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雑感:ROCK IN JAPAN FESTIVAL2021

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 話題になっていますね。ROCK IN JAPAN FESTIVAL2021(以下、フェス)の中止。中止の経緯はORICON NEWS配信の記事に任せますが、今回の経緯を見ているとなかなかに根深い病巣がありそうな気がしたのが率直なところでした。今回はこれをネタに書いてみたいと思います。

1.茨城県医師会からの要請?

 中止を決断した背景には茨城県医師会が主催者側である茨城放送宛へ渡した要請書だそうです。要請書内において、茨城県医師会は次の点を要請しています。(原文まま)

1 今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止又は延期を検討すること。

2 仮に開催する場合であっても、更なる入場制限措置等を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと。

 これに対して、ROCK IN JAPAN FESTIVAL総合プロデューサーの渋谷陽一氏の名前で公式ホームページ並びに公式Twitterにて文書を発表しています。

 中でも特に気になったのが、解釈というキーワードを用いて茨城県医師会が茨城放送宛に渡した要請書の中身に疑問を呈していたことです。

「感染拡大状況に応じて」と書かれていますが、その解釈は余りに多様で基準が曖昧です。何をもって感染拡大とするのか、それに基づく中止や延期の基準となるものは何かは明示されておりません。感染者数なのか、死亡者の数なのか、病床の使用率なのか、あるいは緊急事態宣言の発令なのか、私たちには分かりません。それでは私たちは対応ができません。その状況で判断を先延ばしにすることはできません。(公式HPより、原文まま)

「観客の会場外での行動を含む感染防止対策」ですが、これも余りにも多様な解釈が可能で、もし文字通りの解釈をするならば、フェスに参加した方の会場外の全ての行動に対して、私たちは感染対策を行わなければなりません。それは不可能です。きっとそうではないのでしょうが、「会場外での行動」が何を示しているのか細部を議論する時間的余裕は、これまで書かせていただいたように私たちにはありません。私たちが1年以上かけて議論、検討してきた感染対策は、ステージ・フロントにおける参加者の距離、飲食エリアでの着席のルールなど、何千という運営細部に関するものです。私たちは感染対策の本質は細部に宿るものと考えてたくさんの時間と知恵を使ってきました。このタイミングに至っての「感染防止対策に万全を期すること」という包括的な要請に、何を以て万全とするのか、どのような新たな対策を提示すれば良いのか、残された時間の少なさを前に途方に暮れてしまいました。フェスにとって地元の協力と理解は何より大切なことです。まして、このコロナ禍にあって医療関係の方の協力と理解は絶対に必要なものです。それを得る為には私たちは努力しますが、これまで書いてきたように、医師会からの要請に十全に応えることは今の私たちにはできません。残念ですが中止以外の選択肢はありませんでした。(公式HPより、原文まま)

 提出がフェス開催の1か月前という不意打ちを突かれた感じとこれまでに積み重ねてきたスキームを根底から崩す要請内容を鑑みると、主催者サイドの怒りは相当なものがあると思います。

2.あくまでも要請だよね?⇒強行開催するという一手もあったのでは?

 しかし、一方であくまでも茨城県医師会からの要請すなわちお願いという事を考えてみると、もしこれまでに積み重ねてこられたスキームに自信があるのならば要請を振り切って開催するという一手もあったよね?という印象を持ちます。

 一部のマスコミで有名なコメンテーターはオリンピックと比較して非難したり、ロックバンド・RADWIMPSの野田洋次郎氏は自身のTwitterアカウント(下記)にて大人の事情というキーワードを用いてフェス中止についての意見を投稿していました。

 アーティストサイドの想いを考えればやるせない気持ちが湧いてくるのは自然な話だと思います。しかし、本当に主催者サイドが感染症対策について自信を持ったスキームを積み重ねてきたというのならば誰の監修で作ってきたスキームなのかを公表したりとかして強行していくという一手もあっただろうし、あるいは茨城県医師会に対して細やかな回答を求めるという一手もあったと思います。仮に細やかな回答を茨城県医師会に求めて回答が無かった場合、茨城県医師会は茨城県政におけるただの政治団体というのが如実に表現できると思うし政治団体の脅しに近い要請に屈しないロックな姿勢を示すチャンスでもあったんじゃないのかなぁ?という印象を持ちます。

3.中止以外の選択肢を検討する暇は無かったのか?

 フェス中止に対しての渋谷陽一氏のコメントの中で、気になる点がありました。

ひとつ目は「今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期を検討すること」でした。開催1ヶ月前になり、フェスの準備の多くは既に進んでいます。グッズの制作、スタッフの確保、宿泊の手配、関連映像の制作、装飾物のデザイン・制作などです。今、中止を決定しても億以上の支出になります。それは日に日に何千万円の単位で増えていき、最終的には大変大きなものになります。参加アーティストは40いますが、このフェスの為のみのグッズ制作、リハーサル、スタッフの確保、サポートメンバーの確保、映像制作がそれぞれ進んでいます。トータルに考えると巨額な経費が既に使われ、このまま進むとそれはより膨らんでいきます。私たちはこうしたことを踏まえ開催を判断していかなければなりません。「感染拡大状況に応じて、開催の中止や延期」という要請が出ている中で、これ以上判断を先に延ばすことは余りにもリスクが大き過ぎます。(公式HPより、原文まま)

ふたつ目は「仮に開催する場合であっても、更なる入場制限措置等を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと」となっています。既にチケットは発売され、売り切れとなった日も出て万に近い落選者も出てきています。この段階で新たな入場制限は不可能です。もし再抽選となれば参加者との信頼関係は失われてしまいます。そうしたことは私たちはすべきではないと考えています。また時間的にも再抽選に現実性はありません。(公式HPより、原文まま)

 中央政界において、医師会が政治学や社会学の専門用語の意味としての利益団体・圧力団体的な力を発揮している中で、フェスが狙い撃ちに合う事は想定できたのかもしれません。社会学者の永田夏来氏は著書でピエール瀧が覚せい剤で捕まった際に彼が所属しているグループ:電気グルーヴの楽曲を版元の会社が配信停止した事柄を引き合いに、変な前例の踏襲を決定せずフレキシブルにその都度毎に選択していけば良いと指摘しています。(参照:『音楽が聴けなくなる日』宮台 真司 (著), 永田 夏来 (著), かがり はるき (著) pp80 )こう考えた時、医師会が要請という名の邪魔をしてくる可能性を考えた手札を用意していれば、中止以外の選択を検討する暇は作ることができたと私は思います。

4.終わりに

 結果としてフェスは中止の決断がされましたが、茨城県医師会の不意打ち攻撃は正直言ってせこいとしか思えませんし、これが政治とエンターテイメントにより一層大きな溝を作るきっかけになっていくことは間違いないと思います。

 勿論医学が全ての人間を病から助けてくれる万能の代物ではないためその要因となりうる芽を摘んでおきたいという考え方も理解できますが、これだけ社会に大きな分断をもたらした以上、今後はより慎重な対応が行政・利益団体には求められるのだろうと私は考えます。

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