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【妄想ドラマ企画36】FP刑事(1)

FP(ファイナンシャルプランナー)刑事とは・・・・・・
 警視庁中野署では、3日前に起きた「新井薬師30代独身美人OL殺人事件」の捜査会議が大詰めを迎えていた。
 というのも今朝がた、容疑者として被害者と愛人関係にあったと思われる同僚の既婚者が逮捕連行されていた。取調べを進める一方で、検察への起訴に向け警視庁と合同で容疑のとりまとめをあくまでも形式的に行うことが捜査会議の目的だった。刑事ドラマでもお馴染みホワイトボードをバックに、刑事課係長が議事を進行していた。

「では、今回容疑者の確保に尽力した西村巡査部長報告を」
名指しされた西村刑事は意気揚々と発表しはじめた。
「は容疑者・榊原康夫(32)は、被害者・千野真子(31)と2年前から離婚を前提とした愛人関係にありました。事件当日に被害者宅にて妻との離婚を迫る被害者とトラブルになり首をひも状のもので締め殺害に至ったと思われます」
その報告を聞いていた係長は満足そうな顔をした。
「他に、意見や報告があるものいるか?特にいなければこれで解散・・・」
「ちょっといいですか」
その時、会議室の後ろで手を上げる人物がいた。
「君は誰だ?」
「はい、先月警視庁に特別捜査官採用されました金子浩介と申します」

特別捜査官採用とは・・・
金融庁の「老後2000万円必要」発言以降、国民の間に急速に盛り上がって来た将来の不安とお金の悩み。そんな世相を反映し、犯罪の背景にある損得を軸にした捜査とプロファイリングを行うファイナンシャル・プランナー(FP)捜査官枠で採用されたのが金子だった。

「なんだ、俺たちの捜査に何か不備でもある?」西村が不服そうな顔をした。
「いやそうじゃないんですが、そもそも論として愛人と別れ話になったからって殺人なんてリスク犯すでしょうか?」
「はぁ?どういうことだ」と係長。

「えーっ、殺人をすると会社を首になりますよね

「まぁイコールじゃないけどな、軽犯罪でも首なることはある」

「容疑者は大手銀行勤務です。おそらく生涯賃金は3億円以上ですよ。それを棒に振ってまで人を殺すメリットってなんでしょうか?」
「そんなこと殺人事件の容疑者は考えないだろう。被害者に離婚してくれないと奥さんにばらすとか何とか言われたんだろう」
「そんなわけありません。人間の根本は損得勘定ですよ。奥さんにバレて離婚の慰謝料という話になっても、とても人を殺すほどの金額になるとは思えません」
そういうと金子はスマホを取り出し計算し始めた。
「容疑者と妻は結婚5年目です。一方で愛人関係は2年。100%容疑者が悪いとして、年収が1000万円、妻が専業主婦である場合・・・ざっと慰謝料は500万円ですね」
「おーっ」会議室にうめき声があがった。
「さらに、妻が旦那に愛が薄かったとか、ほったらかされたとか裁判所でごねれば慰謝料70%ぐらいまでは下がります。350万円です。生涯賃金3億円の男が350万円で殺す? 浮気相手も同じ職場ですから、一緒に支払えば負担はさらに軽くなります。殺すに値する妥当な理由がみつかりません」金子は断言した。
慰謝料の話になると途端に捜査員も集中しはじめた。
「さすがはファイナンシャルプランナーだな。その慰謝料もやっぱり子供がいると変わってくるもんか?
係長が興味ありげに聞いてくる。

(明日につづく)

役者のイメージは長谷川博己なんですが

(お知らせ)
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