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雑感:鉄道があぶりだしたもの

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 恐らく記憶に新しい、JR西日本が4月に発表した「1日の利用客が1kmあたり2000人未満の路線」を取り上げたニュース映像です。JR西日本のニュースリリースによると、地域の皆様と課題を共有させていただき、「地域公共交通計画」の策定などの機会に積極的に参画し、地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズをふまえて、鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたいと考えています。ということで、あくまでも地域にとって鉄道が交通にどうフィットするかを考えるきっかけとして小石を投げたのかな?という印象を持ちました。今回はこれをテーマに色々書いてみたいと思います。

1.民間企業としてのJR

 昭和62年4月1日、これまでの日本国有鉄道(国鉄)から下図の6分割した民間企業としてJRが始動しました。昭和62年度の鉄道白書によると、国鉄から民営化することのねらいとして次の点があるそうです。

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経営基盤の整備,輸送の安全の確保,利用者の利便の確保,社員の意識の向上,良好な企業イメージの醸成

 中でも経営基盤の整備については、輸送需要の確保及び増大,営業活動の充実強化,業務運営の効率化及び経費の節減を民営化当初はねらいとして掲げています。民営化当初掲げていた狙いとして、JRが民間企業として自立して各社工夫を凝らしたサービスや国鉄の頃から計画されていた新幹線構想が次々に実現し、今では新幹線を上回るリニア新幹線構想が出てくるほどにです。一方、人口減少に伴って在来線の駅とりわけ今回のJR西日本のプレスリリースで挙がったような駅の業務をJRのグループ会社へ業務委託したり、当時の既存路線が廃線となったり第3セクター方式で運営を引き継いだり等、民営化後顕著に問題となった少子高齢社会が民間企業としてのJRの経営戦略における選択に繋がっている可能性は十二分にあると思います。

2.輸送事業に留まらない鉄道の役割

 1.で引用しましたニュース動画で取り挙げれている兵庫県佐用町にある上月駅では、特産物の直売所や地域のコミュニティスペースとセットにした駅舎を建てたり、佐用町から大学や専門学校へ通学する際の定期代の助成をしたりするように、鉄道が単なる人の輸送する事業という枠に留まるのではなく、当該地域における買い物や人々の繋がりを途切れさせないといった地域と密着した役割を地域と共に歩むことができる可能性があると思います。この可能性を具現化するためには、地域再生事業家の木下斉氏が著書で地域再生において必要だと指摘している覚悟にも通じる部分があるのではないかと思います。(参照:『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』pp88)

 この共存の仕方は、単に住み続けてもらうための手助けをするという側面だけでなく、岩手県紫波町のオガールプロジェクトみたいに町づくりとセットの動きの中で鉄道がリンクしていくという形もあるため、やり方は本当に無手勝流だと思います。地方にとって鉄道は無くてはならない交通インフラであるのは間違いないと思います。だけど廃線含みの可能性という小石を投げた民間企業としてのJRに対してなんでやねんと言うのではなく、町づくりと紐づけて考える契機に昇華することが出来るのではないかと思います。

3.おわりに

 今回のJR西日本の発表は、JR西日本の営業エリアに限らず他のJRの営業エリアにも及ぶ可能性は十二分にあるし実際東北新幹線が盛岡以北にまで延伸となった際には並走する東北本線の盛岡以北が第3セクターによる運営となり、初乗り運賃が数十円単位とはいえ違いが生じています。

 民間企業としての鉄道が地域の交通インフラとして生き残る上では、鉄道を街づくりにどう盛り込んでいくのか?というのが大切なのかもしれません。この視点は、例えばライターの速水健朗氏のエッセイ『東京β 更新され続ける都市の物語』の中で取り上げられているJRの新橋駅を基軸とした貨物専用の駅として国鉄時代に活用されていた旧:汐留駅や虎ノ門エリアに伝わるエリアの再開発といった都市部だけの話(pp219~pp224)だけでなく、鉄道と町がどうやって共存していくのかという視点が必要になるのかな?と思います。

 その際、JR側が地方の覚悟にどう向き合うのか?というのが問われているのと同時に地方もJR側と向き合う覚悟を街づくりの中で表現できるのか?が問われていると私は思います。

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