっちゃけまったく楽しくない日々だったけど、あの半年を過ごしたから曲がりなりにも英語でビジネスができる気持ちにはなれた。

以下、その頃ボクがしていた勉強法です。

起きてから1時間はDictation

個人的にリスニング力を上げるもっとも効果的だった方法がdictation。

dicationは誰かが英語で喋っている言葉を一字一句すべて書きとる勉強法。

辛いです。楽しくないです。

だって、最初のうちは下手したら「I」とか「You」以外まったく聞き取れないこともあるもの。

いかに英語を聞き取れていなかったかを痛感させられる。

でも自分の弱点を把握できるし、続けているうちにパターンみたいなものが見えてくる。

ボクの場合前置詞がまったく聞き取れていないことを思い知らされた。

atとかinとか、中学生でも知っているような前置詞と動詞が会話になるとくっついて音が変わる。

だから最初の頃は「get in」みたいな簡単な単語でも、音だけを聞いて書き取るdictationをすると「ゲリイン?それ英語?」みたいに頭の中が軽いパニックを起こす。

英語を聞き取るにはこの「音が変化する」を受け入れて、パターンを覚えるしかないんだよね。

そしてdictationには「自分の発音がよくなる」効果もある。

dictationやってると「アメリカ人ってtはなんでもかんでもrみたいな発音になるな」とか分かってくるので、自分で発音する時でも「ゲリイ〜ン!」なんて堂々と言うようになる。

dictationの教材として当時使っていたのが「CNN ENGLISH EXPRESS」。

比較的どこの書店でも置いてあるから入手しやすい。この月刊誌は直近のCNNのニュースから英語勉強者によい材料となるトピックスを1ページに収まる分量に収録し、英語のあとに日本語の対訳、それと音声のCDがついてる。

雑誌の最初の方は少しやさしいレベルになっていて、後半に行くにつれ、難しい内容になってる。

ボクはCNN ENGLISH EXPRESSを買ってきたらすぐにCDの音声をMP3にして、iPod(当時スマホなんてなかった)に入れ、それを1ヶ月間繰り返し繰り返し書き取りしていた。

まず雑誌を見ずに、なにも知らない状態でいきなり音声だけを聞く。聞きながらノートに聞き取れた英語を全部書いていく。

大事なのは聞き取れても聞き取れなくても1回流すだけにすること。

「え、今なんて言った?」と戻って再生したくなるけど、それはしない。一発勝負で聞き取れた単語だけ書いていく。

1つのエピソードが終了すれば、テキスト(雑誌)を見て答え合わせをする。

それが終わったら、もう一度同じエピソードのdictationをする。もちろん通しで聞き、少し戻って再生ということはしない。

さっきよりは聞き取れてるはずだけど、相変わらず間違えているもの、聞き取れていないものもある。

答え合わせをして、もう一度同じエピソードをdicationする。つまり1つのエピソードで3回する。

ここまでで、CNN ENGLISH EXPRESS程度の長さなら30分ぐらいになる。

これをエピソード2つ分する。つまり1時間する。ボクは朝5時に起きて6時まで1時間やってた。

通勤電車ではポッドキャスト

それが終わったら通勤電車に乗っている30-45分ほどはiPodに入れておいたポッドキャストを聞く。

題材は英語勉強者のためのポッドキャストもたくさんあるので、それを聞いてた。日本人が開設しているものより英語を母国語とする人/局が開設している勉強チャンネルの方がいい。

1話5分ぐらいのものが多いので、複数のチャンネルを登録して通勤電車の中ではずっとポッドキャストを聞いていた。これは帰りの電車も同じ。

昼休みは英語ニュースをがんばって読む。特に日本で言う社説にあたるEditorialは必ず1つは読むようにしていた。

よく言われることだけど、アメリカは分かりやすい文章の書き方を学生時代に徹底的に教えられるので、特に新聞のような媒体の意見を述べるEditorialは非常に洗練された構造をしているので、英語の書き方や構造を勉強するという観点で読んでいた。

夜は英会話学校

仕事が終われば、週に3回ほど英会話学校に通っていたので、その時間まではボクは百貨店の屋上でまたdicationをやってた。

今もあるのか知らないけど、当時ボクは新宿のNovaに、国からの補助金制度を使って通っていた。

仕事が伸びるかもしれないので、だいたい19時あたりから2コマほど予約していたので、18時に会社を出られると1時間ほど時間が空く。

そういう時は小田急百貨店の屋上のベンチに座って、iPodに入れた音声を聞きながらCNNのdictationをやってた。

その後21時まではNovaで英会話。

英会話学校って意味ある?という話がよく出るけど、個人的には「用途を明確にするならアリ」と思ってる。

英会話学校に通うだけで英会話ができるようになるかというと、それは「ありえない」。

週にたかが数時間英会話するだけで聞き取って喋れるほど英会話は甘いものではないし、英会話の先生ってたいてい日本人向けにゆっくり分かりやすい単語でしゃべるので、勢いにのってそのままアメリカに行ったりすると玉砕する。

じゃぁなにがアリなのかというと、「外国人と喋る勇気」をつけること。

英会話に慣れていない日本人が、たとえば駅の切符売り場でキョロキョロしている外国人に「Hey, what's up?」と話しかけられる?

「秋葉原に行きたいんだけど、どう行けばいいんだろう?」と聞かれて、「あぁ、ここからなら190円だから、その190というボタンを押して、そこの改札から入って、緑色で4番と書いているプラットホームに行って、ここから4つ目で降りたらいいよ」とか、気軽に教えてあげられる?

ボクもそうだったけど、外国人に慣れていなければ絶対ムリだよね。相手と目が合ってしまったら、ありとあらゆるテレパシーを使って「来るな、向こうに行ってくれ」と全力で念を送ってたもの。

それが英会話に行って友人みたいに先生と会話できるようになると、街なかで困っている外国人を見かけると気軽に「どうした?」と話しかけることができるようになる。

はたして、その英会話が正しいのかどうか、相手が聞きやすい発音しているかどうかは分からない。

でも少なくても「気軽に話しかけられる」勇気は身につけられる。

周りにnativeがいないとか、英語を話す機会がないという人には英会話スクールはあり。

今は知らないけど、当時のNOVAには「voice」という制度があった。これはあらかじめ数十枚という単位でチケットを買っておくんだけど、通常のレッスンとは違い、教室の横に設置されたvoiceルームに入って、1時間1枚分のチケットを受付で払って、先生と自由に会話するというもの。

当時はアメリカ人とかカナダ人の友人なんていなかったので、レッスン以外にチャットできる制度はありがたく、週末になると午前中ずっととか、午後の間4時間とか、voiceルームにいりびたって、会話してた。

voiecはレッスンとは違うので、先生が最初に「今日はなにを話題にしようか」と生徒に聞く。そこで誰かが「コスメについて会話したいんだけど」と言って、周りがそれいいねとなったら、しばらくコスメについて自由な会話が始まる。

もしこういった自由チャットシステムがある英会話ならフルに活用するといいと思う。やっぱりレッスンと違って「ねぇ、ビートズルのTicket To Rideの歌詞でshe don't careってあるけど、なんでdosen'tじゃないの?」なんて気軽に質問できたりするしね。

帰りの電車もポッドキャスト

平日の夜の英会話学校が終われば、帰りの電車でもポッドキャストで英語レッスンを聞いてた。

とにかく典型的な「英会話ダメです」日本人だったボクの場合、なによりもリスニングを鍛えることが先決だった。

書くのも読むのも喋るのも、まずは聞き取れないと始まらない。逆に言えば相手の言ってることが理解できれば、少々変な文法でも発音でも自信を持って会話に望める。

でも相手の言葉がほとんど聞き取れてないと、もう「オレには話しかけないでくれ」と言いたくなるぐらいなにもできなくなる。

まずは聞き取る力なんです。

帰宅したらチャット

当時Polyglotというサイトがあってね。多分今はここだと思うけど。

POLYGLOT Club

ここは「母国語を教えるから外国語を教えて」という場。ボクの場合「日本語を勉強している人には質問に答えるから、英語を勉強しているボクにはいろいろ教えて」とプロフィールを登録する。

チャットがあるので、毎晩そこにログインして、英語でチャットしていた。

プロフィールを見た海外の人が「日本語でこういう時どう言うの?」とか質問が飛んでくるし、こちらはこちらで「LOLってなに?」と超初心者みたいな質問にも丁寧に答えてくれる。

チャットをしているうちに気に入った相手がいればプライベートルームに移って、2人だけでチャットしたり、当時も音声チャットがサポートされていたので音声で話すこともあった。

今は付き合いがないけど、当時POLYGLOTで知り合ったアメリカ人の女性とか台湾の男性とは特に仲が良くて、チャットが始まって最初はみんながいる板に入ってチャットしていたんだけど、彼らがログインしてプライベートルームに移ろうかと誘われると2人で思いっきり会話してた。

当時はオバマ大統領が就任した時なんだけど、台湾の彼とリアルタイムにチャットしながらオバマさんの就任演説を見ていたりもした。

これも英会話スクールと同じく「英語でnativeと喋ることに慣れる」という点ではとても有益なサービスだった。

今も無料で提供されているのかは分からないけど、こういう交換条件でチャットする場は他にもあると思うので活用するといいと思う。

まとめ

こうやって嫌いでもないけど好き!というほどでもなかった英語を朝から晩までずっと勉強してた。本当に英語漬けの毎日だった。

特にdictationはスキル習得の前に心が折れそうで何度やめようと思ったことか。「こんな単語すら聞き取れないのか」と自信喪失の毎日だった。

それを半年やった。

たった半年?と思うかもしれないけど、朝5時から夜0時までこの生活を半年もすると目から英語の血が出るかというほどの状態になる。

もう一度まとめると

・朝起きたら1時間dictation。教材はCNN。
・通勤電車では英語学習者向けポッドキャストを聞く。
・昼休みは英語ニュースサイトを読む。editorialは必ず1本は読む。
・退社したら百貨店の屋上でdictation。
・夜は英会話学校。
・帰宅したらpolyglotでチャット。

という毎日を送っていた。

あれから17-18年経ってるけど、今あれをやれと言われたら「えぇ〜」と言うだろうな・・・。がんばりましたよ。

でもあれをしなかったら、その後いろんなところで仕事をしてきた海外出張もうまくできなかったと思う。

英語や英会話の勉強ってゴールがなくて、一生続くと思う。

あの死ぬほどの半年を過ごした後コンサルで常駐した企業は海外メーカーと付き合いがあったので、日常的に英会話や英語が仕事で必要で、ビジネス英語のスキルアップにもなった。

そこで知り合ったハーフの男性と仲良くなって、polyglotよろしく「お前に日本語の細かいところは教えるから、オレの『それはnativeではおかしい』みたいなことがあったらバシバシ指摘してほしい」とお願いして、快くお互いの母国語のスキルを交換していた。

例えばイギリスに出張した時タクシーのエアコンが強すぎたので「少し弱くして欲しい」とお願いしたんだけど、同乗していたハーフの彼にあとで「わぐさん、文法や意味としては正しい言い方だったけど、あの言い方は相手にかなり失礼だよ」とストレートに指摘された。

顧客企業の社員だったとはいえ、お互い友人みたいな関係だったからこそ遠慮なく言い合えたのだと思う。

これもコンサルに行く前に「目から英語が出るほどの勉強期間」を過ごしていたからだと思う。

だた、実は個人的には嫌いなら英語は勉強しなくていいと思ってる。

deepl.comのように非常に精度の高い翻訳サイトが出てきてるので、英語論文ですら日本語ですぐに読める時代だし、リアルタイム翻訳もマイクロソフトのtranslatorを始めとして実用的なアプリがたくさん出てきてる。

それでも旅行先のハワイでエレベータを待っている時、あとからやってきた米国人カップルに「何日ぐらい滞在してるの?」と気軽に話しかけられる「勇気」を持てたのは、死ぬほど英語を勉強した期間があるからだと思う。

嫌いでないなら、やっぱり英語は話せた方が楽しい。

「仕事で役立つ」とか「給料が上がる」とか「大きな交渉を任せてもらえる」という実務的なことよりもなによりも「英語で海外の人と会話すると楽しい」という点が大きい。

特にこちらが旅行者なら相手に話しかけると気軽に丁寧に対応してくれるのでやっぱり英会話が(上手かどうかはさておき)できると人生の幅が広がるのは確かだと思う。

ボクは海外で何度も助けられたので、日本に来ている外国人が困っていれば積極的に手伝いをしたいと思ってる。そんな時も英会話ができれば、たとえ相手が東南アジアの人でもなんとかコミュニケーションは取れる。

アキバを歩いている時に中国人から英語で「ねぇ、この店の場所分かる?」とスマホで店のサイトを見せられた時に、そのサイトがエロサイトだった時は閉口したけど、まぁそれも人生の「幅」という点では面白い。



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