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#02 みんなが独学できるわけではない

みんなが独学できると考えるのは幻想である。
しかし、YouTube先生で独学できるようになるヒントはある。

 前回、「YouTubeで学べ!」という雑誌の特集や本があっても、YouTube先生を使って、何をどう学べばよいのかについては誰も教えてくれない、と書きました。これが、この連載をはじめようと思った直接的なきっかけですが、今回は、さらに根本的な動機、いわば「0ページ」にあたる部分についてお話します。

独学幻想

 世の中には、「知識は本やインターネットで十分に学べるから、なにも大学に行く必要はない」という意見があります。しかし、このようにいう人々は、みんなが独学できるという「独学幻想」をもっています。最近、書店のビジネス書コーナーに「独学」をテーマにした本が多く並ぶようになりました。これは、独学ができない人が世間に多いことの裏返しだと思います。
 
独学について、社会学者・加藤秀俊氏は次のように述べています。

 じっさい、かんがえようによっては、学校というものは、「独学」では勉強することのできない人たちを収容する場所なのだ、ともいえないこともあるまい。一般的には、学校に行けないから、やむをえず独学で勉強するのだ、というふうにかんがえられているが、わたしのみるところでは、話はしばしば逆なのである。すなわち、独学できっちり学問のできない人間が、やむをえず、学校に行って教育をうけているのだ。
(加藤秀俊「独学のすすめ――現代教育考」『加藤秀俊著作集』六、中央公論社、1980年)

 つまり、「独学できない人口」が多い以上、大学を含めた学校はなくならないわけです。

日本人の英語力が向上しないワケ

 さて、教育改革のなかで、日本人の英語力が向上しないことがよく話題になります。インターネット上には、いい英語学習コンテンツがあふれています。「知識は本やインターネットで十分に学べる」というのならば、日本人の英語がもっと向上してもいいはずです。それにも関わらず、現実はそうなっていない原因としては、学校教育が「英語嫌い」を生んでいることや、日本人にとって英語を学ぶ強い動機づけが働きにくいことなどがあげられます。これらについては、『大学論の誤解と幻想』の「第2章 グローバル人材と英語幻想」で詳しく書きましたので、そちらをぜひお読みください。

 もうひとつ重要なのは、いくらすばらしいYouTube先生がいっぱいいても(=いいコンテンツがいっぱいあっても)、その使い方や学び方がわからないことや独学の習慣がないために、英語力が向上しないということです。

 そこで、多くの人が独学できないということを前提として、YouTube先生で、英語学習をはじめ、広い意味での「学び」を深めるヒントをお話したい、と思いついたわけです。(続く)

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