応援している芸人が優勝した日
初めて、応援している人たちが目の前で優勝する瞬間を見た。恐らく一生忘れられない光景になるだろう。
それまでの軌跡を少しだけ記しておこうと思う。
まずは彼らが参加した大会の概要から。
お笑いJACKPOT
今年また、新たなお笑い賞レースが生まれた。
『お笑いJACKPOT』
出場資格は芸人としての年収が100万円以下、優勝賞金は100万円。
主催及びスポンサーは「のむシリカ」という飲料水を販売する株式会社Qvou一社のみ。
数十組の出場者の中からTikTok動画の予選を通過した30組が準決勝へ進出し、9組が決勝戦へ。
決勝戦は2部制でファーストステージで1位から3位を獲得した4組が優勝を争った。
準決勝も決勝も勝敗を決めるのは観客投票のみ。
出場者が舞台に並び、背後にはテーブルが置かれる。
観客はステージに上がり、渡された3枚のチップをおもしろいと思った組のテーブルに1枚ずつ置いていく。
ユニークな大会だ。
9/23(土)決勝戦
決勝戦の会場は今年オープンしたシアターマーキュリー新宿。マルイ本館の8階にある。キャパは130席ほど。
受付を済ませると「のむシリカ」のペットボトルと投票用のチップを3枚渡される。会場は指定席制だった。
MCはハマカーン。
若手芸人たちが緊張しないように、観客たちも笑いやすいように和やかに楽しく進行してくれた。おかげでトップバッターのばし太さんから会場の雰囲気もよく、笑い声が響いていた。
出順はくじ引きで決められていたらしい。
私が応援するきつね日和は7番目だった。
きつね日和
きつね日和はビクターミュージックアーツに所属する漫才コンビ。コンビ結成歴は5年。芸歴はツッコミのおいなり達也さんが10年でボケの松本昌大さんは5年。
漫才はおいなりさんのダメだろーー!!🦊👉💥というツッコミが特徴的だ。
きつね日和がコンビを結成して約半年後には例の流行病が蔓延しライブに出演することが難しくなっていた。そんな時期に2人は音声配信アプリでラジオを始める。
そこで、おいなりさんと同郷の先輩漫才師、三拍子高倉さんと出会い、数週間後に三拍子のYouTube生配信「生漫DAY」に出演。(2021年4月)
私はこの配信で初めて2人の漫才を見て「ダメだろーー!!🦊👉💥」のツッコミが耳に残りおもしろくて興味を持った。
Radiotalkの配信を聴き、当時は地方に住んでいたので出演するライブの配信を見ているうちに、いつのに間にか自覚のないままファンになっていた。
初めてライブを見に行ったのは2021年7月。中野芸能小劇場。
生で見るダメだろーー!!🦊👉💥は声がよく響いて配信で見るよりもずっとおもしろかった。
決勝戦ファーストステージ「絵描き歌漫才」
きつね日和はファーストステージで「絵描き歌漫才」を披露。
公式YouTubeにも掲載されているが、一部を大幅に改変。
そこがめちゃくちゃおもしろかった。
お腹を抱えて笑った。会場中から笑い声が響いていた。おもしろさでも笑いの量でも確実に上位3組に入ると確信。
それでも何が起こるかわからないのがこの手の大会。投票の為にステージに上がると既にきつね日和のテーブルには多数のチップが置かれていたが、他の組も同じくらい置かれている。
席に戻り、結果発表を待つ。
同率3位が2組、2位が1組読み上げられる。きつね日和は2人とも険しそうな祈るような表情をしていた。
「1位、きつね日和」
思わず両手を掲げてガッツポーズ。
2位とは20票ほどの差をつけての1位。
優勝に一歩近づいた。
マシェバラeveryday
きつね日和は毎週月曜日にマシェバラeverydayという配信アプリの番組でMCを務めている。
アプリ内の配信でオーディションバトルを受けるアイドルなどを紹介したり、トークをしたりまずいジュースを飲んでリアクションで視聴者を楽しませる。
マシェバラeveryday MCに抜擢される以前、きつね日和は「漫才狂い〜まんぐる〜」というライブを主催していた。M-1グランプリに向けて漫才の腕を磨く為におもしろい漫才コンビをゲストに呼び、自分たちはMCをして新ネタを披露。 ゲストとのトークも行った。
1年間毎月行った主催ライブで MCとしての力がつき、今では様々なライブで任されている。
きつね日和のMCは安心感があり、どんな人が来てもその人がおもしろくなるようにフォローしてくれる。だからマシェバラeverydayに抜擢されたのだと思う。
現在はトークスキルを磨くべく毎月2人でトークライブを行ったり、スタンドFMでラジオの収録配信を行っている。
全ては売れてテレビに出る為に。
2人で試行錯誤を重ねて自分たちに何が必要か考えて行動している。失敗したり成果が伴わないことがあっても、着実に実力を身につけて成長している。
漫才もトークもMCも、去年の今頃よりもずっとおもしろくなっている。
初めて生漫DAYで見た時とは比べ物にならないくらい自信もついて貫禄もついたように思う。
そんな2人を見て、応援したいと思う人も続々と増えている。
会場にはずっと以前から2人を応援している人たち、生漫DAYを通してファンになった人たち、マシェバラを通してきつね日和を知った人たち、他にも様々な形で2人を知って好きになった人たちがいた。
全国各地に住む人たちも配信で2人の様子を見守っていた。
私のすぐ近くにはマシェバラきっかけできつね日和を知った人たちがいた。2人が登場しただけでとても嬉しそうで、ダメだろーー!!🦊👉💥が出た時はとても楽しそうに笑っていた。
きつね日和が優勝した瞬間には涙を拭っているようだった。
決勝戦ラストステージ「歯医者漫才」
出順はファーストステージの投票数が少なかったコンビから。1位通過のきつね日和はトリ。同率3位が2組いたので4番目の登場。
囲碁将棋の文田さんを彷彿とさせる「どうもーー!!」と共に2人が登場。
優勝を願って緊張しつつも、いざ漫才が始まるとおもしろくて笑ってしまう。
会場は男女比が半々くらいだったが、きつね日和の時は男性からの笑い声も多く偏りがなかったように思う。
ラストステージの投票は1人1票。
私は会場の真ん中より少し前の列くらいに座っていたが、既にきつね日和のテーブルには多くのチップが置かれていた。隣のきつね日和ファンの人と静かに優勝を確信する。
結果発表。
テーブルは朱色の布で覆われ、ファイナリストたちは後ろにまわり心配そうに眺める。
ハマカーンの浜谷さんが堺正章のテーブルクロス引の小ボケを挟んで、ゆっくりと布を引き上げる。
きつね日和優勝。
\きつね日和優勝/
会場は大きな拍手と歓声でわき、2人は笑顔で喜んだ。
額に入れられた状態の優勝賞金100万円と「のむシリカ」1年分が渡された。
松本さんが優勝賞金100万円は売れるための投資に使うと言うと、ハマカーンの神田さんは「君は本当に良い人だね。」と感嘆。
そして会場に駆けつけてくれた人たちへのお礼を述べた。松本さんが成城石井で正社員として働いていた時にお世話になった上司やパートさんも来ていたらしい。
2人ともこの大会に賭けていた。
「お笑いJACKPOTで優勝しなければ何も始まらない。」と。
100万円がほしいだけではない。100万円を使って売れる為の何かをしたい。現状を打破したい。
2人が熱心に取り組む姿を見て心を動かされたのはファンだけではなかった。
おいなりさんはファンがいないピン芸人時代を何年も経験したと語った。オーディションの時に芸人をやめろと言われたこともあるらしい。
今はこんなに応援してくれる人たちがいる。
諦めずに10年間頑張って来た証だと思う。
きっと私達には想像もできないくらい、本人にしか分からない辛いことや苦しいこともあったと思う。
それでも続けてくれてありがとう。
巡り合わせと応援の連鎖
優勝賞金100万円を額縁に入れて持ち帰ったきつね日和。夜中にお札を額から外す様子を配信。喜びを一切隠さず2人で楽しそうに話しながら作業を行っていた。
100万円をバックに夕飯は松屋のチーズ牛丼。
今でこそ仲が良い2人だが、2年前はまだ少しぎこちなさがあった。一度2人で大喧嘩をして(その様子もRadiotalkで配信)、そこから変わったように思う。
変化といえば、ここ数ヶ月で1番大きな変化は松本さんがマシェバラを通してアイドルグループの「にっぽんワチャチャ」に出会ったことだろう。
ワチャチャもきつね日和と同じく、デビューしてすぐに例の流行病で活動を大きく制限された。それでも前向きにその時できることを精一杯全力でやって武道館ワンマンという目標に向けて活動している。
松本さんはマシェバラでメンバーの遠藤Nozomiさんのトークスキルやファンが推す熱量に惹かれ、ものすごい速さでワチャチャのオタク(ワチャポ)になった。
ワチャポになった松本さんは以前とは比べ物にならないくらい目に輝きを取り戻し、生き生きとしている。
ワチャチャの「愛の言葉は聞き飽きた」にこういう歌詞がある。
まさにこれだろう。
ワチャチャの歌や言葉、目標に向かって直向きに頑張っている姿が松本さんの背中を押してくれたのだと思う。
ワチャチャに背中を押されたきつね日和もまた、笑いで誰かを勇気づけている。
応援は連鎖していく。
あのタイミングでワチャチャに出会った巡り合わせは奇跡としか言いようがない。
きつね日和は運も味方につけている。
なぜかコンビ2人とも、家にヤモリが居着いているし。
きつね日和は10月1日にM-1の1回戦に出場する
会場はなぜか静岡の沼津ラクーンよしもと。しかもトリ。
この勢いでチャンスを掴んで売れちゃってください。
良い景色を見せてくれてありがとうございます。
お笑いJACKPOT決勝戦の様子はこちらで。
準決勝の様子
な〜んちゃってマッチョマーン