やぶ医者が町から消えない理由を棲み分け理論で考えてみた

みなさんも、病気やケガをして町のクリニックにかかるとき、よい先生(良い診断と良い治療をしてくれて、できれば親切な先生)に出会えることを望むのではないかと思います。言葉はわるいですが、「やぶ医者」にはかかりたくないというのが本音ではないでしょうか。ところが、なかなかそう思い通りにならないのが現実です。

すこし私と家族の例をあげてみます。1つ目。私は頭痛持ちで、その原因の一つが副鼻腔炎であることがわかっています。以前、副鼻腔炎が見つかってマクロライド系抗生物質とカルボシステインで治療を受けたことがあります。それからしばらくして、また頭痛が続くので副鼻腔炎を疑って、駅近の耳鼻咽喉科のN医院に初めてかかることにしました。私が副鼻腔炎を疑っていると話したら、そこの先生は私の鼻のなかをほとんど見もせずに(診察もせずに)、マクロライド系抗生物質とカルボシステインが出されて終わりでした。そんな決まりきった薬を出すだけだったら私でもできます。あまりに手抜きな診療だったのでがっかりしてしまいました。その後しばらくしてから、別の大きな病院で診察を受けたら、薬では治らない副鼻腔真菌症だということがわかり、手術を受けたという経緯があります。

2つ目。冷たいものや熱いものを食べると歯に沁みるようになりました。そのことを、いつも歯のクリーニングをしてもらっている駅近のTホワイト横浜デンタルクリニックに相談したら、レントゲンでとくに異常はないので歯を抜くしかないというのです。歯が沁みるだけなのに抜くしか治療法が思いつかないとはどういうことなのかと、あきれてしまいました。その後、知覚過敏用のハミガキを使うようになったら、歯がしみるのは治ってしまいました。そこのクリニックは歯のホワイトニングは得意なので、歯のクリーニングのためにその後も通っています。しかし、歯を治療する必要が出てきたら、他の歯科医を探すつもりです。

3つ目は妻から聞いた話。胸に打撲を受けてからずっと痛みが治らないので、駅近のY整形外科を受診しました。レントゲンを撮ったところ骨折が写っていないということで、妻の痛みの訴えを少しも聞こうとせず、「骨は折れていないのでじきに痛みは治ります」と、決めつけるような言われ方をするので不信感を感じたといいます。それで、別の整形外科を受診したところ、レントゲン、エコー、触診、問診と、ていねいな診察を受け、肋骨の骨折が見つかったそうです。肋骨は、軟骨でできている部分があるので、レントゲンでは骨折が見つからず、エコーで骨折の診断がつく場合があるのだということが、ネット検索したらすぐに出てきました。素人がネットで調べてもすぐわかるような診断法ができない医者もいるのだとビックリしました。

3つ例をあげてきましたが、皆さんも同じような経験は少なからずあるのではないでしょうか。なんども言いますが、言葉はわるい「やぶ医者」という存在はなぜ町から消えないのでしょうか。今西錦司博士が考案した「棲み分け理論」で考えると説明がつくように思いました。「棲み分け理論」とは、「異なる種が生息地域を棲み分けることでお互いに共存しながら種分化を果たしていく」という進化学の理論ですが、それがほんとうに進化の原動力としてはたらいているかどうか科学的に実証はされていません。しかし、現存している動物たちの生態系の説明としてはあり得る理論です。医者も、良医とやぶ医者が棲み分けることで共存しているのではないでしょうか。「やぶ医者」はなぜか駅近に古くからあるので、それなりに需要もあるのです。良質な医療は提供できなくても、とにかくどこでもいいから医者にかかりたいと思った人や、近くに住む高齢者が望む手っ取り早い医療は提供してくれます。つまり、患者が欲しがるなんらかの薬やリハビリを安易に提供してくれるので、そうとう問題のある医療(誤診による死亡やハラスメントのたぐい)の評判が立たない限り、訪れる患者はいなくはならないのです。やぶ医者とはいっても、だれでもなれるわけではないある種特権的な仕事です。そうやって良医と棲み分けして共存することで、やぶ医者は町から消えないのだと思います。

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