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過激化する香港デモの真実|周庭

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。長期化しつつある香港の騒乱。日本のテレビでも過激なシーンが流れていますが、それは香港人の一面にすぎないといいます。(翻訳:伯川星矢)

御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第29回 過激化する香港デモの真実

今この瞬間(2019年8月18日)、わたしはビクトリアパークで行われるデモに参加しようとしています。

これは6月以降、何度目になるかわからないデモです。実際に6月から毎週の土曜日と日曜日、そしてたまに平日に、わたしたちは「5点要求」[1]を求めて、デモや集会を行っています。8月5日、私たちは返還後最大級のジェネラルストライキを成功させ、35万人が7つの地区でストライキと集会を行いました。

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▲香港国際空港での集会の様子

しかし、今日に至っても、政府は香港人の訴えを無視しています。

多くの日本人にこう聞かれます、香港のデモは過激化したのか?暴力化したのか?
確かに、テレビニュースの放送は、必ずもっとも「ジューシー」な画面を選んで放送しています。それによって香港デモが過激化したのではないかと感じられるのかもしれません。でも、みなさんには「過激化」と結論付ける前に、なぜ香港デモがここまでになってしまったのかを、ぜひ理解して欲しいです。

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▲ストライキの記者会見

前回の連載でも話しましたが、香港人はここ数ヶ月、あらゆる平和的手段を使い尽くしています。署名収集、新聞広告掲載、合法デモ集会、ストライキなどなど。わたしたちも最初から急進的な方法で抗議活動をしていたわけではありません。だが、権力者はいかなる平和的手段にも動じない以上、わたしたちもそれ相応な対応を考えねばなりません。

わたしは穏健的な活動と急進的な活動の両方の同時進行が必要だと思っています。さらに過去の体験から学習し続けることで、社会運動はより一層、力を付けることができます。一方で、ソフトな方法でより多くの人に参加してもらい、一般市民と国際社会の支持を得る。もう一方で、平和的な活動に動じず応えようとしない政権には、より能動的な活動を仕掛け、回答を促します。
その一例が、6月9日に起こった100万人デモです。これは返還以降、最大規模のデモであるにも関わらず、政府はただ「市民の権利は尊重するが、条例の審議は継続する」とコメントし、民意をものともしませんでした。本当に政権側の考えを変えたのは、6月21日のジェネラルストライキの参加者が立法会を包囲、近隣道路を占拠し立法会の機能を麻痺させたことにあります。

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もちろん、社会運動には絶対に成功するという方程式はありません。さまざまな社会環境と制度がある中で、成功の方法は全く違います。私は今回の例を通して「急進的な行動」が有効的だと証明したいのではなく、飴と鞭のように平和的な活動と急進的な活動を組み合わせること、一般市民と国際社会の支持を得ると同時に、直接的な社会活動で政府に圧力をかけ、「天の時」「地の利」さらに「人の和」を味方につけることで、やっと希望が見えてくると思います。

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確かに、昔のデモに比べると激しいシーンが多く、日本のみなさんには「過激化」した印象を与えたかもしれません。でも、それは逃げ続ける政権への抗議手段であり、決して「香港人が過激化した」わけではありません。
いろんなシーンがメディアで流れていますが、それら全てが香港人を表したものです。能動的な行動を取ったからといって切り捨てることなく、それも香港人の一面であると思い、これからも暖かく見守って頂けますと幸いです。

(続く)

[1] デモ隊が共通して要求している以下の5つの項目のこと。1.条例改正案の完全撤回、2.6 月12日の立法会(議会)での衝突を「暴動」と認定したことの撤回、3.デモ参加者への刑事責任追及の撤回、4.警察当局による暴力行為の調査 、5.普通選挙の実現(林鄭月娥行政長官の辞任)(参照

▼プロフィール周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

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