見出し画像

「怨霊奥様」連載一執念。

もともとストーリーマンガでデビューしたんだけど、
デビューして数年してから、
自分はギャグとかコメディがやりたいんだと思い始めた。

んで30才くらいの頃にひょんなことから機会をいただいて
ギャグ漫画を描かせてもらえるようになったんだけど、
紙の雑誌だとページ数制限みたいのがあり、
ギャグ漫画にはあんまりページがもらえない。
雑誌にたくさん載っている重厚なストーリーマンガの合間に
さっと読めてアハハと笑える、お口直しポジション。
1話6ページとか、10ページとか。
でもまぁショートギャグというジャンルはそういうものなんだと思って
自分から足を踏み入れていったし、僕はお口直しだとは思ってないけど
雑誌の中でそういうポジションとされるのはしょうがないし、
好きなギャグ漫画というジャンルがやれて満足していた。

でもやはり1話6ページとかじゃ食えない。
単行本を出せるくらいページが貯まるまでに何ヶ月も何年もかかる。
本屋さんで1巻しか出ていない単行本はあんまり大々的に並べてもらえない。
(だから最初「1、2巻同時発売!」とかやる漫画があるのです)
2巻が出る頃には1巻はもうなくなってたり、忘れられていたりして、
そうやってるうちに結果的に「ギャグは単行本が売れない」とされ
出してもらえなくなる。
単行本が出せないということは商売にならないからどこもやりたがらない。
ということはなかなか連載の仕事がもらえない。

こうした商業的なこと以外でも、
そもそもショートギャグは誰でも気軽に楽しめるように、
その時雑誌を初めて読んだ人でも、いつからでも入り込めるように
毎回1話完結みたいなスタイルを取らないといけない。
そうすると6ページの中に
この漫画は誰が主人公で、どういう笑いで…という紹介を
毎回さりげなくわかるように入れるお話作りにしなきゃいけないし、
起承転結作って毎話オチをビシっと決めなきゃいけない。
そもそもギャグ漫画だから笑えるコマもたくさん欲しいし…
そうなると6ページにコマとセリフがみっちりギューギューに詰まった漫画
が出来上がる。

最初はそれが「こんな少ないページで笑える箇所たくさん作って
んで伏線張って回収して、最後オチまでビシっと決めてる俺、すげえ」
って思えていたんだけど、だんだんと、やっぱりもっとページ数が欲しい…
こんなにギューギューだと緩急もつけられないし、間をとった笑いもできない。
ギャグもやりたいけどかわいい女の子も描きたい、でも可愛い女の子を
出せる大きなコマを作れない。

セリフや書き文字がいっぱいあるギャグ漫画は、お笑いに例えるなら
早口ですごいテンポでバーっとマシンガンのように展開するしゃべくり漫才
のようなもので、若者には好かれる傾向にあるとは思うんだけど、
(若者や、あと耳をすましてちゃんと全部聞こうとしてくれているコアな客)
わちゃわちゃしてるだけで何言ってるかわかんないと敬遠される可能性もある。(大半の一般的な客や、若者以外の客はだいたいここ)

ツイッターなどで上がってる漫画でも、あれ1ツイートに画像4枚しか
貼れないから、伝えたい情報を全部入れようとして
文字をギュウギュウに詰めた漫画になっちゃってること結構多いけど、
見た瞬間「う…字多いな…」と思って
読まずにそっと閉じてしまうことも多くなってきちゃったんですよね、
読み手としての僕自身が。

そんなこんなで、「ギャグはやりたいけど、もっとページ数がほしい。
ストーリー漫画と同じくらいのページ数をもらえたら、もっとうまくやれるのに…」
ってだんだん思うようになってきて。

でもさっき言ったように、紙の雑誌ではギャグ漫画の立場は弱い。お口直し。
ページ数はもらえません。
(さっきからこう書いていますが、僕がそう感じているだけで
けしてそんなことはないと言う雑誌もあるのかもしれません。
僕は出会ったことないですけど。)

そういう状況で
「まぁ…食えないけど好きなジャンルで描けてるからいいか…
かわいい女の子は趣味でツイッターにらくがき上げてればいいか…」
という思いだけでしばらくやっていたところで、
ここ数年でネット配信漫画という新たな場所が出来始めて。

ネット配信だと紙の雑誌のような「ページ制限」がありません。
作家が満足いくまで描いていいページ数がもらえます。

で、去年からネット配信で始めたのが「怨霊奥様」です。
毎話30枚くらい描けて(もっと増やしてもいいと言われていますが
一人で描いているので無理なんです(^^;))、
自分でやりたい「間をとった笑い」「伏線を張って回収する笑い」
「かわいい女の子の絵」「起承転結のあるしっかりしたお話作り」
…をやっと全部入れられるようになった気がしています。
そしてその「やっとやれるようになった部分」において
ある程度満足のいく評価も得られているんじゃないかという実感があります。
「怨霊奥様」今日で連載一周年です。

遠回りしているけど、やっぱり描きたいものを描いて生きていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?