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奇跡のドラマは続くよ、どこまでも①

20年近く前のお話です。島根の小学生と岡山の農業高校の高校生がICT(インターネット)を活用して1年間、交流・協同学習を行ったことがありました。

小学校と農業高校の牛舎をTV会議で一日中つなぎっぱなし。手紙やプレゼントの物のやり取りやお互いに直接出逢う交流が加わることで、ICTを生かした交流や協働学習の成果が高まった!というインターネットの教育利用の草創期の教育実践でした。この交流は、数々のドラマを生み、今でも私の心に残っています。
どんな交流やドラマだったかを紹介します。

【2002年】

・4月「交流スタート」
子牛の名前を付けてほしいという農業高校の先生の申し出が発端で、島根県雲南市立加茂小(5年生)と岡山県立高松農業高校の牛舎をTV会議で一日中つなぎっぱなしの交流が始まりました。

加茂小のTV会議

・5月「子牛の出産のTV会議~生きるか死ぬか」
子牛の出産が小学校の参観日(たまたま母の日)に実現。逆子で産まれた子牛は仮死状態。必死の人工呼吸で息を吹き返しました。その様子を小学生はTV会議で見守りました。産まれてきた子牛は女の子。そのため、その後もずっと農業高校で飼育することができました。(男の子の場合は数ヶ月で出荷されてしまいます。)

生まれたばかりの子牛

・5月「母牛の緊急手術」
産後の母牛「ビバリー」が内蔵系の病気になってしまいました。手術費用が掛かるため、通常は処分されてしまうそうですが、小学生からの「母牛を助けて!」の声を受けて緊急手術を決行!お腹を切る手術の様子もTV会議でオンライン中継。小学生の「がんばって!」の声援を受けて、手術は無事成功!母牛の命が助かりました。


手術の様子(TV会議の画像)

・6月「命を考えるTV会議授業①」
小学生と高校生が交流。午前中に島根の小学生からのプレゼントや手紙を持ってコーディネーターが岡山に移動。午後からもTV会議で交流。

右・午前のTV会議(加茂小)と左・午後のTV会議(高松農業高校)

・7月「命を考えるTV会議授業②」
子牛の名前の提案。病気で亡くなった牛の世話をしていた高校生の涙の話。

子牛の名前の提案(TV会議)

・7月「高校生の小学校訪問」
名前の報告とお礼に、特製アイスクリームを持って高校生が小学校を訪問し、直接交流が実現!子牛の名前は「タカノウ・マザリー・カモ・テール」(高農の・母の日産まれ・加茂小との絆・尻尾が特長)通称「テール」

加茂小に来てくれた高校生

・10月「命を考えるTV会議授業③」
「健康の大切さ」を総合学習で学ぶ小学生に農業高校の高校生が農場からレクチャー。牛だけでなく、野菜等の農作物も紹介。

TV会議による高校生の授業

・11月母牛ビバリーが共進会(美牛コンテスト)で入賞!
全国大会にも出場!子牛テールもその後の美牛コンテストでダブル入賞の快挙!

【2003年】

・4月 6年生になった子どもたちが、修学旅行で岡山の農業高校を訪問!
TV会議で毎日見てきた母牛ビバリーや子牛テールに直接会うことができ、体を触ることができました。牛の体温を感じ、命の重さを感じることができました。
乳牛の搾乳体験、無添加のパン作りの活動を小学生は高校生に教えてもらいながら楽しく行うことができました。自信あふれる説明を聞きながら、高校生たちのやさしさと農業に対する熱い思いを感じることができました。
高校生さんからのプレゼントは、牛の手作りカレンダー。小学生からは、健康や食の安全性を教えてもらって自分たちが作った「健康ハンドブック」をプレゼント。
見学だけでない、体験だけで終わらない。心の交流が深まり、お互いの成長を確認することができた夢の修学旅行になりました!

修学旅行で高校を訪問

母牛と子牛の命の危機や成長する様子をTV会議で見守り、直接の出会いも実現した交流の中で起こった奇跡のドラマは、実はこれだけでは終わらなかったのです!                    (つづく)

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