歌詞から読み解く国際社会
私は、まったくアニメオタクの資質はないのだが、作詞の勉強のためにアニメの歌は、かなり聴き込んできた。
もちろん、相当昔から。
それ故に、アニメの内容じたいは、ほとんど知らなくても、歌だけは知っているケースが多々ある。
なぜ「アニメの歌」に興味があったのかというと、アニメの歌には、アレンジや歌詞において、一般的な常識的制約がかなり少なく、当時の作家が好きなように、のびのびと創作に結びつけた気がするからである。
しょせんは子供向け、マンガ……と見られがちな世界で、歌としての素晴らしい作品がたくさん存在するのは、実はアニメをリアルタイムで観ていた人も意外と気付いていないと思う。
もちろん、懐かしさはわかるのだが、歌……音楽…作品としてすごくいい、ということまでは、思いが至らないようで、実にもったいない。
たとえば 小林亜星の「魔法使いサリー」なんかをフルボリュームで聴けば、アレンジの完成度に圧倒される。
もちろん 富田勲 が手がけた「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」などは有名だが、そのほかにもたくさんの名曲がうもれている。
おもしろいのは、ロックのリズム、ノリで、歌唱は演歌、というようなキメラな発想。
歌謡曲の世界なら、お笑い、イロモノ扱いされるだろうが、アニメだと子供にも大人にも先入観が薄いので、当たり前に受け入れられるのであろう。それがまた、実にイイ。
「ハクション大魔王」や、「みなしごハッチ」がそれである。
ロックの伴奏・リズムで、歌は演歌のこぶしがたっぷり。
余談だが「こぶし」は、歌の非常に重要な要素なのである。
さて、その「みなしごハッチ」。
吉本新喜劇の名優、岡八郎が、自身を、
「ハッチと呼んで」と、ギャグにしてたのも懐かしい。
この歌は3番まであり、それぞれの歌詞は、きちんと1番、2番、3番 で、対応すべきレベルで対応している。
つまり、これは素人ではなく、プロの仕事であるということを意味する。
作詞は、丘灯至夫(おかとしお)。
さきほどの、「ハクション大魔王」も、この人の作詞だし、アニメ以外でも、「高原列車は行く」や、「高校三年生」なんかも、書いている。
今回注目するのは、歌詞の、3行と4行 の部分。
1番と3番は、それぞれこうである。
1番
♪ 「姿やさしい もんしろ蝶々 おどけバッタにてんと(う)虫」
3番
♪ 「草を枕に うたた寝すれば オケラ コオロギ 子守唄 」
これだけでも、見事な作詞としか言いようがない。特に3番の、コオロギから子守唄へ続くセンスなどは完璧である。
さて、2番。
2番
♪ 「こわいやつだよ カマキリ ムカデ 憎いやつだよ スズメバチ 」
カマキリとムカデは「怖い」のに、スズメバチは「憎い」。「憎い」というのは、怖いよりもキツイ歌詞である。
スズメバチは、自分……みつばちと同じ、蜂 の仲間である。
やはり、同類……つまり、人類、人間どうしは、怖がるよりも憎しみあう定めなのかもしれない。
作詞家の丘灯至夫は、好々爺といわれたほどの明るい性格だったという。
「おかとしお」を、逆さに読むと、「押しと顔」。
これがペンネームの由来だそうだ。
福島生まれで2009年に92歳で亡くなっている。震災の2年前でよかったと、個人的には思いたい。
西条八十に強い影響を受けたのは、まちがいないようだ。
優れた作詞家は、人類の本質…同類で憎むということに、無意識に気付いていたのかもしれない。
まあ……日本人は、みつばちであろう。
スズメバチはどう考えてもその暴力性から、アメリカしか思いつかない。さらにロシアは、クマンバチ。
北朝鮮?
さしずめ、アブが妥当であろう……知らんけど。
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