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自衛隊便利屋議論への雑感

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで

 日増しに感染者数が増えていく中で地域内における医療資源だけでは感染者のケアにあたるのが限界となり、自衛隊が支援に回るという流れになりました。こういう風に自衛隊が要請を受けて地域の手助けに行くとなると必ずと言っていいほど湧いてくるのが自衛隊は便利屋じゃない論です。今回はここについて雑感を書いてみたいと思います。

1.自衛官という仕事の矜持?

自衛隊派遣要請に「便利屋ではない」“ヒゲの隊長”が大阪・吉村知事に苦言

 上記ツイートは大阪府の吉村知事が自衛隊の看護師の派遣要請を行ったというニュースに対しての自民党佐藤正久参議院議員のツイートです。佐藤議員は自衛官出身で自衛隊便利屋じゃない論をかます方の多くは自衛官出身の方や自衛隊という存在をポジティブに見る方に多くいる傾向です。これに対して、吉村知事は下記のようなツイートをしています。

 そしてこのツイートに対して佐藤議員はこのようなツイートをしています。

 自衛官という仕事の矜持のキーワードである国防という点で鑑みたら、年がら年中自衛隊さん助けてぇ~なんて言うのはけしからんと思うのは自然な流れなのかもしれません。だけど、自治体が法律等を根拠にして自衛隊に手助けを求める背景には現状その地域内におけるマンパワーだけでは緊急事態を乗り切れない可能性があるから、最後に切り札として自衛隊さん力を貸してくださいと言っているという部分を鑑みれば一概に自衛隊がただの便利屋だという論点がどうして出てくるのか?というのは正直疑問ですね。

 一方で、自衛隊便利屋論の背景の中には佐藤議員がツイートで指摘されているように、緊急事態における自衛隊が係る範囲と意義をきちっと説明できていないというのも分からなくはないですが、それはやっぱり国が自治体等の関係団体との調整を怠った不作為が理由として重いと思います。そう考えると、自衛官の矜持があるとはいえ現職国会議員が自衛隊は便利屋じゃないというのはどこか不自然な感じを覚えます。

2.地域へ貢献→実践的な訓練

 元内閣府官房副長官補の柳澤協二氏の著書『自衛隊の転機』の中で、元陸幕長の冨澤暉氏、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏との鼎談の章がありそこで冨澤氏が次の指摘をしています。

 仮に国民から「自衛隊は、高い給料もらって何をやっているんだ。サボっているのではないか」と言われたときになんと答えるか。基本的には、我々自衛隊は訓練をやっていると答えます。危険な状態になっても任務を達成できるように日々、訓練しているのです。(pp115)

 日本は諸外国と比較して軍事力を行使して交戦状態になることがないため、専守防衛の理念を守りつつ万が一日本が他国と交戦状態になった場合を見据えて訓練をしていて、訓練で死者が出ていると冨澤氏は指摘しています。(pp115)こう考えたとき、こういう地域の非常事態への貢献というのはある意味ではケーススタディとしての実戦訓練と捉えることもできると思います。戦場に未知の感染症が沸き立った場合の対処法というケーススタディを。

3.国民の自衛隊に対する認識

 内閣府の 自衛隊・防衛問題に関する世論調査(平成29年度)によると、自衛隊に期待する役割(複数回答)で、災害派遣が79.2%を占めています。つまり、国民の意識ベースでみても自衛隊が国内において物凄く大切な役割を担っているというのは見て取れます。そう考えたとき、いくら自衛隊は便利屋じゃないと言っても便利屋という認識はすぐに変わるとは思えませんし、かといって国際法上違反とされている先制攻撃をするわけはありません。

 まずは国内における非常事態への対処を実戦でのケーススタディとして取り組み、自衛隊の存在感・安心感という信頼を積み重ねることが大切だと思います。


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