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のて!メモリちゃん#01

メモリ:もーお しょうがないなァ先輩は…

    そうですね 例えるなら……………………


昔むかし、あるところにお爺さんとお婆さんがいました。

お婆さんは川へ洗濯に、お爺さんは山へしばかりしに行きました。

お爺さんは山でCばかりしました。

Cというのは、キスをAとした場合の、あのCです。

齢80にしてなおお盛んです。

山でCばかりしていますので、友人達からは

「お前は山Pならぬ山Cだな」とよく言われて、

その度に山Cは「やましい事しているだけにな」と言うのでした。

そしてそれは全然受けないのでした。

一方そのころ

お婆さんは川 …川と言っても俗に言ういわゆる「小川」じゃなく、

かなりの川、川と言うかもう、「河」なんですが… に到着して

さて洗濯をしようかと思ったところで、

洗濯物を家(家と言ってもまー、ボロ小屋みたいなもんなんですけどね)

に忘れてきたことに気付きました。

困ったお婆さんは、河の前に立ちすくみ、途方に暮れました。

「いつもそうだ。私はいつも肝心な時に大事な事を忘れる…

そう、あのときも……」

そして今までの自分の愚かさ、はかなくもささやかに

美しかった青春時代などについて、反省したり、

いろいろエロい事を思い出してはニヤリとしたりしました。

反省とニヤリを交互に、

いや反省1に対してニヤリ3くらいのペースで

それを休憩を挟みつつ8セットやりました。

「うむ、なかなかいいペース配分だ。 呼吸も乱れてない。」

と、コーチは言いました。 そして笛を吹きました。


そうこうしているうちに日はすっかり西に沈み、

長く厳しい夜がやってきました。

砂漠は暑いという印象がありますが、夜になると気温は氷点下まで

下がってしまうといいます。

お婆さんの手元にある食料は、チョコレート2粒と

ビスケット200枚でした。

家から河に来る道中で、チョコレートばっかり食べてしまったので

こんなアンバランスなことになってしまったのです。

こんなことならチョコレートとビスケットを交互に

食べるべきだったと、お婆さんは深い後悔の念にかられ

遺憾の意を表明しました。 国会で。


一方そのころお爺さんはというと、

お婆さんがいないのをいいことに、

山でCをした別のお婆さん(そういうお婆さんを、お爺さんは"Cガール"

と呼んでいました)を家に連れ込み、

いつもよりちょっと贅沢なディナーを楽しみました。

リッツにキャビアを乗せたり、

リンゴとかはつまようじに刺して食べたりしました。

まさかお婆さんがあんなことになっているとはつゆ知らずに……


さてここで、お爺さんとお婆さんについて

少し説明しておかなくてはならないでしょう。

お爺さん、お婆さんと言ってもそれは名ばかりで、

ふたりには子供も無く、当然孫もいないので

本当の意味でのお爺さんお婆さんではなかったのです。

見た目がお爺さんやお婆さんぽいというだけで、

そして年が80歳というだけで

まわりからは「お爺さん、お婆さん」と言われていました。

皮肉な話ですね。

でもふたりは文句ひとつ言わず、それを受け入れました。

受け入れ体制万全でした。

お爺さんは「よし来ーーい!」と言ったりしました。

お婆さんは「私はよし子なんて名前じゃないですよ、お爺さん」

と冷静に言い、お爺さんを疑いの眼差しで見つめました。

その瞳があまりにも透明で、平坦だったので、

お爺さんは自分の全てがこの女に見透かされているような気がして、

怖くなりました。

まさか、Cガールの事もバレているのか……!?

お爺さんはスクッと立ち上がり、お婆さんが何かをいわんとしている唇を

唇でふさぎました。

お婆さんの唇を奪取したお爺さんは、「くちびるダッシュ」と

お婆さんの耳元でささやきました。

それはお婆さんの耳には聞こえていませんでした。

お婆さんの耳にはもうなにも届きませんでした。

それは年だからとか、死んじゃったからとか、そういうことじゃなく、

自らの心の臓の鼓動が熱いビートを刻んでいたからです。


そのビートはあたかも、

高校時代に気の合う仲間同士がなんとなく集まって、

なんとなく「バンドでもやってみない?」ってことになって、

しかしベースだけが見つからず困っていたところに、ドラムのケンが

「3組の竹中がベース弾けるって噂だぜ」という情報を仕入れてきて、

でも竹中は町でも有名な札付きのワルで、ヤクザとも繋がっている

という噂が。

でもどうしてもバンドをやりたいヴォーカルのナオトは、

「よし、俺が交渉してみるよ」と勢いよく教室を飛び出して

3組の竹中のところへ向かった。 

「BANDやろうゼッ!」

竹中は「あァン!? バンド!? ベース!? 殺すぞ!」と

ナオトを石破茂のような目で睨みつけた。

今にもケンカが始まりそうだった。

まわりには野次馬達が集まり、「ナオトだ、いや竹中だ、

いや竹中直人だ、笑いながら怒るやつやれよ」

などとヤジが飛び交い始めた。

「弁当いかぁっすかーー」という弁当売りまで現れる始末。

一触即発の3組の教室。 

……とそこへ、

「やめなさいよ! ふたりともっ!」

そこに立っていたのは2組のカオリだった。

カオリは早くに母親を亡くし、酒乱でギャンブル好きの父親の暴力に

耐えながらも、幼い3人の弟たちの母親代わりとなり、

それでもなおかつ成績も優秀、

生徒会の副会長と女子陸上部キャプテンという

2足のわらじをもこなす学園のマドンナ的存在…のように見える風貌を

していたが、実際は普通の、なんのことはないただの女だった。 

オール3だった。

「ケンカなんかじゃなく、コレで決めなさいな!」

と言うカオリが手にしていたのは、アサガオの種だった。

「このアサガオの種を早く育てて

 先に花を咲かせたほうが勝ちってのはどぅー?」

このカオリの提案は「時間がかかりすぎる」という理由で

国会で棄却され、内閣指示率も10%に下がった。

株も大暴落し、消費税は8%に上がった。いいともも終わった。

STAP細胞の有る無しもうやむやになった。


なんだかんだの末、竹中がベースに加わり、

さらにカオリがキーボードを担当することになり、

ここに伝説のバンド『The note』が結成された。

バンド名はナオトがつけた。

「俺たちの夢を綴っていこうぜっていう意味さ」

「…ちょっと何言ってるかよくわからないけど、まぁそれでいいよ」


The noteはライヴハウスや路上で地道に活動を続けて、

それがなんとかレコード会社の目にとまり、本格的にプロデビュー。

それはバンド結成8年目の夏だった。長かった…

さぁこれからだという時、キーボードのカオリの妊娠が発覚。

ギターのタモツとの子だった。

カオリに密かに想いを寄せていたヴォーカルのナオトは、

デビューシングル発売の前日の夜に首を吊って自殺。

デビューは取り止めとなった。

ドラムのケンは親の印刷屋を継ぎ、タモツはカオリと子供を

養うためにパチプロになった。

竹中はおネエとなり、スナックを経営。 そこそこ儲かっていた。


そんな日々が続き、何年か経ったころ、

カオリとタモツの間に不穏な空気が…

ふたりの子供はどう見てもタモツには似ていなかった。

タモツよりもナオトに似ていたのだ。

数年前、スクラップ工場で首を吊って死んだあのナオトに。

血液型も、カオリとタモツの間ではあり得ない型だった。

もしかして…

確かに当時、カオリはタモツ以外にナオトとも関係を持っていた。

ナオトだけじゃなく、ケンとも竹中とも、マネージャーの藤原とも。

レコード会社の山内さんとも。

カオリはなんかもう凄かった。みんなもう引いちゃっていた。

タモツにはもうなにがなんだかわからなくなっていた。

これを書いている若狭たけしにもなにがなんだかわからなかった。

STAP細胞って結局何なの?

あ、いい、いい、説明しなくていい、説明されてもわかんないから。


タモツとカオリは離婚した。

それから15年が経ち、カオリの子供(シュウ)は20歳になった。

カオリ達は45歳になっていた。

シュウの20歳の誕生日、バンドのメンバーが久しぶりに集まった。

竹中(おネエ)のスナックを貸し切りにして、

ささやかな復活プチコンサートを開くことにしたのだ。

これを提案したのはシュウだった。

全てのほとぼりは冷めていた。

やっとみんなが全てを許せるようになっていた。

カオリの事も。

のりピーの事も。

猪瀬さんや佐村河内さんの事さえも。

みんなが笑顔で顔を合わせられる時期になったのだ。

15年。 

長かったのか…短かったのか…

ヴォーカルにはカオリの息子のシュウが立った。

演奏するのは、The noteの

デビューシングルになるはずだったあの曲・・・ そう、

『くちびるダッシュ』。

ケンがスティックでカウントする。

「ワーン・トゥー・ワーン・トゥー・スリー・ィヤォウッ!」

ツッツッターン・ツクツクターン

ツッツッターン・ツクツクターン…

……というときくらいの熱いビートでした。

そのときのお婆さんの心臓は。

お爺さんとお婆さんはそのまま山へCをしに行きました。

それはそれは熱い、やましい夜でした。

齢80にしてなおお盛んでしたとさ。

めでたしめでたし。

ーーーーーーーーーーーーーーーおわりーーーーーーーーーーーーーー

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