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#01 YouTube先生で学ぶ極意

YouTube先生で学ぶ極意は、
逆説的だが、YouTube先生の外に出ることである。

誰も教えてくれないこと 

 今日、雑誌『DIME』最新号を入手しました。
 特集は「人生に必要なスキルはYouTubeで学べ!」です。英語、投資、資格、ビジネス教養、美容、料理など、役に立つYouTubeチャンネルが紹介されています。おすすめです。

 さて、「YouTubeで学べ!」という雑誌の特集や本をみていて、いつも不思議に思うことがあります。それは、役に立つチャンネルの紹介はあっても、それらを使ってどう学ぶのか、という点について、ほとんど触れられていないことです(もちろん、英語をはじめとした語学学習については、かなり具体的な方法を示したものもあります)。
 つまり、大学の授業にたとえれば、カリキュラムや科目一覧は示されているものの、それらをどのように受講して、何をどう学べばよいのかについては誰も教えてくれない、ということです。

 そこで、何回になるかわかりませんが、(おそらくほとんど)誰も教えてくれない「YouTube先生で学ぶ方法」を書きたいと思います。ちなみに「YouTube先生」という言葉は、「YouTubeを先生として」という程度の意味です。

「最終講義」で学ぶ

 さっそく、最初の入口として大学の「最終講義」を取り上げます。
 3月、日本の大学では、卒業生とともに定年等で大学を離れる先生がいます。退職する先生が最後の授業をするのが「最終講義」で、その映像がかなり多く公開されています。典型的な映像は、講義の最後に弟子たちから花束の贈呈があり、教授がウルウルする場面で終わるものです。
 最終講義のなかでも、本当の意味での「最終講義」として珠玉のものが、カーネギーメロン大学教授だったランディ・パウシュ(Randy Pausch, 1960-2008)の「最後の講義」(The Last Lecture)です。
 ご存じの方も多いと思いますが、教授はガンにより余命宣告をされており、2007年9月18日、まさに人生最後の授業をし、その映像がYouTubeで公開され、世界中に感動をあたえました。そして、翌年、47歳の生涯を終えました。

 講義というと、経済学や経営学などをはじめ学問の中身を学ぶものだというイメージがありますが、最終講義を視聴する勘どころは別のところにあります。パウシュ教授の場合、コンピュータ科学やマンマシンインタフェイスが専門ですから、その内容を学ぶのが普通です。しかし、「最後の授業」から学ぶべきところは「夢の実現」にいたるプロセスであり、そこには出会いや挫折があります。また、授業のなかには、数多くの名言もちりばめられています。

 パウシュ教授の「最後の授業」にかぎらず、大学教授の最終講義を視聴する勘どころは、(分野に関係なく)学問の内容そのものよりも、その教授が歩んできた人生の道筋に注目することです
 さまざまな最終講義を観ていると、黒板いっぱいに数式を書き続ける教授、身体を使ってパフォーマンスする教授をはじめ、その表現方法は多様ですが、最後の授業ということもあって、満を持しての登場という感じがします。そして、必ずといっていいほど、自分の生い立ちと学問や人との出会い、挫折と幸運が語られます。おそらく、何の苦労もなく職について、何の苦労もなく定年をむかえた教授はほとんどいないでしょう。
 つまり、最終講義を大学教授のキャリアの物語として読み解いてはどうでしょうか。「大学教授のキャリア形成なんて、ほとんどの人の役に立たない」という人がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。出会い、挫折、幸運といったモチーフは、どの人の人生にも参考になることがあります。
 蛇足ですが、これまで多くの最終講義に出席しましたが、「こんな面白い講義を、どうして通常の講義でやってくれなかったんですか」という感想をもつことが多いです。もちろん、通常の授業が面白くないといいたいわけではありませんが、通常の授業はまだ先がありますので、いつでも挽回できます。それに対して、最終講義に次はありませんから、おのずとそこには教育と研究の集大成があらわれているといえます。

YouTube先生の外へ

 さて、冒頭に示した極意「YouTube先生の外に出ること」について説明します。
 「YouTubeで学べ!」という雑誌の特集や本の多くは、YouTubeのコンテンツのなかで完結してしまっています。つまり、レクチャーやチュートリアル(使い方や操作方法をおぼえるための教材)を大学のオンライン授業のように視聴して終わりです。しかし、重要なのはYouTube先生を「学びの起点」にすることです。
 パウシュ教授の「最後の授業」を例にとれば、コンテンツの視聴を起点として、映像に登場した事柄について調べたり、単行本化された『最後の授業』を読んだりすることです。さらに、「最後の授業」というキーワードに引っかかった本に手を伸ばすのもいいでしょう。
 「YouTube先生の外に出ること」は、今後お話する事柄の根底に流れる発想です。(続く)



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