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雑感:改憲のダブルスタンダート?~札幌地裁で下された判決を題材に~

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで

 先日札幌地方裁判所で、同性婚の違憲訴訟をめぐる判決が下されました。これをきっかけとした色んな方の投稿等を見ていると?と思うような疑問もちらほら散見されました。今回は、それについて書いてみたいと思います。

1.そもそも論

 NHKニュースによると、北海道内に住む同性のカップル3組は、同性どうしの結婚が認められないのは「婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に違反する」として、おととし、国に賠償を求める訴えを起こしました。17日の判決で、札幌地方裁判所の武部知子裁判長はまず「憲法24条の『婚姻は両性の合意のみに基づく』との規定は、『両性』など男女を想起させる文言が使われるなど異性婚について定めたものだ」として、婚姻の自由を定めた憲法24条には違反しないと判断しました。一方で「同性愛者と異性愛者の違いは人の意思によって選択できない性的指向の違いでしかなく、受けられる法的利益に差はないといわなければならない。同性愛者が婚姻によって生じる法的利益の一部すらも受けられないのは合理的な根拠を欠いた差別的な取り扱いだ」などとして、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するという初めての判断を示しました。国に賠償を求める訴えについては、「国会で同性カップルの保護に関する議論がされるようになったのは最近のことで、憲法違反の状態であると直ちに認識するのは容易ではなかった」として退けました。

 この裁判で争点となっている憲法の条文の内、憲法14条については現状の法律婚における婚姻を前提とする社会保障制度や税制度から漏れてしまう形となってしまう同性婚は、異性間との婚姻と比較して平等な恩恵を受けることができないという点で争点となり、憲法24条については条文に規定されている両性について国は男性と女性の結婚と主張していますが、原告側は両性というのが男性と女性という事だけしか解釈できないというわけではなく、男性と男性,女性と女性の婚姻も解釈の範囲に入れることができるという点で争点となりました。

2.勝った?浮かれ過ぎじゃないの?原告団

 結果として、札幌地裁の判決は憲法14条については違憲性を認めましたが憲法24条については国の主張と同じく両性は男性と女性の婚姻という解釈から違憲性を認めませんでした。

 北海道文化放送のニュースでは、原告団のコメントとして次のようなコメントを示しています。

原告団 国見 亮佑さん(仮名):「違反するとはっきり言ってくれて涙が出た。本当にいい判決を出してくれた。明日結婚できるわけではないので頑張っていきたい」

 原告団 たかしさん(仮名):「この2年間、裁判官に話したこと、心を込めて判決文を読んでくれた。一生忘れない」

 原告団 ななさん(仮名):「夢のようです。国が真摯にとらえて、検討してほしい」

 原告団 かほさん(仮名)「感動しました。日本が変わる第一歩になってほしい」

 確かに、異性間の結婚と同性婚の違いからくる税制度や社会保障の恩恵という部分で鑑みたら憲法14条の違憲性を裁判所が認めたというのは画期的な判決なのかもしれません。しかし婚姻制度の根幹となっている憲法24条について違憲性を認めなかったという点に目を向けたら、進歩があったとはいえ勝ち誇った感覚を覚えてはいけないと思います。

3.憲法9条を解釈で強行したのに?

 この判決の後、インターネット上では憲法24条の改正をという論調の意見を見ることがありました。

 例えば、自民党の山下雄平参議院議員はブログで次のような記載をしています。

札幌地裁は、憲法24条は「同性愛者の共同生活への一切の法的保護を否定する趣旨まではない」とした上で、「同性愛者に婚姻の法的効果の一部ですらも享受する法的手段を提供しないことは、立法府の裁量権の範囲を超えたものといわざるを得ず、その限度で合理的根拠を欠く差別にあたる」として、「法の下の平等」を定めた憲法14条に反する、というなかなか難解なロジックを展開しています。

裁判所は法律が憲法に適合しているかどうかの違憲審査権はありますが、憲法がどうあるべきといった問題は立法府や主権者たる国民が答えを出すことであり、たとえ現行憲法が現実の社会と合わなくなっていたとしても司法がその判断に踏み込むことはありません。

札幌地裁判決では「憲法24条は異性婚について定めたものとするのが相当だ」としています。
仮に野党や新聞社が主張するように、異性間の婚姻しか認めていない民法などを改正し、憲法には一切、手を付けなかったらどうなるか。
法律上は同性婚が認められるようになったのに、憲法には異性婚をスタンダードとして明記してあるというおかしな社会になってしまいます。

立憲民主党や共産党、社民党は2019年に同性婚を可能にする民法改正案を国会に提出しています。
他方、憲法24条の改正を求める声は聞かれません。
公党として、また言論機関として、憲法24条には触れず、法改正だけで対応しろと主張するのは、あまりにも護憲教条主義に過ぎると思います。

 だとしたら、次の事柄との整合性が付かず疑問になるんです。

 集団的自衛権の行使を可能にする憲法9条の解釈変更です。この場では議論の本筋ではないので詳細は書きませんが、憲法9条を解釈変更して集団的自衛権の行使を可能にしてしまうロジックが成り立つのであれば、政府側が憲法24条における両性は男性&女性だけでなく、男性&男性,女性&女性もOKですという解釈を示すという流れもできなくはないですか?という疑問です。

 実際現行の民法における法律婚とは=とはなりませんが、それに相応する関係性だという事を示す施策として渋谷区が行っている渋谷区パートナーシップ証明書や世田谷区の同性パートナーシップ宣誓といった、自治体レベルでの施策について国が法律に基づかずに何してるんや?みたいにがやがや言わない中で、憲法24条の改正をという論調が上がるのことが正直疑問です。私はこれを改憲のダブルスタンダードではないか?という疑問&謎を感じます。

4.最後に

 今回の札幌地裁の判決以外にもいくつかの裁判所で係争中だということで、この推移をまずは見守ることではあります。私自身は、改憲についてNOというわけではありませんが、改憲と解釈という法律のテクニカルな部分を今一度見つめ直した上で改憲への賛否を回答しないと、このままでは憲法が左派・右派の政争の具から脱却せず真に立憲主義の法治国家としての憲法として機能しないのではないか?という危惧を私は抱いています。

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