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「クソババア」なんて言っちゃいけない。でも、ありがとう。

『おかあさん。僕優しい?』

「優しいよ。何かあったの?」

『今日、1人ぼっちでいた子に声をかけて僕の自由帳に一緒に絵を描いたの。それでね、その子が描いたページを切って、あげたんだよ。

 どお、優しい?』

「うん優しい。その子嬉しかっただろうね」

学童帰りの薄暗い帰り道。
息子と歩きながらこんな話をしていると、自分が小さな頃のことを思い出した。

「そういえばお母さんも小学生の頃、お友達の家に塗り絵と色鉛筆を持って遊びに行ったことがあったな。お母さんの塗り絵を1ぺージずつ友達と塗っていたら、その子はうまく塗れなかったみたいで急にグチャグチャに塗りだして、見ていない隙に塗り絵と色鉛筆をゴミ箱に捨てちゃったの。」

『おかあさん、その子ぶっ飛ばした?』

「んー。何も言えなかった。
なんにも言わないでゴミ箱から塗り絵と色鉛筆拾って帰った。ホントはあの時「何するの‼︎」って怒ればよかったと思う。でも、出来なかった。。」

『ドラえもんのタイムマシンがあったら、その時に戻って怒れるのにね!』

「そうだね。戻れたら『何するんだー!』ってぶっ飛ばしちゃえるのにね!」

息子は私を思ってそんなことを言ってくれたのだろう。

でも、ホントはもう戻りたくない。

ゴミ箱の中に自分の塗り絵と色鉛筆を見つけた時の息苦しさ。

心が握りつぶされるような感覚。

もういい。

もういい。

『お母さん。その子きっとクソババアになってるよ。すんごいヤバい鬼ババアだと思う!』

人のことクソババアなんて言っちゃいけない。

「でも、ありがとう。」



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