【アトピー性皮膚炎:全身療法】引っ越し前には皮膚科を受診して紹介状をもらいましょう

年度末です。お引越しの季節です。
ということで今回の話題はアトピー性皮膚炎と引っ越しについてのお話をしていきましょう。

アトピー性皮膚炎の全身療法とは

まず簡単に全身療法の説明をしていきましょう。こちら2018年より治療可能になったいわゆる新世代の治療法です。
一般的には昔ながらのステロイドではない抗ヒスタミン剤ではない、注射剤もしくは内服薬での治療法というようにお考え下さい。
具体的な名称を列挙しますと、
注射剤:デュピクセント、ミチーガ、アドトラーザ
内服薬:オルミエント、リンヴォック、サイバインコ
(2024年3月、保険適用薬のみ)
です。

今までの治療と違うこと

では過去の治療と何が違うのでしょうか?
まずは治療効果が全然違います。過去の薬剤に比べ治療成績が群を抜いて高いです。副作用については薬剤によってそれなりに出ますが、それも併せ比較しても過去の薬剤よりも治療ー副作用比が良いのは特徴でしょう。
次に値段が高いこと。
薬剤価格、いわゆる薬価ですが、こちらも前世代の治療と比較し遥かに高いのです。月に数万円。安くても2万円程度、高いと6万円以上が必要になることも多くあります。
こちら、費用と副作用と治療効果が過去の薬剤と異なることが一つの特徴でしょう。

実はレセプトについても異なります

レセプト?と思われるかもしれませんが、こちら、医療機関が保険者(国民健康保険とか社会保険とかです)に請求するいわゆる「請求書」となります。
このレセプトを送り、審査のうえ、認められた分だけ収入となるのが日本の保険医療というシステムなのですが、このシステムとアトピーの全身治療薬の兼ね合いが引っ越しの時に問題になるのです。

アトピーの全身治療にはレセプトに追加記載が必要です

というのがシステム上のルールとなります。
このルールは絶対的なものです。記載がないとアトピー性皮膚炎の全身治療が認められないということになるのです。

こちらの記載事項ですが薬剤により多少は異なります。
内容としては医療機関が的確か?患者さんにはスタンダードな治療を過去にきちんと行っているか?アトピーの症状は強いのか?をそれぞれ記載するのですが、これが時に問題になります。

そのデータは医療機関の手元にあるのですが、患者さん本人にはお渡ししていないことがほとんどです。だって普通は使う機会などないですからねえ。

ただ、引っ越しにより、ほかの医療機関を受診するときにはその情報がないことが医療機関側で問題になることがあります。

追加情報がないままほかの医療機関を受診したらどうなるのか?

これは難しい話になりますが、理論的に考えられる最悪な経過を説明してみましょう。

患者さんが新規医療機関を受診しました。しかし医療機関には情報がありません。
患者さんの薬歴を見ると全身治療薬を使用してます。しかし受診の時に症状は落ち着いているので、受診時の皮膚データは全身療法の基準には該当しません。
ということでいったん全身治療を中断して症状を悪化させ、全身療法の基準に達してから全身治療薬を処方することにしました。

いかがでしょうか?なんて不合理なんでしょう。患者さんの湿疹をわざと悪化させるなんてと思うかもしれませんが、ルールを順守する限りこんなことが起こる可能性があるのです。

なので、実はレセプト記載情報が有るか無いかというのは結構大きな問題になるのです。

このような事態を防ぐためにどうしたらいいのか?

段取り大事。
というのが結論です。

1、引っ越し前にいつもの医療機関を受診しましょう

こちら、時間を作って一度、いつもの医療機関を受診することが大事です。
そこからすべての段取りを組んでいくのです。

2、引っ越しを伝え、紹介状を書いてもらう

まず引っ越しをすること、こちらに通院できないことはきちんと説明しましょう。引っ越して受診できないのは仕方ないのです。医療機関から引き留められることもないと思いますよ。
あとは引っ越し先について説明し、可能であれば近隣で全身療法を行っている医療機関を聞いてみてもよいかと思います。意外にに情報を持っている場合もありますし、時間は少しかかりますがメーカーさんに問い合わせをして情報を提供してくれる場合もありますよ。

そして紹介状を記載してもらいます。レセプト記載事項については理解している医療機関がほとんどだと思うのでここではお願いをするだけで大丈夫だと思います。
ただ気をつけてほしいのは記載事項が多いので即時お渡しができない可能性があることです。外来中に書類仕事は混雑状況を考えると断られる可能性がありますからねえ…
もしも受診時に紹介状が欲しいのであれば事前に電話で段取りを組むのも必要かもしれませんね。もしくは後日受取であることを了解するかですね。
こちらはマンパワーが必要な作業である以上止むをえないことかと思います。

3、新しい医療機関を受診する前に

できれば電話で問い合わせを行うことを推奨します。医療機関ごとにポリシーが異なります。院内処方院外処方の違いもありますし、種類によっては院内接種だと在庫の問題も出てきます。
そのためにいきなりの受診はあまり推奨はできません。
同様に調剤薬局にもあらかじめ話を通しておく必要もあります。

引っ越し前にすべきこと

段取りをしっかり組んでいれば医療機関の変更自体は心配することではありません。
ただ大事なのは時間に余裕を持つこと。しっかりと説明をすること。
その2点だけです。

せっかくアトピー性皮膚炎の全身療法で皮膚の症状を抑えているわけですから、引っ越し後もしっかりとコントロールを続けていきたいところですね!

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