マグロ

【妄想ドラマ企画33】テクノ刑事(ポリス)その2

 芝浦でのガサ入れは大失敗に終わり。殉職者4名、行方不明1名という犠牲。この事件は『調査不足による強引なガサ入れが招いた悲劇』として、関係した責任者たちは全員左遷
 時生(ときお)を含めた5人は全員2階級特進の殉職者として警視庁あげて葬礼された。
 そしてこの件は、戦後警視庁最大の汚点として調書と共に資料室の金庫奥深くに仕舞われ、内々に触れてはいけない箝口令が敷かれた。

 そして、それから33年の月日が流れた
 ハレーすい星が来て、昭和から平成の世にかわり、21世紀がやってきた。
 数々の音楽ムーブメントが過ぎ去り。
 バブルが来て去り、東京の再開発が進み終わり。
 そして2020年の東京オリンピックの開催。戦後、バブル、二度目の東京オリンピックと三度東京の再開発が進もうとしていた。
 2017年の6月。
 その日、警視総監・高野顕臣(たかのあきおみ)は警察庁の警務部より極秘の連絡を受けた。
 JR田町駅南の再開発地区で倉庫群の撤去工事の最中、地下倉庫から忘れられていた冷凍マグロに紛れてとんでもないものが見つかったという。

 高野警視総監は警視庁科学警察研究所のある千葉県柏市に急ぎ向かった。
 到着すると、そこで法医学担当者と合流し、その案内で研究室の一つに入った。
 研究所のガラス越しに高野が見たものは、大きな水槽の中にいくつもの管が入った見たことも無い装置だった。
「総監に確認して頂きたいのはこの中にあります」
 そう言うと法医学担当者は水槽の脇に立つ白づくめの研究者たちに合図した。

 やがて水層から管が撤去され、水泡が消えると内部がはっきりと見え始めた。その内部を見た高野は絶句した。
 高野が見たものは紛れも無く33年前に行方不明になった刑事課の先輩・ 坂本時生だった。
 しかも行方不明になった時と、変わらないそのままの姿だった。
「やはり、お知り合いの方でしたか」

 発見状況からの説明によると、坂本先輩は追跡捜査中に冷蔵倉庫に閉じ込められそこでマイナス30度に瞬間冷凍された。出口をもとめて倉庫の隅に居た為、この三十年間、冷凍マグロを出し入れする倉庫関係者にも発見されず。ずっと冷凍されっぱなしだった。
「坂本巡査・・・いや特進して坂本警部補の遺族の方へ早くお知らせしてあげないといけないな」
 高野総監は33年前の葬儀を思い返して心が痛んだ。
 それを聞いた科警研担当者は言った。
「いえ総監違うんです。先ほど心臓が蘇生し、少しづつですが全身に生命反応が戻って来ています
 様々な偶然が重なった為、坂本の細胞の保存状況は極めて良く、現在科警研ではアメリカの蘇生技術を応用し時間をかけて解凍作業をしていると言う。
「ということは・・・」
「この方は死んでいません。生きています。間もなく脳の機能も回復すると思います。奇跡としかいいようがありません」
 それを聞いて総監高野はうろたえた。
 警視庁の不祥事としてあの事件は極秘処理済、坂本先輩はとっくに殉職者として手厚く葬られた。今さら生き返られてもこまるが、とは言え職務に忠実だったが故に巻き込まれた災難だ。思えばあの時一緒に踏み込んでいたら、自分の命もどうなっていたか分らない。

「この件は警視総監・高野顕臣が全責任を持つ。かならずや坂本さんを生き返らせてあげてくれ!」
 高野は力強く言った。かくして、三十三年前に死んだはずの坂本刑事は生き返り、補償の一環として警視庁の特別捜査官として再雇用された。
 ただ、このことは警視総監と警察庁がタッグを組んだ隠ぺい工作により他言無用となった。
 一番辛いのは生き返った本人。
 当時付き合っていた恋人は孫のいるおばあちゃんになっており、両親はとっくに死別。後輩は出世して警視総監。
 坂本にとっては、何もかもが80年代で止まっており、やることなすことチグハグな事ばかり。
 そんな彼の心の支えは今も変わらないテクノミュージックと80年代を信じて生きる事。
 そんな彼に転機が訪れる。
 あることがきっかけで、冷凍刑事・坂本時生は30年以上前の未解決事件の捜査をすることになった。

 今の捜査官にとって手がかりの無い古い事件も、坂本にとっては昨日の出来事のように超鮮明!
 坂本の記憶を頼りに未解決事件の真実に向かっていくことになる。
 
 それが「テクノ刑事(ポリス)」

「生き返っても頭脳は古い!20世紀のおしゃれ刑事!現代知らずのテクノ刑事・坂本時生

役者はぜひとも星野源で!


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ドラマ企画100本目指します!