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【妄想ドラマ企画21】パンク刑事

 警視庁公安部所属の宍戸如児(ししどじょにー)が警察官になったのは運命だった。

 二代続いた警察官一家の次男として生まれ、子どもの頃は早朝のランニングから夜の組手と運動に明け暮れ、空手小学校低学年部門・全国準優勝、柔道小学生部門で関東大会優勝という武道に明け暮れ、将来が期待されていた。

 しかしそんな宍戸少年の人生が変わったのは、小学校下校時に捨てられていた 「クラッシュ」の「ホワイト・ライオット」のLPを拾ったことだった。ジャケットのビジュアルイメージから啓示を受け、歌詞から独自にパンクロックのイメトレを始め、両親、教師の言うことを一切聞かないことに心に誓う。
(実際にクラッシュの音楽を聞いたのは、二年後、中学の時に新聞配達で溜めた給料でアナログプレイヤーを買ってから)

 やがて宍戸は地域で有名な不良となっていったが、中学の時に対立するグループとの決闘で訪れた空き地で捨てられていたストラトキャスターを発見し、エレキギターと運命の出会いをする。
 それからはギターを1日12時間練習し独学で習得する(チューニングと運指はめちゃくちゃ)。

 名前のハードコア具合を気に入って『工業高校 重金属学科』に入学、そこで出会ったベースの角野丈(すみのじょー)とパンクバンドを結成。ビンビンの髪でピアスしまくりのオールドスタイルのパンクロックスタイルで、学校で浮きまくる。
 その頃の演奏スタイルは、ドラムレスのツインボーカル、ギター&ベースで、即興演奏と即興歌詞という無茶苦茶なもので、もちろん録音も一切残っていない。
 渋谷、新宿の街角でゲリラライブを展開するも、アンプを持っていなかった為、音楽として全く認識されず。色黒輩チームから喧嘩を吹っかけれれては、路上バトルを繰り広げた。

 その頃たびたび訪れた新宿歌舞伎町交番の警察官から「お前ら反抗するのはいいが、何者かになってからにしろ」というメッセージを受けて、「警察官が何様だ!」というノリで警察官採用試験を受けることになる。
 絶対合格は無理と思われたが、小学校の頃の武道界での活躍を覚えていた試験官の推薦により何故か合格。
 厳しくて有名な警察学校も、理解のある教師が「全国30万人の警察官のうち1人くらいはお前みたいなやつが必要だ。世を恨み、世間に背を向けて生きるお前しかわからない犯罪者の心理もある」と優遇してくれる。
 その恩師は宍戸の卒業後にある事件に巻き込まれ、殉職してしまうことになる。唯一の理解者だった恩師の死を目の当たりにした宍戸は、警察官として真面目に生きることを誓う。が、翌日には元の自堕落な生活に陥り、追悼ギターを轟音で夜中演奏したことから研修中に退寮処分となりホームレス生活を送る。

 警察署に定時に現れず、警察装備も独自にチューニングをするなど、目に余る行動から「謹慎処分」、問題行動に「辞職勧告」を受けるも宍戸は無視。
 懲戒免職寸前で「合成麻薬の一斉捜査」の地下クラブに偶然居合わせ、現場にいた宍戸が全員の顔と名前を覚えていたことから一網打尽となり表彰される。
 一緒にいた連中からはネット上で仲間を売ったと非難され炎上、『現役警察官がクラブに居た』など週刊誌で書き立てられる。
 それに対して宍戸は勝手にネットニュースの取材に応じ「俺はもともと仲間をつくることもしないし誰ともつるまない、お前たちの共同体は幻想で、なまっちょろいマザコン趣味だ」と言い放つ。
 このニュースが話題を呼んでヤフートップとなり、ツィートも人物ジャンルでトップとなる。またインタビュー映像が、YouTubeでアップされ、関連バンド演奏動画も含めて全世界1000万回再生を突破してしまう。
 一躍、時の人となった宍戸を、当時の首相が囲みインタビューで 「新しい時代の警察官像」と迎合発言したことから 、警視庁警務部も扱いに困り「懲戒処分は取りやめ」となった。 不良時代に出会った歌舞伎町交番時代の巡査・栗栖(くらっす)が警視庁公安部の刑事となっていたことから、宍戸は異例の推薦を受けて「公安部」兼 「警視庁音楽隊ロック部」という独自の組織に属することになる。

 しかしパンクロッカーの宍戸の信条は『反権力、反資本主義、アナキズム。 ノーフュチャーで破壊的』。国家の犬とも揶揄される公安警察と全く融合することない。

「犯人一人くらい捕まえても何も変わらない。金持ちが支配する世の中、犯罪の町に生まれた人間は犯罪しかしらないんだ。おれは奴らの生き方は非難しないね。俺は自分の考えで行動する。誰の指図も受けない」と助けてもらった恩も忘れて反抗する宍戸を前に、栗栖刑事は「お前はまだ何モノじゃない、お前にしかできない仕事をやってもらう」と説得する。

 そこには新時代の首都防衛は「毒を持って毒を制す」「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という安倉六郎(やすくらろくろう)公安部長の深い考えと、

 一人位間違っても公安部は崩れないというギャンブル的打算があった。

 こうして宍戸は、日本警察史上初の『公安部所属の秘密捜査官とハードコアパンクバンド」の2足のわらじをはく刑事となった。

「イヤなものは、どうしても嫌なんだ。そこに理屈はない」

 それが「パンク刑事」

役者は菅田将暉でお願いします!


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