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癒音フルートと脳トレの関係

wasuku(wakusourin)が「癒音フルート」と呼んでいるのは、ネイティブ・アメリカンフルート。通称インディアンフルートと、オカリナという2種類です。

インディアンフルートは日本の笛とは違うんだけれど、尺八に近い音色がします。オカリナは土を焼いて作ったもので、近年はとてもポピュラーな楽器として定着しています。

上の写真の癒音フルートは、もう20年以上使い込んでいるもので、オカリナは手作りです。市販のものと違い、少し肉厚感があるので、吹いた時の音色は深みがあります。スープ料理でいうと素朴ながらコクがある感じ…。洗礼されていないけれど、軽やかな音色ではなくて、ドッシリとした感じです。

オカリナやインディアンフルートも、他にも何本もあって、それぞれに個性と音色が違います。本当に人間と同じです。なので、曲の風合いによっても適正があるので、レパートリーによってそれぞれ使い分けています。


新しい曲を仕込む時は、やはりお金を頂く対価として、その演奏の世界観を提供しなければならないので、やはり音符通り間違えないように吹ければ良いという次元とは異なり、その曲の世界観を自分のフィルターを漉して、独自の世界観として物語化させる…。そんなところまでを目標にしながら、自分のものとして血肉化させていくという感じです。

だから、無意識に指使いが次のところに自然に向かっていくという、無意識領域での「自動演奏状態」に仕上がらないと、とても人前では演奏することが出来ません。

頭で次の指使いを意識している状態では、まだ自分のものになっていないので、曲を聞いていても、薄っぺらい表面的な感じになってしまうんです。


大体、一つの新曲を自分のものにするには「1000回練習」ということが言われています。1000回間違えないように表現出来るようになれば、なんとなく自分らしさが醸し出されるようになるかなっていうところでしょうか。

ワインとか日本酒でいえば、まだまだ熟成はされていないけれど、少し「飲み頃」になってきた頃合いというところでしょうか…。


こうした練習を繰り返していると、これは結構な脳トレと呼吸法になるな…と実感します。


笛の練習は全く独自のものなのですが、練習の最初に行うのが、腹式呼吸と同じように、お腹に意識し、次に両脇腹、そして背中…というように息を溜め込んでいき、次は、細い息をゆっくり長時間かけて、音が音程的に上下にブレないように、「ツーーーー」という感じで、「長音ブレス」を行なっていきます。

約10分間ほどノンビブラートで行なった後は、ビブラートを取り入れながらさらに7〜8分間行います。結構これだけで汗いっぱいになることがあります。

後は、感覚的に馴染みのある曲から順番に、一曲を数回繰り返すリピート練習を行い、指使いの感覚が為れた頃を見計らって、課題曲や、苦手なフレーズが残った曲を吹き込んでいきます。

まさに、運動選手の技術トレーニングと多分同じだと思います。反復練習をただただひたすら行う感じです。


その時、注意しているのは、練習の時の精神状態は、本番と同じ環境下のように、ドキドキで緊張するという感覚が得られにくい為、極力、イメージトレーニングとして、最も緊張するシチュエーションをリアルイメージしつつ、少しでも指使いや表現を間違えたら、最初からやり直しというキツイ条件を決めて、行うようにしています。


もう一つは、間違えやすい音を出してしまった時のリカバリー表現を考えておき、それも練習するようにしています。

人間には不思議なクセがあって、何故か、そんなに難しい指使いじゃないのに、何故かいつも間違えるフレーズが出てきます。

そのパターンになった時に、慌てて取り繕ったりすると、返って墓穴を掘り、頭が真っ白の悲惨な結果になりますので、間違いが起こりやすい数パターンを、予め何度も練習しながら、もし万が一、その間違いを犯したら、瞬時に脳が反応するように「仕込んで」おきます。


心理用語でいう、「トリガー」と「アンカー」の関係。

そのボタンを「カチッ!(トリガー)」と踏むと、無意識に身体が「ある状態へ」と「自然反応(アンカー)」してしまう関係。

多分、泥臭いこうした反復練習は、このような「トリガー」と「アンカー」関係を、脳にインプットする作業なのかも知れません。

なので、なるべく練習時間を消化するための、「なんとなく考え無しで行う練習」ではなくて、本番状況をかなりいろいろと深掘りし、いろんな条件でリアルに想定した練習を行う方が、圧倒的に効果が上がります。

多分、スポーツでも何でもそうですが、強いチームと、弱いチームの差は、基本的には、ここに違いがあると思います。


オリンピックやパラリンピックが行われ、メダルを手にした選手と、参加しただけで終わってしまう選手との、普段の生活や、練習への研究や深掘りしていく追求の仕方を創造してみると、多分、同じような図式、意識の構造が見えるような気がするのです。同じ人間が行うことですから、能力的や身体条件等、そのレベル、次元が似通ったものが集合すれば、後は、普段の心と肉体の両方のトレーニングの質と量の、掛け算としての総合エネルギーが結果に影響するのは当然です。


新しい曲を最初練習する時は、当然、その運指操作に脳は馴染んでいない為、間違いばかりです。その時、「あーあ…。やっぱりこの曲は自分にはまだ難しいかな」とか、「自分の技術は未熟だな…」と思うと、脳のスイッチが「カチッ!」入り、本当にこれは難しいんだ」という方向に感情が動きます。


これは、どんな人でも日常生活で体験している無意識下での感情と判断の動きです。


例えば、スマホの操作には慣れていても、PCに馴染みがない人は、パソコンを学んでみませんか?と誘っても、「いや~…、私は機械オンチだから…」と尻込みする人が圧倒的に多いんです。

でも、考えてみれば、これは事実とは異なり、本人のただの勘違いです。何故ならスマホという機械を自在に使いこなしていること自体、機械オンチなどではないからです。最初、何をどうやって操作すれば良いか、多分、戸惑いながらも、これを押さえると、どうなるんだろう…?ということを何度も繰り返しながら、段々、操作を覚えていったはずです。


新しい曲を覚える練習も、その曲をなるべく効率良く体に覚え込ませるには、上の事例のような手順を脳に順番に意識させれば良いのです。つまり、これはどんな場面にでも応用出来るはずです。わかりやすく言えば次のような手順です。


1,これを行うと次、どうなるのか?つまり「推測」です。

2,実際にやってみた結果どうなったか。これは「分析」です。

3,何故そうなったのか。最初の推測と違った場合は、なぜ違ったのかをかんがえます。つまり「検証」です。

4,「検証」によって、これまでの学習パターンや、価値感のパターンを振り返り、新しく「書き換え」、もしくは「上書き」をします。つまり「振り返り修正」です。


この「推測」→「分析」→「検証」→「修正」をクルクルと何度も繰り返すことで、小さな失敗や成功パターンをワンセットで経験しながら、全体の次元が次第に高次の方向に上がっていきます。つまり、自分のものに同化して行きながら、以前の自分では気が付かなかったことが、分かるようになり、見えなかったことが見えるようになる。さまざまな気付き現象が次々と起こります。


例えばこの癒音フルート練習の事例でいえば、「この次の指使いをすると、どんな音が出るんだろう…」、というように【推測】し、「あれ?この音じゃないな…」と【分析】をし、「どうして間違ったんだろう…」と【検証】をし、「この指使いではだめだ、今度はこうしよう」と【修正】をする。

この流れは、あらゆるほとんどの日常や仕事の現場でも応用が出来ます。


これ、実は関西大学の人工知能や人間の思考研究をしている先生が、早く学習するための方法として、長年の研究成果の末にまとめられたものなんですが、どんな場面にでも、きっちりと効果が出るように長年の学生の授業でも実験済みの方法なんです。


仕事でも、先程のパソコンの習得場面でも、スポーツの技術習得のトレーニングでも、効率良く学習成果が出ているときは、脳はこのような循環を自然に行っているらしいのです。


これを意識的に普段から行うことで、『何故か上手くいっている状態』、つまり「フロー状態」に似た感覚を、意図的に再現させられるということです。つまり、全く同じシチュエーションでも、これを知っている人は、「楽しく学べる」。知らない人は「ストレスになる」という全く正反対の反応が脳に起こるようです。


これ、自分の意識や価値感を変える為の、結構な脳トレになるな…と、感じています。実際にEQ能力が飛躍的に高まっていくようです。つまり、心のバランス感覚、能力の向上です。


客観的に、常に自分の心の動きを俯瞰する状態に慣れていく。これは今、世界で注目されている「マインドフルネス」の世界ととても似ている世界観です。

グーグルでも社員の能力トレーニングで取り入れ始めている、これから大注目の、脳のリフレッシュ法。東洋の禅等の世界観を基に、脳機能学や心理学等、宗教観を排除した科学的なプログラムとして、世界の大企業や経営者達が大注目している方法。最近の本でもマスコミに取り上げられ始めているようです。


是非、あなたも日常の中で、新しいことを学習する場面と出会ったら、チャレンジしてみてください。新しいことを学ぶ際にストレスフルになっていた感情の動きが、もっと違う、なんていうのか…。知らないことを知ることが出来るチャンスと向きあえるワクワク感みたいな…。きっと今まで感じなかった新しい感覚が生まれて来ると思います。















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