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地方演劇を真面目に考える会 番外編8 【演劇環境を良くしたい!! 観客を増やす!編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

観客を増やすんや!!

今回から、演劇環境を良くする要素について、ひとつづつ考えていこうと思います。ただ、いきなり初回から「観客を増やす」という、演劇人全員が頭を悩ませているテーマとなりました。自分は観客依存型の演劇運営には、あまり興味がないので、正直、まったく自信がありませんし、そもそも、できるとは思えないのですが、ただ、大都市圏での観客の増やし方と、非大都市圏の観客の増やし方は、すこし違う部分があると思います。これをもし、将来、非大都市圏で演劇をやっている人が、本とかネットで書いてあることをやっても、観客が増えないなと思っていれば、すこしだけヒントにでもなればいいなと思うので、書いてみようと思います。

観客を増やすためにできる事

以前に観客数について考えたときに、観客数を増やす・維持する・減らさない方法について考えました。これを元に、もう少し細かく考えていきたいと思います。

観客を増やす方法

・面白い作品を作る 
とにもかくにも、これが一番重要な部分だと思います。他の部分をいくら頑張っても、作品が面白くなければどうしようもありません。ただ、面白い作品を作るのが一番難しいです。そもそも演劇をするというのは、作品を作るとほぼ同じなので、ここを楽しめばいいと思います。
・宣伝活動 
観客を増やす一番わかりやすい方法は、この宣伝活動だと思います。色々な方法がありますし、地域事情によってもかなり変わります。最近はSNSが進化して、どんどんやり方も変わってきています。だた、大きくは、三つに分かれています。
・メディア
新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等、公演の情報を扱ってもらうやり方です。特に地域によってローカル誌等があると思いますので、それらにリリースノートを送ってみると、案外扱ってもらえると思います。リリースノートの書き方については、検索すればすぐに出てくると思います。
・SNS/ネット
近年はSNSでの情報拡散力がつよいので、ツイッターなどで公演情報や、稽古の写真を上げたりしているようです。お金もかからなく非常に便利なので使わない手はないと思います。
また、HPや、ポータルサイトなども今では基本無料でできる事がおおいので、作るに越したことはありません。特に公演情報やチケットの入手方法などは、きちんとした公式HPで扱わないと、興味のある人が、情報を入手できないということになりかねません。
簡単なのでいいので、劇団案内・公演情報・チケット予約案内が載ったHPは作っておいた方がいいと思います。
ポータルサイトは、非大都市圏では、有効性は低いと思います。ただ、数分でできることなので、やっておいて損はないかと思います。
・口コミ/チラシ配布
また、カフェや個人のお店などにお願いして、チラシやポスターを置いてもらう方法もあります。
口コミに関しては、いろいろな方法がありますが、知り合いに直接メールやあった時に、チラシを渡したりして宣伝するのが、一番効果的です。断られたりすると精神的ダメージをうけたりしますが、一人来てもらうと、その人が別の人を読んでと、最初の一人が観客を呼んできてもらう最初の一歩だと考えれば、地道ではありますが、大事な宣伝活動だと言えます。

宣伝活動といっても、目的によって、方法や手段が変わってくると思います。公演の宣伝もその一つですが、長期的な劇団員獲得や劇団自体の宣伝もあります。そう考えると、一つの公演も、長期的な宣伝の一つとも考えられます。マーケティングにはさまざまな考えや手法がありますが、需要と供給、ターゲットはどこか? そしてなにを宣伝したいのか? アピールポイントはどこなのか? をまず明確にした方がいいと思います。ただ、だらだらとチラシを作ったり、SNSを更新しても、効果が出てないことが多いと思います。

・年間公演数を増やす △
単純に公演数を増やせば、必然的に観客数は増えてきます。しかし、無理に増やしてしまって、作品の質が低下してしまっては意味がありません。自団体の状況などを踏まえて、適切なスパンで公演を行うことを考えたほうがいいと思います。
・出演者を増やす △
出演者には、その人を見るために来る観客が存在します。つまり出演者を増やせばその分、観客数は必然的にあがっていきます。観客数の事だけを考えれば、いい方法に思えますが、作品制作的には、観客目当てに出演者を呼ぶというのは、双方ともにあまりいい気分がしません。やはり作品主体で、登場人物数や出演者を選ぶ方がいいと思います。
・チケット代を安く設定する △
チケット代を安くすれば、観客側からすれば来やすくなります。特に観客を増やすという観点からすると、やすければ初めての人も来やすいとは思います。ただ、公演にかかる経費との兼ね合いもあるので難しい所です。よく映画の料金と比較されることが多いので、千円だと安い方、2千円を超えてくると演劇を観たことのない層からすると高いという意識を持たれるかもしれません。
後、チケットプレゼントを実施するというのもあると思いますが、そもそも応募するというひと手間は、興味のある層にしかやってもらえないので、非大都市圏では効果は薄いと思いますが、やれるなら、やっておいたほうが、観客数増加には少しは役に立つかと思います。
・人気のある役者を起用する △
大都市圏ではよくある手法ですが、非大都市圏ではなかなか難しい手法だと思います。観客数を増やすという点からすれば、とても効果的ではあると思います。役者だけではなくて、ミュージシャンやタレントなど、演劇以外の観客層が来てくれる期待はあります。
 ただ、やはり観客を目当てに出演者を選ぶことと同意義ではあるので、あまり積極的にやっていると、長期的にはデメリットがあると思います。
・話題性のある作品を選ぶ 〇
地域の話題やニュース、歴史などを題材にすれば、関係のないものよりも関心度は上がると思います。また有名な作品を上演するのも効果的です。
・観客が来やすい時期・日時・曜日を設定する 〇
公演数を増やすのと同様に、時期や日時・曜日は観客が来やすい日にすればもちろん観客を増やす要因になります。よく言われているのは、イベントが多い、春・秋頃。日時は、始まりはお昼ご飯を食べた後にゆったりと来れて、終わりは帰った後にゆったりとご飯でも食べて帰れるぐらいの時間を設定すると来やすいかと思います。
曜日に関しては、土日祝が一番よいのですが、その曜日が仕事の人もいるので、平日を一日設定すると、無駄に日数を伸ばすよりも効果的かもしれません。
・交通の便が良い場所を選ぶ 〇
大都市圏ではあまり問題にならないかもしれませんが、非大都市圏では、重要になる場面があります。特に車社会である場合は駐車場があるかないかはかなり意識しておいた方がいいです。予想以上に観客が来た場合にはトラブルになる可能性もあります。観客云々の前に、駐車場のチェック(駐車場がなくても、近くにコインパーキングがあるか?)はしておいたほうがいいでしょう。
・観劇人口の多い場所で上演する 〇
結局、非大都市圏で公演をするよりも、大都市圏で公演をした方が、観客数が延びる可能性が高いのは間違いない事実です。地域での活動を大事にしている場合でも、余裕があれば、大都市圏での公演をしてみて、いろいろな意見にさらされるとまた違った見方ができると思います。特に長い間やっていると固定の観客だけで、批判にさらされずに、よくない方向性に行ってしまう可能性もあります。特に大都市圏には、演劇に厳しい目を持っている人の感想をきける可能性があります。予算もあがって大変ですが、超式的にはやってみてもよいかと思います。

他の要素
・人気スター役者が生まれる。
・他メディアで演劇が扱われる。
・演劇を学校教育の一環に組み込まれる。
・大きな大会が開かれ、注目を浴びる。
上記は、もうどうしようもない状況ですが、爆発的に観客が増える要因ではあります。将棋の藤井6冠のように大スターの登場や、囲碁の「ヒカルの碁」で子供の人気が爆発したり、ストリートダンスが学校教育に正式採用されて、子供の間で習い事として定着したり、麻雀のMリーグのように、大会が注目されたり、ただ、どれも「子供人気」がすごく、すぐに効果があるのもありますが、それよりも、十数年後に、その子たちが成長した後にさらに躍進的に競技人口が増えて、人気の定番化がはかれるでしょう。
といったところで、非大都市圏の一劇団では、とうていなにかできる事ではないかと思います。

観客を維持する方法

観客数を増やすためには、そもそも一度来た人がもう一度来てもらうなど、新規開拓とは別に、維持の要素も大事だと思います。
特に、公演期間以外の時期をどうやって観客の気持を話さないようにするかは大事かと思います。
・SNSやHPなどで、継続的に情報をリリースする
宣伝の所でも書きましたが、SNSやHPを利用したりするのは大事なのですが、公演期間中だけになってしまうと、忘れられる原因にもなります。特に演劇は公演期間は短く、稽古期間の方が長く、そこに休止期間も入ると、観客的には、かなり長期間のスパンが空いてしまいます。作品を気に入ってもらっても、スパンが長いとその面白さも薄れて、忘れてしまうかもしれません。公演期間以外にも、SNSやHP、最近ならユーチューブなどの動画を使って、簡単な企画をするだけでも、全然違うと思います。
・ファンクラブなどを設立する。
登録すれば、特別なコンテンツがみれたり、特別予約ができたり、といった特典を用意するいわゆるファンクラブ的な物を作るのは、観客の気持をとどめるのに有効だと思います。結構維持するのは大変ではありますが、これをすることでリピーターは確実に増えると思います。特にかなり興味を持っている観客層に公演の情報を確実に届けることができるのはかなりのメリットです。
・リピーター割引などを導入する
効果はあまりないかもしれませんが、やらないよりはやったほうがいいかなぐらいだと思います。

観客が減る要因

減らさないというよりは、なぜ減るのか?を考えていきます。
・作品の評判が悪い
観客数が減少する理由で一番に考えないといけないのは、この作品の質だと思います。やはり面白くないと次、来てもらえません。特に演劇は、決まった時間に、決まった場所まで行かないといけません。そこで作品を見る価値は、一番はやはり質だと思います。戯曲・演出・演技・照明音響美術。色々要素はありますが、ここを一番大切にすべきでしょう。
また、作品の質に関連して、出演者が観客を呼びたいと思うか、思わないかも関係してきます。出演者にノルマをかせる劇団もありますが、そんなことをするよりも、お客さんを呼びたいと思える作品を作るほうがよほど健全だと思います。
・チケット代が高い
経験した方は判ると思いますが、公演費用はかなりかかります。しかし興行収入だけでそれを回収しようとすると、必然的にチケット代が高くなってしまいます。そうすると、気軽に見てもらえなくなってしまいます。
例えば、席の場所によってチケット代を変えるとか、物販を充実させるとか、方法はいろいろあります。そもそもチケット代を元に、公演費を計算したほうが、いいかなと思います。お金があればやれることは増えますが、面白さには欠け以内と思います。
・公演場所・日程が悪い
真夏や真冬はやはり外に行く気になれないのが人間です。また時間帯も、変な時間帯だと行きづらいです。もちろん場所も大事です。あと、観客が減る・増えない理由の一つに、公演期間の短さもあると思います。特に、非大都市圏の場合は、ロングラン公演を行った方がよいとおもいます。大都市圏では、公演の評判はかなり早めにまわっていきますが、非大都市圏だと、その期間が遅くなりがちで、評判を聞いて興味を持ったころに終わっていては、あまり意味がありません。
ロングランをする資金が厳しいという場合は、公開稽古やリハーサルに知り合いなどを招待して、情報を流してもらうなどの工夫をしてもよいかもしれません。
・宣伝方法が悪い、あまりしていない
増やすところでも書きましたが、宣伝はかなり観客数に直結するので、頑張れば頑張るだけ観客数は増えると思います。また、一回の公演の宣伝も、そこで名前を見て、次の公演につながっていきます。ただ、最近の宣伝方法の罠としてツイッターなどのSNSは、興味のない人いは情報が届きにくいという性質があります。そしてやっかいなのは、「やった気になる」という事です。SNSに頼るのではなく、他の方法と並行してやらないとあまり意味がないと思います。
・観客を呼ぶ役者が出ていない
増やすところでも書きましたが、出演者が少ないと、それ目当てで来る観客数も減る可能性が高いです。
・劇場で身内感があり、はじめて来た人がいづらい
非大都市圏で一番気を付けたほうがいいなと思うのはこれです。おそらく、出演者の知り合いなどが劇場を占める割合がかなり高いので、終演後、わいわいしてしまいがちです。しかし、知り合いがいない、はじめて来たお客さんは、その空気感に委縮してしまいます。いわゆる「場違い感」を感じて、足が遠のいてしまいます。
しかし、本当に一番大事にしないといけないのは、この興味を持って勇気を出して初めて演劇を観に来てくれたお客さんです。
こういった人たちに、場違い感を与えないために、終演後の送り出しの場所を限定する事や、受付で知り合いかどうかを聞かない。等、意外となあなあになっていることがあるとおもいますが、非大都市圏の劇団ほど、これを気を付けたほうがいいと思います。

まとめ

最初に書きましたが、自分はあまり観客を呼ぶという事に積極的な考え方をしていないので、あまり書いていて、これでいいのかな?という感じです。実際には、マーケティング戦略の方が役に立つでしょうし、劇団の規模や方針に合わせた宣伝戦略を考えることの方が大事だと思います。観客数は興行収入に直結する分、必死にならざる得ないことが多いですが、これが原因で劇団員が疲弊してく原因にもなります。よく言われるのが、友達を誘い過ぎて嫌がられて気づいたら友達がいなくなっていたなんていうのは、よくある話ですが、それでは、意味がないんじゃないでしょうか。
非大都市圏は、演劇を観るという行為があまり浸透していないので、演劇をはじめてみる観客が多いです。そこで演劇の魅力に気づいてもらえれば、それはとても楽しい体験になると思います。それ以上に、自分の作った作品を喜んでもらえるのは、どこの劇団であろうと一緒だとは思います。
かなり難しい事も多いですが、地道にやっていくのが一番だと思います。

つづきます。
番外編 その9はコチラ

特別編 その4はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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