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京都学⽣演劇祭2020を、個人的に、応援するために⼩原藍さんにインタビューしてみた。

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* 2011年2⽉から始まった『京都学⽣演劇祭』。その名の通り、京都の学⽣演劇をやっている諸⽒たちが集まり、今⼀番⾯⽩い演劇作品を作るのはどこの学⽣なのかを決める、いわゆるコンペティションですね。 

個⼈的な話なのですが、第⼀回では劇団テフノロGで参加し、2019では特別顧問という役職で関わり、そして絶賛参加団体募集中の2020では舞台監督を務めることになっています。 

間は空いているとはいえ、⻑いこと関わらせて頂いているイベントであり、今回はかなり早い段階から打ち合わせもしている中で、ずっと気になっていたことがあったのです。 

それは、『参加団体募集の段階でコンテンツが少ない』ということ。 

まあ、始まる前なのだからコンテンツなんか無くて当然。あっても前年度の講評や舞台写真など、って感じだと思うのですが、今年度のに参加しようかと考えていたり、参加するか分からないけれども気にはなっている⼈達への『フック』になるようなものが、もうちょっとあっても良いのではないか?と思うのです。 

勿論、運営の体制が変わることで、そういったことが難しいのは重々承知しております。 説明会が潤沢に⾏われているのも分かってはいるのです。 そして、そういうなら貴⽅が何か提⾔しなさいよ、ということにもなるのです。ご尤も。 

そんな時に、ふと思い出したのです。 

先⽇⾏われた『全国学⽣演劇祭』にて、京都代表の『睡眠時間』が⼤賞を受賞したなと。そして個⼈的にお話もしてみたいと思っていたことを。 

ということで、京都学⽣演劇祭実⾏委員会とは関係のないところで個⼈的に、睡眠時間・⼩原さんと喋った内容をインタビュー形式でまとめて⽂章にしてみました。 

京都学⽣演劇祭2019や全国学⽣演劇祭での作品制作を中⼼に⾊々話してもらっていますので、興味ある⽅はぜひ読んでみてくだい。 


* ということで⼩原さん、今⽇は宜しくお願いいたします。 まずは⾃⼰紹介をお願いしても良いですか? 


⼩原:京都造形芸術⼤学映画学科俳優コース⼆回⽣で睡眠時間代表の⼩原藍です。 2017年に、京都造形芸術⼤学映画学科に⼊学して、でも殆ど⼤学に⾏っていなくて、2018年に⼆度⽬の⼀回⽣をしていたのですが、その6⽉に睡眠時間を旗揚げしました。 

本当は、⼀度⽬の⼀回⽣の冬くらいに⽴ち上げてはいたのですが、⼈が集まらなくて。 でも、⼀⼈芝居でも良いからやるかと思い、最低限の⼈数を集めて旗揚げ公演を打ちました。 


* ⼈が集まらなくても、それならそれでやるか!ってこと?すごいパワーのいることだと思うのですが、抵抗とかは無かった? 


⼩原:何かをやろうとしても、プロセスが分からんからやれんぞ、というのがずっと続いていたので、ふんぎりを付けて始めたところがあります。だから、最初の⼀年は⾊々と失敗をしながら続けていました。 

その⼀年の間に、とある俳優向けのワークショップに継続的に⾏ってたんですけど、そこで、書いたりする⽅が楽しいと思い始めたんです。元々は役者をやりたくて始めたんですけど、どうやら役者ではないぞと思い始めていたのもあって。 舞台上に⾃分が⽴つより、周りの⼈が⽴っているのを⾒るほうが『⾒れる』なと。 

ワークの内容的に、⼈が演技しているのを⾒てどう思うかの意⾒交換を積極的にするタイプで、それが⾃分的にも楽しい、⼿応えを感じてやれていたのも大きいです。 


* その話でいくと、それって書くことより、演出に興味を持つって流れになりそうだと思ったんだけど。 


⼩原:そうですね、もしかしたら演出をしたくて、書き始めたのかも。 

実際、作品上演したいとなったら本を書く必要があるから、⼀年かけて戯曲を何本か書いてみたんです。そしたら、「あれ?意外といけるんじゃね?」って思って(笑) 

⼩論⽂とか⼀⽂字も書けないタイプだったし、⾃分の考えを喋るというのは苦⼿だけど、物語があれば書けるということに気がついたんです。 


* vol.3くらいまで割とドラマドラマしていない作品だとお伺いしましたが、そうじゃない⽅が良いと思うようになってきた? 


⼩原:⼀度、ちゃんとドラマを書かないといけないと思った。⾃⼰のものを乗せてパフォーマンスに昇華していく、という作り⽅だと、どうしてもネタ切れが早い。 ⾃分が⽣きてきた中で、例えばすごい⾃分がマイノリティーだったりとか、貧困だったとかいうわけでもないから、⾃分の底が⾒えてる。このままだと⽣命が短い気がして、ちゃんと構成とかを勉強しなければということに気がついたんですね。 

なので、vol.4「スーパーセルフコントロール」では、ちゃんとフィクションを⽴ち上げることに重きを置きました。⾃分の⽐重をどんどんを減らしていった上で、⾃分を発表していった⽅が⾯⽩くなるんじゃないかと。

 

* なるほど。そういえば、睡眠時間ってデザインにも⼒を⼊れてますよね。vol.3「199●-201●」のチラシはすごくカッコよかったし、京都学⽣演劇祭2019の「◎」も、演劇祭の全体チラシと別に⾃前で⽤意していたのにも、本気度を感じました。 


ありがとうございます。デザイナーも喜びます。 


* では、その流れで話を「◎」にフォーカスしていこいうと思います。こうやってお話を伺っていても、最初に京都学⽣演劇祭2019でお会いした時にも思ったのですが、なぜ京都学⽣演劇祭2019に参加しようと思ったんですか?勿論悪い意味ではなくて。 作家としても団体としても作品発表のスタミナがしっかりとあるから不思議だったんです。 「全員ねじ伏せてやるぜ!」みたいな感じだった? 


⼩原:前年度の2018の時は違ったんですが、2019の時は確かにそうでした(笑) 全てのありとあらゆる⼿段を尽くし、賞を獲るためのルートを想定しました。

例えば、観客賞(観客投票の『平均値』で決定される賞)を獲るには、まずお客さんを呼ばなければならないわけですよ。⾃分達の呼んだお客さんなら間違いなく優しく観てくれるから50⼈は呼びましょう、とか。 

脚本にしても、私は⾃分にそんなに才能あるとは思っていなくて、でも獲りにいきたいと思うなら戦略を⽴てて臨まなければいけないから、脚本とちゃんと書く。過去の⼤賞作品を分析するとか。 

2018に参加した時に、なにかしらを獲れなかったのがめちゃくちゃショックだったんです。 審査員賞くらい穫れるかなと正直思っていたから、信じられなくて(笑)だとしたら、2回⽬出るなら絶対なにかしら獲らないとダサいと思っていたし、だから、3回⽬は出ないと決めていた。 


* なるほど。ちなみに戦略を⽴てたということだけれども、「◎」は、戦略的で受けると思って書いていたところはある? 


⼩原:いや、題材的には受けづらいと思っていた。結構ハードコアな題材だったので。そして私が、そこにセカイ系をミックスしたい、って⾔い出しちゃったんです(笑) 

セカイ系って最終的に、世界の危機に際して『きみとぼく』がどうやって⼦供を作っていくかっていうところに⾏き着くのが多いんですね。そういうのと(劇中に出てくる町の閉塞感・終末感が)リンクするところがあるんじゃないかと思ったんです。 


* 被差別地域をモチーフにした町とそこに暮らす⼈々を描く今作では、稽古場で相当ディスカッションがあったと聞きました。 


⼩原:シーンの回し稽古している時よりも、ディスカッションの時間のほうが多かったですね。 私が脚本上げるのが遅いというのもあるんですが、考えを共有したいというのが⼤きかった。 

題材的にも、しっかりと調べて、全員がしっかり理解して共有した状態じゃないと出来ないと思ったし、脚本が上がらない以上、シーン稽古をしてもあまり意味が無いというのがあって、出演者の⽥宮くんも結構そう思うタイプだったから、彼主導でそうなったところもある。 

他の出演者達も頭で考えるタイプだったので、それをしないと進めないというとこもあったりして、結果的に良い時間だったなと。 

ただそれで、全国に向けてリクリエーションしていくにあたって、京都の時はセカイ系の勢いで話をまとめたけれども、最後に⼆⼈が⾛っていくシーンは⾛ってはいけなかったのではないか。セカイ系を忘れた⽅が良いのではないか、という話になり、構成を⾒直して⼤きく変えることになりました。 

また、全国は劇場が⼤きくなるので、舞台空間を埋める必要もでてきました。 やっぱり舞台美術があるだけで、幕が上がった最初の印象が全然違う。ショーケース系だと特に、予算や時間が無い中でやるとなると、いくらでも妥協はできる。でも、そこをちょっと凝るだけで、相当変わるのなら絶対妥協すべきじゃないというのはすごく思った。

こう考えると、皆がちょっとずつ、⾃分のできることをやった結果、賞が獲れたところがあるのかなと思う。それが私的には、どうなんだろうと思ったところでもあるんです。

 

* 個⼈的には、個で評価される必要はないと思うし、むしろ、難しいことしているとは思います。 

最後に、京都学⽣演劇祭2019から全国学⽣演劇祭を経て、⼀定の評価を受けたことで、⼀つ区切りなのではないかと傍から⾒ていて思うのですが、睡眠時間、⼩原さんの今後の展開をお伺いできますか? 

  

⼩原:睡眠時間を⽴ち上げてすぐの頃は「作品からリビドーが溢れすぎている」って⾔われていました。でも、ドラマを構成することを覚えて、全国学⽣演劇祭に持っていったら「技巧的すぎてオリジナリティーがない」って⾔われたんですよ。完成度が⾼いというニュアンスもあったんですけど、こうなると逆に分からなくなって(笑) 

でもまあ、通ってきた道に間違いはないと思っているので、今は、どう疲弊せず、かつ、⾃分がより豊かになれるかを考えています。その上で別に演劇に縛られる必要もないし、演劇以外をやってみても良いと思っている。私には演劇しか無い、とは思っていないし、演劇しか出来ない、とはなりたくない。 

例えば、⼩説書き始めても良いと思うし、映画学科なので映画も撮ってみたいと思っている。 シナリオの勉強もそうだし、映画には映画の筋⾁があるからそれを鍛えてみて、⾃分の幅を知っていこうかなと。20代ってそういう時期だと思うんです。そうすることで、演劇じゃなきゃ駄⽬だという表現を⾒つけることができるはず。 

演劇と並⾏してそういった研究を続けていけたらなと、今は考えていますね。 

(インタビュー終了) 

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睡眠時間×來來尸來 共創企画「変身」

原作|フランツ・カフカ『変身』

脚本|出町平次(來來尸來)

演出|小原藍(睡眠時間)

公演日:2020年8月30日 (日)

開演:14:00〜/17:00〜(各回30分前開場)

会場:ライト商會 2階ギャラリー

http://lailai.main.jp/suiminshilai


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