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【No.9 高校生スポーツ選手において大きな体幹筋を持つ競技種目は?】

※今回のnoteでは競技種目差についてのみ紹介しています.

<背景・目的>
これまでの研究では,体幹部を構成する筋群のサイズと競技種目特性との関連が示唆されているが,検討された競技種目は限定的である.この研究では,高校生スポーツ選手及び一般高校生を対象に,体幹部筋群の形態的発育の競技種目差について検討を行った.

<方法> 
・対象者 
高校生
スポーツ選手:男女各102名(陸上競技短距離種目・長距離種目・投擲種目,バレーボール,バドミントン,ボート,カヌー,柔道のいずれかの競技種目の国体強化指定選手)
一般高校生:男女各18名

・測定および分析 
0.2 TのMR装置を用いて,体幹部の横断像を撮影.腹直筋腹斜筋群(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の領域),大腰筋腰方形筋脊柱起立筋群(腸助筋,最長筋,棘筋,多裂筋の領域)の横断面積及体積指標(平均断面積×腰椎長)を算出.全ての筋群を合計したものを全筋群体積指標とした.体格の影響を考慮し,筋体積指標を除脂肪体重(空気置換法により測定)で除した相対値を算出.

<結果> 
腹斜筋群の体積指標(除脂肪体重当たり)は,男女ともに柔道がボートより,女子では陸上競技短距離種目・バドミントンがボートより柔道がバレーボールよりも有意に大きかった
大腰筋の体積指標(除脂肪体重当たり)は,男子では陸上競技短距離種目が柔道よりも有意に大きく,女子でも同様の傾向にあったが,多重比較においては有意な差が認められなかった.
脊柱起立筋群の体積指標(除脂肪体重当たり)は,男女ともにバドミントン,陸上競技投擲種目が陸上競技長距離種目より,男子ではバドミントンがバレーボールより陸上競技短距離種目,カヌーが陸上競技長距離種目よりも有意に大きかった
✓腹直筋の体積指標(除脂肪体重当たり)は,有意な競技種目差が認められなかった.

<考察> 
本研究の結果から,体幹部筋群の形態的発育には競技種目差があり,体格の影響を考慮すると,陸上競技短距離種目・バドミントンにおいて筋の形態的発育が顕著,と著者は指摘.陸上競技短距離種目に顕著な形態的発育がみられたことに関し,短距離走において体幹の役割が大きいことを著者は考察している.また,バドミントンにおいて発育の顕著な筋群(腹斜筋群,腰方形筋,脊柱起立筋群)とそうでない筋群(腹直筋,大腰筋)が認められたことに関し,激しい方向転換や打動作の影響を著者は指摘している.柔道で腹斜筋群の体積指標(除脂肪体重当たり)が最も大きな値を示したことについては,柔道における側屈や捻転の重要性を著者は考察している.

<結論>
高校生スポーツ選手の体幹部筋群の形態的発育には競技種目差があり,腹斜筋群は柔道,大腰筋は陸上競技短距離種目,脊柱起立筋群はバドミントンにおいて,体格に対する発育が著しい

<文献情報> 
村松ら:高校生スポーツ選手の体幹筋群の筋サイズ―性差と競技種目差の検討―,体育学研究,2010

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/advpub/0/advpub_09046/_article/-char/ja