鷹鳥屋明「中東で一番有名な日本人」第15回 日本の書籍はどこへいったのか?世界3番目のブックフェアにて(前編)

鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』。アラブ首長国連邦で行われるシャルジャ・ブックフェアは、約200万人が訪れる、世界第三位の規模を誇るブックフェアです。今回は日本がホスト国として招かれましたが、日本の出版文化を広く知らしめるような展示は難しかったようです。

大規模書籍見本市、シャルジャ・ブックフェアとは?

皆様は「ブックフェア」というイベントをご存知でしょうか? 出版物の催事セールや展示会のことで、本や書籍の見本市と言えるイベントです。主に出版関係者のためのイベントではありますが、本のバーゲンセールも行われるため、一般の方々が本を買いに来るイベントでもあります。
この本の見本市で、世界最大の規模と言われているのがドイツのフランクフルト・ブックフェアになります。こちらのイベントは5日間、7500社近く展示と28万人の来場者数を誇るイベントになります。それに対して中東において有名なのが、エジプトのカイロ・ブックフェアと、アラブ首長国連邦で行われるシャルジャ・ブックフェアになります。シャルジャという国には馴染みがないかもしれませんが、シャルジャ(シャールジャ)首長国はドバイの北にあるアラブ首長国連邦を構成する首長国の一つで、ドバイのベットタウンとして有名な街です。シャルジャのトップであるスルタン3世首長は学術、文化関連へ注力しており、スルタン3世自身もシャルジャの大学の学長を兼ねているなど、力の入れようを感じられます。

▲ドバイの北にあるシャルジャ首長国。東京をドバイとするならシャルジャは埼玉のようなポジション

▲ブックフェア初日にご来場されたシャルジャ首長のスルタン3世

さてこのシャルジャ国際ブックフェアですが、その規模はかなり大きく、近年カイロ・ブックフェアが行われていないこともあり、世界第3位、中東最大規模のブックフェアと呼ぶに相応しい規模になっています。イベントは11月上旬の11日間で、世界77カ国から出版社は1874社、来場者数は238万人と大変大きな規模になっております。この238万人という数字は、入場無料、期間の長さ、再入場カウント、周辺首長国から小学校から高校生までを動員しているといった背景から、これだけの数になっていると考えられます。
現在、このシャルジャに続いて他の首長国、アブダビやアルアインなどもブックフェアを行なっていますが、1982年から継続してブックフェアを行なっているシャルジャには、まだまだ規模と認知度は及ばないのが現状です。

▲多くの人が訪れるシャルジャ国際ブックフェアの様子

名誉招待国、日本がホスト国に任命された2018年

日本と距離が離れていることや、英語ではなくアラビア語というある種特殊な言語圏で、日本の書籍はほとんど翻訳されていないといった様々な要因があるためか、このシャルジャ国際ブックフェアは残念ながら日本ではほとんど認知されていません。さらに前述のフランクフルト・ブックフェアと時期が被ることから、参加を敬遠されてきたという事情もあります。世界において出版大国の一つである日本ですが、これまではほとんど参加できていなかったのが実情でした。
しかし今年は少々様相が変わり、日本も無関係ではなくなりました。2018年は日本が名誉招待国として招待されることになったからです。去年の名誉招待国は大英帝国イギリスでした。招待されたイギリスは広告会社ブリテッシュ・カウンシルと連携し、多くのイベントを行いました。招待された人々も、英国版ヴォーグ誌前編集長のアレクサンドラ・シュールマン氏、英王室伝記作家のクラウディア・ジョセフ氏、英国人ジャーナリストのサーフラズ・マンズール氏、作家のニール・ムカージー氏、ロンドンブックフェア総責任者のジャック・トーマス氏など、現地や周辺諸国において高名な方々が出席しました。ホスト国であるイギリスはアラブ湾岸諸国に数百万人規模のインド人が住んでいることを把握しており、その層を狙ったイギリス系インド人の作家を招聘したところが見事でした。
さて、今回の日本ですが、シャルジャ政府側が日本を選んだ理由としては、文化や社会の進歩に重要な書籍を展開し、世界的に文化的成果をもたらしている点を評価したためです。中東地域においても三島由紀夫、村上春樹、カズオ・イシグロなどの著名な日本人小説家の作品がアラビア語訳されており、文化分野の育成につながっているというコメントがなされています。
ですが、いざ開催されたシャルジャ国際ブックフェア、不思議なことに今年のオープニングセレモニーで名誉招待国である日本について言及されることはほとんどありませんでした。また日本の総領事の講演や登壇もありませんでした。

▲オープニングセレモニー会場、名誉招待国の日本について高官からコメント無し

これは不思議なことです。今までテーマ国に選ばれた国がこのような対応を受けることはありませんでした。これはなぜでしょうか。その原因を知るためには、この200万人以上が来るイベントで、在ドバイの日本領事館がどのようなパビリオンを展開したのか、という点がそれを解く鍵になるかと思います。

日本の書籍はどこへいった?日本の文学は鯉とケーキと乳酸菌飲料?

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