根津さん

根津孝太 × 宇野常寛 プロダクトデザインはいかに更新されるべきか(HANGOUT PLUS 10月24日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】

毎週月曜日22時よりニコ生で放送中の宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。今回は2016年10月24日に放送された、プロダクトデザイナーの根津孝太さんをゲストに迎えた回の書き起こしをお届けします。日本を代表するカーデザイナーとして、既存の枠組みにとらわれないユニークなプロダクトを次々と生み出し続ける根津さんの、発想の源泉はどこにあるのか、その秘密を語ります。

プロフィール
根津 孝太
1969年東京生まれ。トヨタ自動車を経てznug design設立。多くの工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、代表作は、「町工場から世界へ」を掲げた電動バイク『zecOO』、やわらかい布製超小型モビリティ『rimOnO』、トヨタ自動車コンセプトカー『Camatte』、タミヤミニ四駆『Astralster』『RAIKIRI』など。2014年よりグッドデザイン賞審査委員。

「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。
前回:柿沢未途×宇野常寛 民進党は(マジで)これからどうするのか(HANGOUT PLUS 10月10日放送分書き起こし)

※このテキストは2016年10月24日放送の「HANGOUT PLUS」の内容の一部を書き起こしたものです。

クリエイティビティの源泉は「言葉」にあり

宇野 それではメールを読んでいきましょう。

宇野さん、根津さん、こんばんは。クリエイティブな部分に興味があります。以前に私はミュージシャン(カッコつけでなく作曲をする方)に話を聞いたとき、「曲を作る時に立体物を想像して、そこから音にしていく」というのを聞いたことがあります。根津さんはプロダクトを作る際に別のものを想像してから変えていくようなことはありますか? もしくは創作の起点は何から始まりますか。(塩分控えめ 東京都 33歳)

根津 面白い質問ですね、僕は言葉の力が大きいです。立体を作っていく作業をするときに、ほかの立体を見てダイレクトに影響を受けるというのは……まあ、確かにそれもあるんですよ。たとえばzecOOは『AKIRA』や『トロン』に影響を受けているんですが、最近では、宇野さんとお話しするとか、そういうことが次の作品に繋がっていくんですよね。言葉には解釈の余地があって、そこからクリエイティビティを引き出されることがよくあります。楽しい話をした後に、そこから形を考える、モノを考えるということがすごく多くなりましたね。

▲zecOO

宇野 それを言われると評論家としてはプレッシャーが(笑)。僕としても作家の作ったものには、全力で打ち返さないといけないと思っていて。自分の評論に影響を受けて、それを上回る形で打ち返してきてくれたときが、評論家としては一番嬉しいですね。斜め上から「まさかこうくるか!」みたいなね。

根津 「批評性」という言葉を宇野さんが使われていて、僕はすごく感動したんです。自分の作り出したものについて、自分では見えていないことっていっぱいあるんですよね。それを言ってもらうことで、「じゃあ次こうしてみよう」みたいな再発見があるんです。今日だってそうですよ。そういうことが今は一番刺激になりますね。

宇野 もう1枚いきますかね。

宇野さん根津さんこんばんは。私は趣味と実益を兼ねて、普段の都内の移動を自転車で済ませています。都内ならば下手に電車に乗ったりタクシーに乗るよりも、自転車の方が早いことも多いです。夏場はつらいのであまり使っていませんでしたが、だんだんと涼しくなってきて、ちょうど自転車乗りとって気持ちのいい季節になってきました。根津さんはエンジンを積んだ乗り物のデザインを中心に手がけていると思うのですが、スポーツとモビリティの関係についてはどうお考えでしょうか? 根津さんのデザインした自転車があったら、ぜひ乗ってみたいと思っています。今夜の放送も、楽しみにしています!(よきこと聞く 東京都 30歳)

根津 ありがとうございます。実は自転車もいろいろやってるんですよ。

宇野 そうですよね、語ってますもんね。

根津 エンジンやモーターがついた乗り物をやるときでも、自転車の視点を忘れたくないんですよね。今の質問に関していえば、スポーツというのは幅広い年齢層の人にとって大事で、特に体が動かなくなってきた高齢者の方には、電動という方法もあるんですが、ちょっとアシストしてあげるとまた動けるようになったりするんです。移動とスポーツは本質的に近くて、自転車はそれが一致してる素晴らしいモビリティなんですよね。でも、外で自転車を乗り回すのは自信がないな、という人にはもう少し安定感のある乗り物にするとか。あるいは雨の日だと辛くなっちゃうので、屋根を付けてみるとか。そういう自転車から生まれてくる発想は、すごく大事だと思うんですよ。

宇野 なるほどね。自転車・電動自転車・三輪・rimOnO・軽自動車というふうにグラデーションになっていて、足りないところを根津さんが埋めていっているわけですね。

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