時を失う - 赤目四十八瀧心中未遂(文春文庫)P213

「おばちゃん、いまごろがっかりしてるわよ。」
「はあ、よう分かってます。私はいっつもこないして、時を失うて生きてきたんです。」
「生島さんは、やっぱりむつかしいことを言やはるわね、 好きなんやね。 時を失うやなんて、私らよう分からへん。」
「 は、 すんません。」

─── 赤目四十八瀧心中未遂(文春文庫)P213

なんべん読んでも
後半部分は
どこを読んでも
泣けてきて仕方がない

悲しいからではない
説明ができない

説明をされたとしても
聴いている方もわからないだろう

迦陵頻伽(かりょうびんが)
なんて美しい悲しみだろう
涙も出ない 泣けてくる