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五能線の追憶(最終回)

 千畳敷から乗った「リゾートしらかみ」は、席が先頭車両だった。それで前面展望を少々撮影することができた。鯵ヶ沢の少し手前くらいらしい。
 線路沿いの木立から察せられるように、津軽の春はまだ浅かった。4月30日だったはずだが、ようやく桜がちらほら沿線に現れる感じなのだ。新緑が野を埋め尽くすのはまだまだ先なのであろう。

 朝からほとんど日本海沿いだったので、内陸の風景が新鮮だ。いかにもローカル線という沿線風情も、海の見えないところでは土の匂いや木の匂いに染まっていそうな気がする。
 少し寂しげな倉庫や、冬はどう見えるのだろうと思える駅、そういうものが三々五々車窓に現れる。

 車内では津軽三味線のライブ演奏もあって、過剰気味のサービスと言えないこともないけれど、これはこれで愉しめた。この種の観光列車に乗ったことがほとんどないので、半ば唖然とはしていたけれどね。
 津軽三味線が苦手なわけではなく、上妻宏光氏の「Solitude」などは、個人手的には青森自転車旅行のベストBGMなのである。
 そうこうしているうちに五能線の旅は終わりに近づいた。五所川原駅で津軽鉄道に乗り換えるのだ。

 この日は、津軽鉄道を金木まで乗った。津軽鉄道には、特別思い入れがある。ストーブ列車として全国的に有名ではあるけれど、私としては、佐々木昭一郎氏の傑作、『四季~ユートピアノ~』に出てくる鉄道だからだ(とずっと思っているが、調べてもよくわからない。もしかしたら違うのかもしれない)。
 あの映像作品が撮影されたのは1979年頃。たまらない空気感が描かれていて、私はずいぶん影響を受けた。
 しかし津軽鉄道のことは、また別のところで書こうかと思っている。日本海を行く五能線とはまた少し情緒の違う路線であると思うしね。

                               (了)

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