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【妄想ドラマ企画43】刑事2.0(3)



捜査会議に現れたのは、制服を着た20代の女性職員だった。
「庶務課会計係の、上部望(うわべ のぞみ)です」
少し茶色に染めた肩にかかる髪をした色白で緊張した女性が自己紹介した。
「君がフォロワー1万人のアカウント名、えーと『暇な女@二日酔い』さんか?」
保守党幹事長の五十嵐は手元のプロフィールを見ながら聞いた。

「はい、あのーすいません。でも、どうして私だとわかったんですか?」
「我々サイバー捜査班をなめてもらっては困る。警視庁職員4万5000人のアカウントは全て監視している
 サイバー捜査班小机がイジワルそうな顔をして言った。
「しーっ、それ内緒のやつだから」室長が思わずたしなめる。
そんなサラリーマン的脱線やり取りには慣れてるのか、話を戻すように上部は弁解をした。
「あのぉ、あくまでもプライベートです。決して職業上の悪用していませんので」
「いいんだよ、これからはどんどん仕事に使ってもらうよ。でも一応聞くが、フォロワー1万人って・・・何で君そんなに有名なんだ?
「有名ってわけではないですよ。毎日5,6個。毎日思ったことや知ってもらいたい事などを短く書いているだけです」
「本当にそれだけで、こんなに支持されるのか?」
 刑事部長が不思議そうに口を挟んだ。
「まぁ、ちょっと経歴が変わっているのかもしれません」
「ちょっとって、どういう風にだ?」
「警察官になる前には、パティシエをしてましてお菓子の情報を定期的にアップしてました、その前は雑貨の販売員もしていて気に入った商品の解説なんかも人気でしたね、あ、あとイラストも描いて一時デザイナーもしてました。その時一度外国人と結婚してニュージーランドに半年住んでいました。まぁ、その後離婚して今シングルマザーで、現在子育て日記が人気です」

「きみ、一体何才なんだ」
「26才です」
「人生の展開が早すぎないか・・・それでどうして警察に」
「やっぱ景気に左右されないし、必死でがんばらなくてもいいし、公務員最高ですよ」
「・・・意外と毒づくね」
 それを聞いた刑事部長は悲しい顔をした。
「もういいそんな話。上部くん、君には早速このパソコンから犯人をフォローして、犯人から情報を引き出してくれ」
 保守党幹事長の四街道が指令を出す。
「・・・やだなぁ、知らない人フォローすると、私のアカウントが汚れるから」
 上部はいきなり帰ろうとした。
「いいから、やれ。昇進させてやるよ、君今から警部だ」
「そんなのなりたくありません」
「じゃあ、次の異動で君の希望通りにしてあげるから、今会計係で退屈でしょ、広報とかなら芸能人にも会えるし、テレビにも映るよ」
「分かりました」
 上部はすぐに自分のスマホを出した。
「いやいやいや、ここにいる全員で共有したいので、このパソコンでログインしてね」
 今や存在感すら希薄となった五十嵐捜査班長がパソコンを持ってきた。

「えーぇ、皆に見られるんですか恥ずかしいですが、異動の話はお願いします」
「分かっているよ、ここにいる刑事部長が承諾したんだ。それより現政権の命運がかかっているんだ、ちょっとぐらいの個人情報流出は我慢しろ」
上部(うわべ)に転がされてる感がしながらも、幹事長は無理難題を承諾させた。

上部は自分のツイッターアカウントにログインした。


(すいません まだつづきます)


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