ヨンビンホテル 垢すりフルコース小噺
ピンクの台に乗せられて素っ裸で垢まみれになってる自分の姿を俯瞰で見てみたかったわ。
韓国サウナのたしなみ方、メモ。
選手入場
ヨンビンホテルの地下には、健康ランドみたいな風呂場がある。
ホテル宿泊者はお風呂代が無料だと聞いた。
部屋の鍵でもあれば入れてくれるだろう、とりあえず突入したら、あからさまにウザがられた。傷つくだろ。
英語も日本語も全く通じない、野沢雅子さんみたいなおばちゃんが「チケット」と言っていることだけは聞こえたので、とりあえずフロントに寄る。
チェックイン時に風呂チケットもくれりゃいいのに。
と言うのは私の言い分。
あっちはあっちで「風呂に来るまえにフロント寄ってこいよ」なんだろう。イラついたり傷ついたりする前に、疑うべきは考え方の違い。
異国での鉄則だ。
フロントでチケットをもらい、靴箱の鍵を雅子さんに渡したら、ロッカーのカギと小さいタオルとゴシゴシタオルを貸してくれた。
・・・ゴシゴシタオル・・・使い回すのか・・・?
ちなみに私は旅行中いつでも日焼け止めを塗っている都合、マイゴシゴシ持参。
靴箱の鍵はあれですかね、人質。ロッカーのカギを返さないと靴は返さないぜ、と。
なお、韓国の銭湯にはシャンプー・リンスがないのでご持参ください。
雅子からも買えるようです。現ナマとほんのちょっとの勇気が必要。
あとは素っ裸になってお風呂に突入するのみ。
この時、小さいタオルで体を隠しているのは日本人ですよ。
って、インターネットに書いてあったけど、あれ本当ですね。
「あの人なんかおかしいな、あ、日本人か。」って、素人の私でもすぐ気が付いた。
入場したならば、まずは風呂のど真ん中で作業している赤い下着姿のおばちゃんにアプローチをするべし。
ヨンビンホテルの垢すりは朝から地元のおばちゃんたちにも大人気のため、早めに自分の順番を確保しよう。
(おばちゃんも入場者のことをちらちら気にして見ていた。さすが、商売人の洞察力だ。)
垢すりのお金は現ナマで先払い。
料金は壁にでかでかと韓国語と日本語で記載されている。
併記って、何気にすごいよね。
対等な日韓関係は案外場末の風呂場から生まれるのもしれない。
垢すりだけなら25,000ウォンぐらい。
垢すりの前の作法は、体を洗ってお風呂に浸かることらしい。
地元の人を見ていると、マイお風呂セットでせっせとお手入れをしながら体を洗っていく。このあたりは日本とほぼ一緒。
ただ、洗い終わったら椅子を片付けておかないと隣のおばちゃんから圧がかかりますよ。
ヨンビンにはサウナもあった。いざドームの奥へ。
目につくものはどんどん試してみよう。
あ、こちらも素っ裸でどうぞ。
絨毯が敷いてあるので、自分のタオルを持っていってもいい。
蒸気がないので湿気が低く、息苦しくないのがとても心地ちいい。
寒い寒い冬の日に入ったらさぞ気持ちいいだろう。
よもぎ蒸しも初体験
垢すりを待っている間によもぎ蒸しもやってみた。
12000ウォンだったと思う。
雅子に「ヨモギヨモギ」と声をかけると「あ!?なんや!?ヨモギか!?」と、見事なまでの塩対応っぷり。
これ、雅子のデフォルト、びびる前に慣れろ。
マネーマネーと言うので現ナマを渡し、15分ほど準備。
ポンチョを着て、専用の穴あき椅子に座ったら、も、すっげーあっちぃの。燃えるわ!!
穴の底から箱の中を覗いてみたら、まさに丸いホットプレートの中でよもぎがぐつぐつ煮立っていた。
あっちぃあっちぃ言ってたら、雅子が温度調整つまみの場所を教えてくれた。
うちのホットプレートと同じやんけ。
ヨモギ蒸しって、セルフ調整なんすか??
とにかく、自分なりの適温を見つけたので、チョワチョワ言ってみたら、雅子が冷たいコーン茶を持ってきてくれて、それからもチラチラ様子を見に来てくれた。
およよ。実はやさしい?
ちなみに、よもぎの部屋には炊飯器があって、どうやらそれは雅子の昼ごはんらしい。
よもぎで蒸されている私の前でおもむろにご飯をよそいだした雅子。
今回の渡韓でもっとも異国情緒を感じた瞬間だ。
そうそう、ここには雅子の他にパー子さんみたいな専属美容師さんもいて、韓国パーマと韓国カラーはお手の物、だと思われる。
おばちゃんたちはここでパーマあてて、旅行とか会合に行くんだね。
なんでも試したがりのわしも、さすがにこれは棄権。
パー子パーマはまだ早い。
すっかり蒸しあがったら、いよいよ垢すりが始まるよ
担当のおばちゃんに、まず風呂に入って体をふやかすんだか温めるんだかしなさいと指示される。
冷え性の人は、ここ、とても重要。
なんせ施術は風呂の真ん中にあるピンクのビニールシートが乗っただけのベットですから。お腹冷えちゃう。
え?もちろん素っ裸ですよ。恥ずかしいって?いいえ。まったく。なぜならこれはカルチャー。
右のおばちゃんも左のお母さんも、みんな余裕の素っ裸っぷりですよ。
垢すりのおばちゃんたちも赤とか変な色の下着姿だし、どっちもどっちよ、何も気にすることはない。
(何で下着なんでしょうね?水着じゃだめなんだろうか??)
まずは全身垢すり。
おばちゃんが使っていたのは市場やスーパーにも売っているグローブタイプだった。
これなら家にもある。
同じ道具でこそ分かる、プロの腕の見せ所、とくと拝見。
おばちゃんから「あおけ!(仰向けのことらしい)」「よこ!」「はんたい!」と指示が飛び、ぐるぐる向きを変えていく。
人生初めての垢すり・・・まぁ出るわ出るわ、一生分の垢が本当に出た。
全身、裏表横、手の甲から耳の裏まで30分かけて丹念に丹念にすり込んでいただいた。
おばちゃんがチョワチョワ言っていたので、多分あれは「よく出るわねー」と言っていたに違いない。
今私が素っ裸であることより、この一生分の垢のほうがよっぽど恥ずかしい。早く流して!
※思いも虚しく、わしの垢は最後の最後まで流されることはなかった。
最後に顔もやさしくすりすりしてもらい、大きな洗面器でばっしゃーーんばっしゃーんと気持ちいいほど一気に洗い流された。
垢よさらば。
おばちゃんがベッドの上をきれいにする間に、一旦シャワーに行っとけと指示される。
続いて全身オイルマッサージ
おばちゃんの手に鋼の何かでもつけているのかというほど痛かったが、いろんなところのリンパが流れた感はある。
こちらも表裏しっかりやっていただく。
顔をやってもらっている最中、おばちゃんの腹の肉が頭にのめりこんできて今まで感じたことのない感触を体験した。
にくじゅばん、今もあたまに 残るかんしょく
顔マッサージの後は、泥パックっぽい匂いのパック
隣を見ると、やはり素っ裸のおばちゃんがキュウリパックされて、パックが落ちないように網々の布で顔をまかれていた。
あたかも、みかんのネットを頭からかぶせられた人のように。
そんな素っ裸のパックおばさんが3人、公衆浴場の真ん中に置かれたピンクのビニールシートベッドで横になり、そしてそれを誰も気にしない世界線が存在していた。恐怖絵図。
まだまだ続く韓国サウナフルコース。
続いてかかとの角質ケア。
手際のいいこと。至れり尽くせりですわ。最高。
サウナフルコース、フィナーレは洗髪
洗髪するための蛇口が足元にあり、向きを変えろと指示があったので、「あ、はい」と上半身を起こしたその時、そのまま背中を押されピンクのシートの上を滑りながら移動、くるりと体をスピンさせられたかと思うと、あっという間に頭を洗うポジションにピットイン。
意味分かりました?
イメージとしては競りに出されたときの冷凍カツオが一番近いです、カツオ。
あっけにとられたまま、されるがまま寝っ転がったら突然背中にあっついバスタオルが差し込まれた。
「あっちーーーー!」と唸ったまさにその瞬間、隣の垢すりおばちゃんが放り投げたバスタオルが顔の上をすれすれをかすめていった。
もう雑すぎて笑うしかないカオス。
最後に牛乳を顔にかけて終わるらしい。
韓国のお風呂で牛乳ケアする話は何かで読んだことがある。
ラオスのサウナなどでも牛乳がボディケアに使われているのを見たことがあった。
ので、危うく飲まずに済んだ。ヨロブン、これで顔を洗うんですよ。
・・・ウケ狙いでちょっと飲んでみたい気も。
垢すりおばちゃんの腕は確かだった
最後の洗髪まで完璧だった。とてもとても気持ちよかった、今まで払った5000円の中で最も価値のある5000円だった。
帰国後もしばらくお肌がつるんつるん。肌の状態がまったく違う。
「とてもすばらしかった、本当にありがとうございます」としか韓国語で言えないのが本当にもどかしかった。
着替えてロッカーのカギを返すと、雅子は私たちが初めで出会った3時間前と同じ、ぶっきらぼうのままだった。
あれ?私たち、心が通じ合ったんじゃないの?
これ以上思い残すことはないくらいたっぷりサウナを楽しんでチェックアウト。
フロントのおじさんがご丁寧に「また必ず来てくださいねー」と言いながら見送ってくれた。
うむ、また会おう、ヨンビンホテル。(そして雅子。)
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