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地方演劇を真面目に考える会 その12 【大都市文化圏との関わり方 後編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

近隣の都市圏との関係性

今回は、近隣の都市圏との関係性を見て行こうと思います。

 半数が、観には行くが公演はしないという回答でした。やはり公演となると大都市圏で金銭面などかなり負担が大きくなる、また、集客の面でも、かなり厳しく、そもそもやる意味がそもそもないのかもしれません。自分の劇団も、若いころは地元と大阪の二都市公演をやっていましたが、徐々に地元の活動に力を入れる割合が増えるにつれ、大阪でやる意味が薄れていき、ほぼやらなくなってしまいました。
交流面では、ある方がいいと思うのですが、そもそも非大都市圏の劇団がわざわざ大都市圏で公演をする理由は、集客面や評価というメリットがあるとおもうのですが、それ以上にいきなり大都市圏でやっても、興味を持ってもらえないのではないかというものがあるのかもしれません。それがあっているのかどうかはわかりませんが、演劇の多様性も面白い部分だと思うのですが、「この地域は演劇が面白いらしいだよな。見てみたいな」というように、地域演劇の魅力が全国の演劇に興味のある人に伝わってほしいです。
 少し「地域よりも大都市圏」という答えもあったので、いろいろな形態があるので一概にそうは言えませんが、郊外型の劇団なのかなと思います。

演劇に関する情報の入手方法

二つ目は、演劇に関する情報の入手方法です。大都市圏では、ネットや、観劇時にチラシ束があったりと、演劇情報に比較的アクセスしやすいですが、非大都市圏だと、演劇に関する情報自体がアクセスしづらく、送信するほうも悩みの種だと思います。

 今はネット、SNS時代だなという結果ですが、これもかなり難しい状況だなと思います。ネットやSNSは興味がある人は見ることができますが、すこし興味があるレベルではなかなか情報が届かないという難しさがあると思います。そして怖いのが、やった気になるという事。
次いで、口コミとありますが、これが一番、拡散力のある方法だと思いますが、一番難しい方法でもあると思います。今は、ツイッターがそれに近い状況ですが、実際に人から人への伝達は、大きな規模の劇団程効果的ですが、小規模な劇団には難しい方法です。
その他、メディア系。少なくともどの地域にもメディアはあると思いますので、それをうまく利用できれば、効果的かなと思います。

大都市圏の劇団との交流

これがついに最後のアンケートです。一つ目とやや被るのですが、大都市圏の劇団との交流があるかどうかです。

 大体、半々である側、ない側が分かれてるかなといった印象。
もちろん、距離の問題もあるので一概には言えませんが、独自の地域での活動をする劇団と、大都市圏との交流を持ちつつ活動をする劇団が分かれてしまったのかな?と思いました。
これも、色々環境や距離感でどう変わるのかを見てみました。

左二つが、演劇環境の良い県、あまり良くない県。

意外と、演劇環境があまり良くない県の方が、大都市圏との交流が強い稽古になりました。自地域の演劇環境がいいので、大都市圏との交流の必要性がないのか、距離的に離れている県が多かったので、演劇環境がよくなったのか? どちらか、どちらもなのか。
演劇環境が良くなる要因などはまた改めて考えてみようと思います。
東京に近い関東圏と、大都市圏から距離がある中国・四国地方でもみてみましたが、母数が少ないので何とも言えないですが、中国・四国地方の劇団が大都市圏との関係性が強いという感じが意外だなと思いました。
これをみれば、演劇環境が良くも悪くもない県がかなり大都市圏との関りが薄いんじゃないか? 距離も適度に離れている所の方が薄いんじゃないか?と逆読みをしてみたり。ちょっと面白いデータになりました。

大都市圏の演劇文化の影響についての個人的見解

 思いのほか、面白いデータになっているなと思います。大都市圏と距離が近いよりも、離れている方が演劇環境がよくなっていたり、演劇環境が悪い方が、大都市圏との関りがよかったり。
ただ、よく考えれば、距離が遠いから、大都市圏に文化を吸われることなく、自地域の文化が育ったということかもしれませんし、演劇環境が悪いから、大都市圏で演劇の影響を受けるということかもしれません。そもそも、これは演劇に限ったことじゃなくて、都市の生成と、文化状況の相関的な話なのかもしれません。
さて、今回でアンケートの内容は終わりです。次回は、全体をみての話を書いてみようと思います。

つづきます。
その13はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきはかりごと)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita

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