見出し画像

新しい音楽の遊び方! | 猪子寿之

今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第8回です。猪子さんが去年の大晦日に、ふと思い立ったことで実現したチームラボの音楽フェス。徳島県で開かれたそのイベントでは、EDMというクラブミュージックの最先端の音楽に、地元の老若男女が踊ったとか。その理由はいったいどんなところにあったのでしょうか?
◎構成:稲葉ほたて
【お知らせ】
この連載が元となった猪子寿之×宇野常寛『人類を前に進めたい チームラボと境界のない世界』が好評発売中です。

■3月に徳島で開かれた音楽フェス

猪子 去年の大晦日にね、「ミュージックフェスやりたい!」って思ったの。

宇野 紅白がつまんなかったから(笑)?

猪子 いやいや……大晦日が休みで、暇だったから(笑)。

ヨーロッパやアメリカですごく流行っているEDMのフェスティバルが日本に輸入されてきて、まあそれはそれでとても良いんだけど、輸入ばかりだと悲しい気持ちになるから、いつか逆に世界中から呼ばれるような新しい音楽のイベントを創りたいと思って。

で、今年の3月末に、徳島で「チームラボミュージックフェスティバル」をやったの。「超実験的にはじめる前代未聞の体験型音楽フェスティバルです」ってことにして、5000人くらいの人が遊びに来てくれたんだよね。

画像1

▲「teamLab Music Festival」
2016年3月26日〜3月27日にかけて開催。
(公式サイト)

(参考動画)

宇野 そんなのやってたんだね。知らなかった……(笑)。具体的には、どんなアーティストが出たの?

猪子 Dr. Animalsっていうミュージシャンを呼んだ! 彼らは、新しい音楽の遊び方をお客さんに教えながら、一緒に遊ぶの。

画像2

▲Dr. Animals

僕は、彼らこそが新しいミュージシャンの形だと思ってるの。

日本の音楽って「演者としてのミュージシャン」という概念が極めて強い。演者さんのことをミュージシャンって呼んでいて、その究極がアイドルなんだよね。
だから今回、ミックスは素晴らしいDJに創ってもらったし、一部は僕たちでも創ったんだけど、それと演者の部分は完全に切り離した。「音楽との新しい遊び方を観客に教えながら一緒に遊ぶ人」「音楽と新しい遊びの装置を創る人」を、ミュージシャンと呼びたいと思ったんだよね。

宇野 なるほど、面白いね。何歳くらいの人が集まったの?

猪子 それがもう、3歳の子供から70歳のおじいちゃんまで一緒になって遊んでるんだよ! まあ、徳島だからかもだけど。

みんなクラブカルチャーとは縁がないから、最初はもう棒立ちしてたの(笑)。でも、20分もしたら、もう子どもたちは全員お父さんに肩車されてボールを追いかけていた。

画像3

▲teamLabBall

あと、仕掛けをたくさん用意したの。

曲ごとにアトラクションが変化する、新しいフェスを作りたかった。だから、通称「エレクトロニック汽車ぽっぽ」の音楽に合わせてロープで汽車にさせられたり、ボールをみんなでつつき合ったり、お神輿を担いだりするのね。曲ごとに音楽とその遊び方って変わっていくから、遊び方を教えながら一緒に遊ぶ人、遊びに誘導する人をミュージシャンの定義にして、最終的にはDr. Animalsと観客全員をミュージシャンにしたかった。だから、このフェスにはステージという概念もない。オープニングの5分間を過ぎると、気づいたらステージが消えていて、会場の中がステージになる。照明も、ほとんど観客のいる会場の中に向けられる。

画像4

▲通称エレクトロニック汽車ぽっぽ

壁を叩くと音が鳴る仕掛けにも、まずDr. Animalsが叩いてみせると、すぐにみんな同じように叩きだして音を鳴らすんだよ。そこに音楽を重ねてかけると、リズムに合わせてみんな遊び始めちゃう。

画像5

▲通称奏でる図形

ここから先は

4,744字

¥ 540

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?