「電通刑事」とは・・・

　今日は皆さんで警察の歴史について学習します。テキスト12ページを開けてください。
　ここでは現在の犯罪捜査、犯人逮捕の警察システムの中心となっている「広告捜査制度」の歴史について覚えていただきます。

　西暦２０３５年。日本の経済的な停滞と高齢化社会による福祉制度、税収制度の破綻が起こりました。そして政府は緊急措置として全国の公務員の１／３を解雇される政策を断行しました。

　警察組織もその例外ではなく刑事部も管理部門を除いて、全員が民間企業に委託され、事件ごとに各地方警察と契約を結ぶフリーの「契約刑事制度」が誕生しました。

　当初の目論見としては、インターネットを使ったビッグデータのサイバー捜査により得られた情報を元に、犯罪の事前察知、犯罪者の潜伏場所の捜索、現在進行形の犯罪の即時解決を図る各捜査パターンを想定し、「人員削減を知恵で乗り切る」、「犯罪の起きない社会の創造」を政府はスローガンとしていました。

しかし、現実は警察人員削減による交番の廃止、地方警察の統廃合など「目に見える犯罪の抑止力の低下」により、制度開始１年で犯罪の発生率は２００％増え、東アジアでもワーストランキングに迫る状態に陥るほど、極端に日本の治安は悪くなった時代があったのは、皆さんも小学校などで教わっていると思います。
　
シミュレーション上は成立していても、そこに直接かかわる生身の刑事がいないとなると、犯罪捜査へ取り組む熱意や、被害者への思いなどが希薄になり、どうしても捜査時間だけが空費される、努力と根性のない刑事捜査となっていたんですね。

　そこで大手広告代理店を中心に、毎回「ある事件」に関連して被害者、不利益を被るも者、同情者、注目を利用して商品の宣伝に活用しようとする企業などから出資者をつのり、その資金と広告収入により事件解決をする新しいシステムの「刑事捜査」が開発された。

　それが「広告捜査制度」の始まりです。中心となる代理店の名前をとって「電通刑事」と呼ばれます。

　実際にどのような形で捜査が進むかは次のページの図解を見て見てください。

まずは中心となるのが、各地の中継機器が完備されたオペレーションルームです。モニターに向かって右側に「司法センター」があります。そこには、警察庁、検察庁、警視庁部長クラスが立会い捜査現場での刑事捜査の合法性について即座にジャッジできるようになっています。

左側には「スポンサーセンター」があります。出資者と企業広告のある事件捜査ですので、ここには企業や被害者家族、広告会社の担当者などが立会います。
捜査の全貌は原則全て生放送されます。これは法律「刑事捜査の放送配信法」で定められています。これは不正な捜査、例えば正義の側の刑事が提供スポンサーの飲み物ばかりを飲んだり、犯人が競合するメーカーの商品を使っているように逮捕現場を偽装したりしないように、視聴者が監視するシステムになっています。

そしてオペレーションルームのセンターには番組を中継する配信、民放各局のディレクターとマネージャーたちが座っています。だいたい大きな事件捜査の中継となると五、六社が競い合って犯人確保を目指すことになります。テレビ局、配信会社がそれぞれ契約する「捜査官」に、中継映像をもとにして事件を分析し指示を与えます。いかに早く逮捕するか、いかにスマートに事件を解決に導くかディレクターたちと捜査官の技量はもちろん、息が合っていないと上手くいきません。
このあたりは自動車レースの「Ｆ１」のノウハウを電通が捜査に応用したと言われています。
その影響は、各「捜査員」が着るコスチュームに、それぞれがスポンサードを受ける企業の名前が入っていることにも現れています。

やがて実際の捜査中継が始まると、驚異的な視聴率と配信数を取るようになり、中継される捜査員はあっという間にセレブリティーとなっていきましました。
　毎週人気ランキングがネットで発表されるようになり、高額収入を得るスター刑事も登場しました。

　それが「広告刑事」通称「電通刑事」です。今日の講義はこれくらいにして、次回は実際に捜査するオペレーションルームを見学しますので楽しみにしていて下さい。

　捜査中の広告刑事への指示の例
　「今回の金融機関連続強盗の逮捕に関してスポンサーは『歩く健康協会』ですので、車や自転車や全力ダッシュによる捜査はＮＧです」

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