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少女漫画の現在地 | 畑中雅美

宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。6月4日に放送されたvol.37のテーマは「少女漫画の現在地」。小学館月刊Cheese!編集長の畑中雅美さんをゲストに迎え、縮小を続ける出版業界の中で、女性読者の熱い支持を集める少女漫画雑誌・月刊Cheese!の人気の秘訣に迫ります。(構成:佐藤雄)

NewsX vol.37 「少女漫画の現在地」
2019年6月4日放送
ゲスト:畑中雅美(小学館月刊Cheese!編集長)
アシスタント:後藤楽々

新興の少女漫画誌「Cheese!」はいかにサバイブしてきたのか

後藤 NewsX火曜日、今日のゲストは小学館の少女漫画雑誌「Cheese!」編集長の畑中雅美さんです。よろしくお願いします。おふたりはどのようにお知り合いになられたですか?

宇野 数年前に勉強会みたいなものがあってそこで知り合いました。その頃はまだ編集長ではなかったんじゃなかったかな。

畑中 そんなに昔に会ってるんですね 。編集長になって4年経ってます。

宇野 知り合ってすぐ後に編集長になって、気がついたら少女漫画界を代表するカリスマ編集長として大活躍されていましたね。畑中さん自身もメディアに出て漫画編集界のオピニオンリーダーとして活躍もされていますね。昔は僕も一生懸命少女漫画を読んでいたんだけど、漫画シーンを追うことが数年前に虚しくなってしまって、最近は読んでないです。具体的に言うと『ちはやふる』を途中で読むことを辞めちゃってる。「この漫画がすごい!」に投票することも2016年を境に辞めちゃっています。今日は良い機会なので畑中さんから少女漫画シーンについて教わりたいなと思っています。

後藤 今日のテーマは「少女漫画の現在地」です。

宇野 畑中さん自身が少女漫画シーンを作ってきたひとりなわけです。

後藤 畑中さんが担当されていた作品を見ると、私も読んでいた作品が多いです。青木琴美『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、相原実貴『5時から9時まで』、嶋木あこ『ぴんとこな』、すごいです。

宇野 現役女子大生的には畑中さんの担当作品は読んでたものが多いよね。

後藤 少年漫画はあまり読まないんですけど、少女漫画はすごく好きなんです。

畑中 少年漫画を読まないのは珍しいですね。少女が読んでる漫画を「少女漫画」と呼ぶならば、今最も「少女漫画」しているのは原泰久『キングダム』だと思います。宇野さんが漫画を読まなくなった時期と、少女が少年漫画を読み始めて、ボーダレス化が進んできた時期はおそらく一致しています。

後藤 私も『キングダム』の映画は観に行きました。

宇野 「少女漫画」という表現ジャンルの読者層が変わっていると思うんです。今日はそういった読者層の変遷の話も踏まえて少女漫画の現在地を立体的に描き出せたら良いなと思います。

後藤 本日のテーマは「少女漫画の現在地」です。

宇野 「少女漫画は今どうなっているか」という話を畑中さんからお聞きしたい。まずは畑中さんが編集長をされている「Cheese!」の現状から聞いてみたいと思います。

畑中 創刊から50年ほど経っている少女漫画雑誌がたくさんある中「Cheese!」はまだ創刊から20年程しか経ってない新興の雑誌です。読者層は高校生ぐらいからと言われていますが、主な読者は大人です。私よりも年上の方も読んでいます。

宇野 大学生ですらないんですね。

畑中 大学生も読んでるとは思いますけど「Cheese!」の強みはデジタルでよく読まれていることなんです。電子書籍というと、特に男性にはKindleなどを筆頭に最近の話というイメージがあると思うんです。でも実は「Cheese!」の電子書籍はガラケー時代からもう読まれていたんです。

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