私に短所はありません。
オープニング
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こんにちは、顔ニキビが増えていて心が弱っています。あおやぎです。
今日は「短所(たんしょ)」について考えたお話です。
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いつも突然ですが、あなたに「短所」はありますか?
「あなたの長所と短所を教えてください」
「短所をバネに成長したエピソードを教えてください」
こんな問いが、いわゆる就活、採用面接の場ではよく出されるのではないでしょうか。
「長所は、何事も諦めずに工夫を重ねるところです。短所は、長所の裏返しともいえるのですが、周囲の人が、ミッション・インポッシブルのイーサン・ハントを見るような目でわたしを見るようになってしまうくらい粘り強いことです。諦めが悪いと言われたこともあります。しかしそのおかげか、困難にぶつかっても、いくつも方法を検討して取り組む力が身についてきたと思っています」
といった感じで、短所も長所のように言っちゃったほうがいいよというアドバイスを何かの本で読みました。
話が逸れましたが、長所と短所という2つの言葉は、よく使われるなあと思います。
ただ、中にはこの言葉にもやもやしている人もいるようです。さっそくお呼びしましょう。
あおやぎ「こんにちは」
Aやぎ「こ〜んにちは〜…」
あおやぎ「今日は元気がなさそうですね」
Aやぎ「なんか顔ニキビができちゃって…」
あおやぎ「Aやぎさんもですか!私もですよ」
Aやぎ「あら奇遇ですね…」
あおやぎ「落ち込み中に申し訳ないんですが、“短所”という言葉について、Aやぎさんは思うところがあると小耳に挟みまして」
Aやぎ「ああ、実はそうなんです。先日ショックなことがありまして」
あおやぎ「詳しく聞かせてください」
Aやぎ「友人と映画を観に行ったんです。夕方の上映だったのですが、友人は13時過ぎにはこっちに来られるという話だったんですね。だから昼食は一緒に食べても良いし、ばらばらでもどっちでも、ということで」
あおやぎ「はいはい」
Aやぎ「最初は、じゃあ一緒に食べようか~と言ってたんですが、私のほうで用事を入れてしまって、当日の昼すぎくらいになって『ごめん、15時くらいに待ち合わせに変えて欲しい。映画の前にお茶でもどう?』とお願いしたんです」
あおやぎ「おお、なるほど」
Aやぎ「それで日中はお願いしたとおり変更した時間に会って、映画を観て、夜ご飯も一緒に食べたんですが、そのご飯の席でショックを受けて」
あおやぎ「どうしたんでしょう」
Aやぎ「友人はある本を読んで“短所を使ってそこを愛されるようにすればうまくいく”という考えを手に入れたらしいんですね。それで、私に『自分の短所はどこだと思うか』と聞いてきたわけです。」
あおやぎ「その友人さんの短所を、面と向かって言って欲しい、と頼まれたと」
Aやぎ「ええ。でも私、人間に短所というものは存在しないと思っているんです」
あおやぎ「ほう」
Aやぎ「これ、あおやぎさんがまだnoteで紹介できてないNVCというコミュニケーション方法やストレングスファインダーと通じるところがあると思うのですが、人にはそれぞれ異なる性質や特徴、傾向があるだけで、なにかのものさしから見た“短所”というものは存在しないと思ってるんです」
あおやぎ「うっ…たしかにそのあたり、言わんとすることはわかるんですがおっしゃるとおり紹介できてません」
Aやぎ「こんなまわりくどい自問自答エッセイ風noteを読んでくださる希少な方々のことを思うと、ここでNVCやストレングスファインダーを始めから紹介してしまいたい衝動にも駆られますが、そこはあおやぎさんのやる気に頼ることにして」
あおやぎ「ええ、はい…すみません…」
Aやぎ「つまり、私が常日頃思うのは『短所短所って言うけど、それってどこから目線の話?』って思うんです」
あおやぎ「ある位置から見て、なにかが欠けている、劣っているという意味合いで使われているように思いますね。短所という言葉は」
Aやぎ「そうなんです。だから私が友人に対して『あなたは臨機応変さに欠けると思う』とかって言うこと自体はできるんですけど、でもそれって誰から目線なの?って思います。臨機応変さの尺度に関して、私が抱く高い低いの尺度がこの世で絶対の正解で、それをもとに友人の言動を精査して、低いねえとコメントすればいいというならできますが、でも私に絶対の尺度なんて与えられてないし、ほしいとも思っていない。だから“短所”って言葉は誰かが誰かに対して使うにはずいぶん乱暴なんじゃないかと思うんです」
あおやぎ「うーん。Aやぎさんの言いたいこと自体はわかるんですが、じゃあ実際問題、誰かに対して『この人のこういうところはちょっと…』って思う場面はあると思うんです。そういうときはなんて表現したらもやもやしないんですか?」
Aやぎ「そう、そこがポイントです。私は最近、『私は〇〇と思う』から始めるようにしています」
あおやぎ「“あなた”の話をするというのに、ですか?」
Aやぎ「まさしくそこなんです。今から言うのはたとえ話ですが、『あなたは他人に対して不寛容だと思う』と言ったら、それは自分の尺度、不寛容かどうかという尺度を振りかざして相手を評価していることになります。個人が振りかざせる尺度なんてないのにも関わらず、です。でも、『私は、あなたが私の言葉に対して否定する言葉から返してくる時、私の言葉の真の意味が受け止められていないと感じる。』と言ったらどう変わりますか」
あおやぎ「主語を私にするアイ・メッセージですね。あなたってこうよね、という決めつけがなくなったとは思います。でも、そう言われても『ほう、だから?何?自分にどうしろっていうの』ってなりませんか。言われたほうは」
Aやぎ「まだつづきがあるんです。そのあと、『私の言葉に対して、まず“いや、でも”と返すのではなく、“君の考えは〇〇ということなんだね”と一旦考えの確認をするとかして、私の言いたいことをできるだけ正確に受け止めようとしてほしい』などと言ってみるんです」
あおやぎ「あなたってこうよね、と評価の言葉を下すのではなく、『私はあなたが〇〇するとき、△△と感じている』『私はあなたに〇〇してほしいと思っている』と表現するわけですか」
Aやぎ「ざっくり言うとそういうことです」
あおやぎ「見えない尺度を振りかざすのではなく、あくまで自分がどう感じ、相手にどうしてほしいかをリクエストするということですね」
Aやぎ「ええ。でも、リクエストするには、もう1つ何かが必要だとは思いませんか?」
あおやぎ「えっ、なんだろう。もう1つ…」
Aやぎ「またたとえ話ですが、朝起きてリビングに行ったら、家族の脱いだ服が散乱しているとしますよね。仮に、起きてきたのがBさんとしましょう。Bさんが、家族に言います。「また服を散らかしてるよ!脱いだ服は洗濯機に入れてよ!」って」
あおやぎ「(私は)あなたが服を散らかしていると思う、(私は)服を洗濯機に入れて欲しい。これでいいんじゃないですか?」
Aやぎ「前半部分を“観察”、後半部分を“要求(リクエスト)”とすると、実はその間に“感情”と“ニーズ”が必要なんです」
あおやぎ「感情とニーズ…って2つじゃないですか!」
Aやぎ「あ、ほんとだ」
あおやぎ「まあいいですが…なんか頭が疲れてきました」
Aやぎ「あと少しですよ!というかまだ私がショックを受けた話までいってません」
あおやぎ「まだそこは別なんですか!」
Aやぎ「ここに登場するBさんの感情とニーズは、たとえばこんな具合です。『朝起きた時に、リビングに個人の服が散乱していると、私は悲しくなる』『みんなが過ごすリビングは、1日をすっきりした気持ちで始められるようにいつも物が整理整頓された状態にしておきたい』」
あおやぎ「なるほど!Bさんが叫んだのは、悲しかったからなんですね!」
Aやぎ「そうなんです。家では家のルールを守るものだ!とか私の言ったことは二度と忘れず遵守しろ!とか思っているわけではなく、リビングが散らかっていて悲しい、なぜなら1日をすっきり始めたいのにそれが満たされていないから…という感情があるだけなんです」
あおやぎ「その感情を満たすために、Bさんが必要とすることを他者に対してニーズという形で伝えるということか」
Aやぎ「そうそうそう」
あおやぎ「なるほど…でもこれって、大事なのは伝え方っていうよりなんか…」
Aやぎ「他者よりまず、自分に目を向けること、ですよね」
あおやぎ「はい。自分はどう感じていて、何を必要としているのか。それがわからないと、人にリクエストするのは難しい」
Aやぎ「そこがおもしろいなあと思うんです。今日は期せずしてNVCというコミュニケーション方法のさわり部分をお話しすることになったような気がするんですが、この方法はやろうとすればするほど、自分を知ることになるんですよね」
あおやぎ「短所ってなんだろうね?というところから話は始まったように思いますが、たしかにAやぎさんはNVCに関心があるみたいですね。ちなみに、Aやぎさんがショックだったのって何なんですか?」
Aやぎ「ああ、映画を一緒に観たその友人から『あなたの短所は人に甘えてるところだ』って言われたんです。それがショックで」
あおやぎ「あら…」
Aやぎ「待ち合わせ時間を自分の都合で変更したことを例にね。『自分はAやぎと普段から付き合いがあって慣れてるから別にいいけど、そういうことをしてても大目に見てもらえるのは若いうちだけだ』とも言われました」
あおやぎ「え、なんで年齢の話…?」
Aやぎ「友人なりに忠告してくれたつもりなんでしょうね。たしかに私も反省しました。勝手だったな、と」
あおやぎ「…でも何か言いたいことがありそうですが」
Aやぎ「さっきの話につながるんですが、『お前の短所はどこどこだ』っていう言われ方はされたくなかったんです。『今日こういうことをAやぎはしたけど、自分はそれをされた時、嫌だった。〇〇な気持ちになるから。今後は△△するようにしてほしいと思ってる』だったら素直に聞けるんですけど」
あおやぎ「やっぱり、目に見えない尺度基準で評価されるんじゃなく、その人が何を求めているのかをはっきり示してほしいんですね」
Aやぎ「はい、少なくとも私は思っています。私という人間に短所という言葉で語られる欠点があるのではなく、あなたという人間から私を見たとき、生まれる感情やニーズがあるのだと」
あおやぎ「うんうん。言いたいことは伝わってきた気がします。ただ、そうなるとちょっと開き直り感というか、言い方よくないかもしれないですが、“あなたがそう思うってだけで、私が悪いんじゃないもんね~”感があるように聞こえるのですが…あおやぎはね」
Aやぎ「そう、そこは私自身も悩んでるんです。短所という言葉で自分を評価される筋合いはないと思ってるんだけど、実際に私には言動に何かの傾向があるとは思うんです。それをとらえ直すキーワードが、ストレングス、強みかなと」
あおやぎ「なんだか長いお話になりそうですね」
Aやぎ「そうですね、これ以降はまた次回にしましょうか」
あおやぎ「そうしましょう、またなるべく早めにお呼びします」
Aやぎ「わかりました。じゃあ、最近あんまり明るく終わってない気がするので、あおやぎさん明るく締めてください」
あおやぎ「えっなにそれ」
Aやぎ「希少な読者の方がまんまん万が一ここまで読んでくださった場合に備えてですよ」
あおやぎ「それもそうですね……じゃあ…」
Aやぎ「どどん!」
あおやぎ「私が25年間、カメムシだと思っていたものは……コガネムシだということが昨日わかりました…!」
Aやぎ「え?」
あおやぎ「あれ?ほらあの背中がまんまるでぴかぴかしてるやつ」
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エンディング
Aやぎ「いかがでしたか?長い長い話になってしまいましたが、楽しんでいただけたでしょうか。もし楽しんでいただけていなかったら、コガネムシのことをカメムシだと思っていたあおやぎさんの責任です」
あおやぎ「ううう…私の大事なエンディング…」
Aやぎ「それでは、また『最後は明るく終わる愚痴』でお会いしましょう!マガジン設定が火曜更新から水曜更新にさりげなく変更され、しかし今日は木曜ですが、お読みいただきありがとうございました!」
あおやぎ「うわあああああ…」
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#エッセイ #最後は明るく終わる愚痴 #NVC #短所 #コミュニケーション
読んでくださってありがとうございます!