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褒められて嬉しい

 同窓会が終わったあと、幹事でもある、ウチの会社の役員の「肺がん太田」と、関学では知らん者が居ないという有名人、もと銀行マンで現在優良企業に天下りをしている「元木」と、3人でお茶を飲み、同窓会のプチ反省会をしました。

 私が……

「あれっ?  えべっさん、来てへんかったなあ…」

元木が、

「エベ なぁ……急に来られへんようになったんや」

「そうか……ところでな、元木…アイツ、どないしてんねん?   岡田」

「岡田って、どの岡田や?」

「野球部の岡田や」

「おぅ…岡田なあ……」

「アイツとはワシ現役の時、ほとんどしゃべったことなかってんけどな、10年ほどまえに甲子園で一緒に飯くうたやん?」

「関学が選抜に出た時やろ?  あれ、飯くうたん甲子園やのうて鳴尾や」

「鳴尾でも久寿川でもどっちでもええがな……その時にな、岡田ってこんなオモロイ奴やったんかと、初めて知ってな、ワシめっちゃそれまでの人生損した気分になったんや」

 太田が口出します。

「アンダースローの岡田やろ?」

 元木が詳しく。

「岡田なあ……アイツ、ダイエーに就職したやろ? それでな、あのキャラやしやな、中内さんにめっちゃ可愛がられたみたいでな」

「中内って、中内 功 か?」

「あたりまえや、中内ゆうたらダイエーの創業者に決まってるがな……そやけど、もうその頃はダイエー、組織もなんも経営的にもゴチャゴチャで、なんやいろいろあって、岡田はたしかスーパーのマンダイの系列に行ったはずや」

「ホンマか?」

「あいつら大学の野球部でもラッキーやったで、関西六大学野球ゆうて、あんな奴らでも、大きいグランドでプレーできてな」

 そこで私が、

「アイツなあ、なんかめちゃ大事な試合でな、最初サイレン鳴って、ベンチまえからみんなダッシュで選手が全員ホームベースのとこに集まるやろ?   アンパイヤの前に……その時にな、岡田ひとりだけ自分の靴ひも踏んでコケてその場に取り残されて、球場全体が大爆笑になったらしいわ」

「サイコーにオモロイなあ……そやけどその話を岡田自身がしゃべる、そのしゃべり方とか、間の取り方とかが、サイコーやろ?」

「そうやねん、それでワシ、岡田の話芸を尊敬したわけや、その時に初めて……」

「イヤ……それだけで岡田のオモロさの本質を見抜いて、そこまで岡田を評価するか……」

「それがどないしたんや?」

「さすがにクボやなあ……俺はそれがきょう一番感心したわ……さすがや……ものすごい感性やわ……それがとっさにわかるか……」

 とりあえず、なんでも真剣に褒められると、嬉しいもんです。

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