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変なおじさんばっかり出てくる漫才の大会

変なおじさんばっかり出てくる漫才の大会を見て来た。
「THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024」
・コンビ歴16年以上
・1対1のトーナメント形式で優勝者が決まる
・ネタ尺は6分間
という漫才の賞レース。

今年の参加者数は130組以上。東京と大阪で計5日間に渡り審査員による選考会が行われ、ノックアウトステージと呼ばれるトーナメントに進む32組が決まる。(昨年ファイナリストの4組は選考会を免除。)

東京選考会のMCはキクチウソツカナイ。さん。

「変なおじさんばっかり出てくる大会」というのは2日目にキクチさんが言った言葉で、本当にその通りだった。変なおじさんばっかり出て来る。
私は東京選考会の1日目と2日目を見に行ったが女性は夫婦コンビ「おしどり」の1人だけで、彼女もまた夫が針金細工をする横でアコーディオンを弾きながら歌うという一風変わった芸を見せてくれた。


昨年はM-1グランプリの1回戦を見に行ったが、やはりコンビ歴16年以上となると全く雰囲気が違う。

M-1の1回戦は芸人になったばかりの人や、下手したらその日が初舞台なんて人もいる。ネタを飛ばしたり噛んで台詞が言えなくなりどうにもならなくなる人や、手が震えている人もいた。
1回戦のネタ時間は2分間。2分15秒で爆発音が鳴り強制退場というルール。

一方THE SECONDは全員がコンビ歴16年以上。
だからほぼ全員おもしろい。

噛んだり飛ばしたりしても、相方がおもしろに変えてくれる。実際、緊張のあまり噛んで何を言ってるかわからなくなってる人もいたが、相方が呆れた感じで言った一言で笑いが生まれた。そのくだりで時間を使ってしまい最後は時間切れとなったが、THE SECONDは6分45秒を過ぎると徐々に暗転して行くシステムなのでタイミングよく真っ暗になり、それすらもおもしろかった。

何が起きても笑いに変える。

あるコンビは、いつもはウケるところで観客の反応が薄かったことに文句を言って爆笑を生み出していた。

同じようなくだりばかり続いて観客が飽き始めて来たところに、こちらの気持ちを察したかのような一言で笑わせてくれたコンビもいる。そこから予想もしない展開が始まり爆笑の連続。

そういえば、自分たちのネタが始まった途端に帰った観客に向かって話しかけて爆笑をかっさらって行ったコンビもいた。

「つかみ」で観客の心をがっちりつかみ味方につけたコンビも複数いて爆笑を生んでいた。そのつかみのほとんどが“THE SECONDに来るような客”なら知っていて喜ぶ話題だった。

M-1よりも観客との心理的距離が近く感じる。決まったものを決まった通りにやるのではなく、その時、その場所、見ている観客に合わせて変えていく柔軟さ。  

名人芸の連続。

寄席のような客いじり、どの舞台でもウケる完成されたネタ、トーンとテンポが良く聴き心地の良い喋り。

6分というネタ時間を活かして前のコンビがやったネタやMCの発言をいじったり、急なアドリブを入れて相方を追い込んで笑いを生み出したり(アドリブと見せかけた台本かもしれないが)と言った遊びのような部分。

M-1グランプリの予選は無駄を削りに削っておもしろい部分を抽出して凝縮したような漫才が続くが、THE SECONDの選考会はそう言った遊びの部分もおもしろい。

ネタ終わりのお辞儀も深く綺麗で、みんなゆっくりと歩いて帰って行く姿も堂々としていて、「何百回、何千回、もしかしたら何万回もやって来たんだなぁ…。」と暗転中、舞台袖からのほのかな灯りで浮かび上がるシルエットを見て思った。

M-1のキャッチコピーは「人生変えてくれ」だったが、THE SECONDはその人達の積み重ねて来た人生の厚みが漫才に投影されているようだった。


…と書くとなんだか崇高な大会に思えそうだが、実質はやはり「変なおじさんばっかり出て来る大会」である。

ネタバレになるので詳しくは書けないが
何組かはサンパチマイクを本来の使用目的以外の使い方をしていたし、
骨折して左足にギプスが巻かれている人や病気療養中で杖をついて歩く人もいたし、
持病をネタに漫才をしていた人もいる。

ツッコミが頬にグーパンチなコンビもいたし、
なんか喧嘩し始めたコンビもいたし、
大阪から来たおじいちゃん達は嬉しそうにはしゃいでいたし、
自分で最強漫才師って言ってるコンビもいたし、
「相方が来ないので出場を辞退」というMCのアナウンスで観客が爆笑したコンビもいたし、
現役清掃員、現役YouTuber、現役介護士、現役市議会議員
世紀末覇者やフリーザ様、遠藤憲一も現れた。

自分たちについて話す喋くり漫才、際どい芸能ゴシップも含む時事ネタ、歌ネタ、コント漫才、なんか良く分からないが何かをするたびに拍手喝采でとにかく会場を盛り上げたコンビもいた。

実に多種多様な形の漫才を見ることができる。

とにかくおもしろい人ばかり出てくるので笑い疲れる。

漫才っておもしろい。

2日目の最後の方はお腹と頬が筋肉痛になりかけて、笑うと頬が痙攣した。

賞レースだが開演すればもう最高のお笑いライブ。
満足感と余韻がえぐい。

定期的に見に行きたい。


2日目は特に応援しているコンビも無く、何組か気になるコンビがいたのでせっかくだから3部全部見た。R-1やM-1の時も思ったが、応援しているコンビが出ない賞レースの予選というのはものすごく気軽に見ることができる。

対して応援しているコンビが出る予選はなぜか緊張してしまう。前日の夜はなかなか寝付けないし、当日も頭の中はそのことでいっぱいだし、会場が近づくと心拍数が上がり落ち着かない。見に行くだけなのに。

開演すればMCが次のブロックの出場者を読み上げるたびに緊張感があるし、他の出場者がウケると自分も笑ってるにも関わらず若干ドキッとする。

だが、いざ応援しているコンビが出てくると大いに笑わせてもらい「やっぱり最高や!!!」と思い、また次も見たくなるし優勝してほしいと願ってしまう。

まだまだおもしろいやついっぱい持っているのでノックアウトステージに進んで笑わせてほしい。

結果発表は2月14日以降。






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