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冬の準備

 午後からやけに手足が冷たかった。

「急いでコインランドリーへ行ってもらって、ホンマによかったわぁ。すぐにお布団をかけてぇ。助かったわぁ」
 すなおにうれしくて感情が大盛りになり、生まじめな彼を急かしてしまったのかもしれなかった。
「冷房が…」
 普段よりも手を動かしながらは、聞き取りづらくなりやすい。
 彼は、袋からお布団を取り出すのに手間取っていた。

 ぼくは確かめないままに、かぶせるようにつづけた。
「それにしても、今日はお昼からも寒いなぁ。悪寒がするわけでもないんやけどなぁ」
今度こそ、手を止めた彼の声がしっかりと聞こえた。
「冷房がついてますよ」
とても平坦なイントネーションだった。

朝からエアコンをつけた覚えはなかった。サポーター(ヘルパーさん)からのリクエストもなかった。
おそらく、昨日からつきっぱなしだったのだろう。
一日分のエアコン代がもったいなく思えた。

 冷房を消してフカフカのお布団をかぶっていると、なんだか急に、もうひとりのぼくが笑いはじめたみたいだった。

 ここのところのモヤモヤまで晴れた気分になった。


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