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〈私鉄3.0〉で東京は変わる | 東浦亮典

宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。1月22日に放送されたvol.19のテーマは「〈私鉄3.0〉で東京は変わる」。東急電鉄執行役員の東浦亮典さんをゲストに迎え、少子高齢化や職住近接がもたらす都市機能の変化や、渋谷を中心に進められている再開発が目指しているビジョンについてお話を伺いました。(構成:籔 和馬)

宇野常寛 News X vol.19
「〈私鉄3.0〉で東京は変わる」

2019年1月22日放送
ゲスト:東浦亮典(東急電鉄執行役員)
アシスタント:加藤るみ

2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えて、東京が抱える問題点

加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは東京急行電鉄、執行役員の東浦亮典さんです。東浦さんは沿線の街づくりに長年関わられてきた方なんですよね。

東浦 1985年に会社に入社して、最初の1年だけ自由が丘の駅員や大井町線の車掌などをやらせていただいていました。その後、本配属になってからは都市開発畑を歩いていますね。

加藤 今日、東浦さんと考えるテーマは「〈私鉄3.0〉で東京は変わる」です。宇野さん、このテーマを設定した理由は何でしょう?

宇野 東浦さんの話題書『私鉄3.0』にまとまっているんですけど、東浦さんは東急の沿線開発を中心に、東京の20〜30年の様変わりを見てきたし、プレイヤーのひとりとして動かしてきた方なんですよ。その力を持っている人をお呼びして、これから東京はどう変わっていくのか、変わっていくべきなのかを正面から議論していきたいと思っています。

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▲『私鉄3.0 - 沿線人気NO.1・東急電鉄の戦略的ブランディング

加藤 では、今日もキーワードを三つ出していきます。まず一つ目のキーワードは「これからの東京の課題」です。

宇野 東急の方を呼んでいるので、僕らの住んでいる、この足元から、これからの都市生活の課題を洗い出していきたいと思っているんですよ。東浦さんが21世紀の東京の課題は何だと思いますか?

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東浦 この円グラフを地球だと思ってください。私が1961年生まれで、その頃は地球全体の人口は30億人がいたんです。その内、10億人が都市住民でした。それが現代だと二倍以上になって、約半分が都市住人なんです。国連の予想だと、2045年には地球の全人口は90億人近くになるんですけど、その三分の二が都市住人になってしまうんです。そのように都市に人口が集まることによって、いろんな課題が出てくるんです。特に我々、街づくりデベロッパーとしては、環境下問題、高齢化問題、都市化問題をすごく大きな問題としてクローズアップしています。

宇野 今東京が直面している問題は、2019年の東京に住んでいる我々だけの問題だけではなくて、どう都市人口集中の時代を乗り切っていくのかが、地球に住む人類の問題ですよね。

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東浦 これは私の考えている街づくりなど、いろいろ仕事をする上での定性的な情報です。こんなことを前提にして、街づくりを今していますという情報ですね。

宇野 この中で、特に東浦さんがポイントだと思うのはどれですか?

東浦 ひとつは、我々鉄道会社、特に街づくりデベロッパーとしては、大量の方に郊外に住んでいただいて都心に通勤していただくワークスタイル、ライフスタイルを送っていただいていて、そこで儲けさせていただいていたんです。でも、これから高齢化とともに、その方々が通勤という行動をしなくなる。そして、次の世代を受け継ぐべき若者の世代が、たぶん傾向として低収化してしまう。というふうに思いますね。

宇野 東京でいうと、戦後中流のライフスタイルが崩壊していくということですよね。郊外で住宅を買って、そこに専業主婦と子どもを住まわせて、お父さんは終身雇用で1時間強かけて、丸の内や銀座などに通っていく。それがなくなって、共働きが基本になって、職住近接になっていく。一方で、日本型雇用が崩壊していって、おそらくは若者が低収入化していくだろうということですよね。

東浦 来年はオリンピックの年ですが、小池都知事は、セーフシティ、ダイバーシティ、スマートシティという三つのシティをかけて、キーワードとして出しているんです。でも、オリンピックが近づいて、たくさん来られるであろう、海外や地方から来られるお客様に都市のしくみが間に合っているのかがちょっと心配になってきています。

宇野 間に合ってないでしょ。

東浦 間に合ってないでしょうね。

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