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不定期連載コラム『君はジャズなんか聴かない』第1回”プロローグ”

先日独りカラオケに行ったところ、隣の部屋であいみょん『君はロックを聴かない』を女の子たちが大合唱しているのが聴こえてきました。おそらく春休み中の女子中高生グループだったのだと思います。いい曲ですよね!昨年この曲がヒットしていることを知った時に「ああ、ロックはついに完全に死んだんだな。」と感慨深い気持ちになったことを思い出しました。もし興味があれば聴いてみてください。(本コラムの趣旨とは直接関係ないので、聴かなくてももちろん構いません。)

↓はYouTubeで観れるプロモへのリンクとサビの歌詞です。

あいみょん - 君はロックを聴かない 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
君はロックなんか聴かないと思いながら 
少しでも僕に近づいてほしくて ロックなんか聴かないと思うけれども 僕はこんな歌で あんな歌で 恋を乗り越えてきた

大名曲、My Little Lover『Hello, Again 〜昔からある場所〜』(1995年リリース/オリコン歴代シングルランキング34位)を良い意味で丸パク…もといオマージュした小林武史プロデュース風のサウンドがアラサーな僕にグサグサと刺さるんだよなあ…。スピッツ要素も入ってますね。よく練られたアレンジです。

それはともかく。このサビの歌詞は、”ロックというジャンルはもはやポピュラー音楽のメインストリームから完全に外れてしまっている”ということを前提にしています

「ロックなんていまどきダサいよなあ。イケてるあの娘は聴いてないよなあ。」

と歌の主人公は自覚しているからこそ”ロックなんか”という言い回しになるのです。

一方でこの歌詞に共感する人がたくさんいて、ヒットしているということは”日本のロックはつい最近まではしぶとく生きていた”ことの証でもあるんですよね。過渡期にある日本を象徴している。アメリカでは10年以上前からとっくにヒップホップとEDMにメインストリームの座を明け渡しているので、こんな歌詞はおそらく成立しません。たとえば『君はフォークなんか聴かない』だと日本でも「は?ちょっと何言ってるのかわかりませんけど?」ってなりますよね。

そんなわけで、昨年2017年リリースのあいみょん『君はロックを聴かない』をもちましてジャパニーズ・ロック没。僕の中で勝手にそう決めました。R.I.P.

ちなみにフジロックも注目されてるヘッドライナーはヒップホップ勢が多くなってきています。ケンドリック・ラマーやN.E.R.D.が出ます。(行きてえ…。)FUJI HIPHOP&ROCK FESTIVALという名称になる日も近そうです。

ロックは死にました。しかし死んだ小説家の作品が価値を失わないのと同様、死んだジャンルの音楽が輝きを失うわけではありません。むしろ個人的には死にかけのジャンルは一度ちゃんとぶっ殺した方がいいのでは?とずっと思ってました。メインストリームじゃないのに、そう思い込んで振る舞ってるのはややダサい、というかソワソワしません?

映画『ベイビー・ドライバー』や『キングスマン』など、昔のロックを劇中でガンガンかけるのが向こうで流行っていますが、あれは”死んだジャンル”=”クラシック化した音楽”だという暗黙の了解があるからこそ、新鮮でカッコよく響くのではないでしょうか。RADWIMPSが引き続き映画主題歌になる日本ではサディスティック・ミカバンドや憂歌団や頭脳警察といった往年のコアなロックが爆音で劇中で流れてウォーーー!!みたいな映画はしばらく出てこない気がします。(公開されたら私は絶対観に行きます。)

前置きが死ぬほど長くなっています。すいません。そんなわけできっと今の若い子の多くはロックなんか聴かないようです。(もっと言うと多様化しまくり、氾濫しまくりのエンタメの中で「音楽自体聴かないもんね」とフィルタリングかけてる人も増えていると思います。)

ましてやジャズなんか聴くわけない。ジャズなんてもうちょうど”三十七回忌法要”ぐらいですからね。でもちょっと待って。漫画『ブルー・ジャイアント』や『坂道のアポロン』のヒットもありますし、昨年はジャズミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』も公開されて話題になりました。『セッション』も面白い映画ですよねえ。そして間違いなく世界で一番イケてるラッパー、ケンドリック・ラマーは前作でカマシ・ワシントンというこれまた一番イケてる新進気鋭のジャズミュージシャンと思いっきりコラボしてます。ジャズは何度でも蘇るクールなゾンビ音楽ジャンルとして存在価値を決して失っていません。ですからきっと(ロックはなんかいまダサい気がするし、あえてちょっくらジャズ聴いてみようかな…。)っていう若者も一部それなりにいるはずです。

しかし!!若者がジャズの門を叩くにあたって日本は不親切ではないでしょうか!!

というのが20年ほどジャズを愛好してきた私の持論です。

今、都内のとある図書館でこの文章を書いているのですが、音楽関係の書架にいくつかジャズ入門書があったのでパラパラめくってみました。私のようなジャズ愛好者にとっては、改めて勉強になる面白い本ばかりです。しかし、たぶんティーンエイジャーが読んだら一発でジャズが嫌いになるのではないかと思います。出版当時と時代が違うので仕方ないのですが、加齢臭とパワハラ一歩手前の押し付けが凄い。

「いいからとにかく名盤を聴け、感じろ!」とか「とりあえずライブハウスやジャズ喫茶に行ってみるんだ!」とか。しんどくないですか?(きっともっと親切でやさしい素敵な入門書も既にあるのかもしれません。すいません。)

私が思うにジャズを好きになれるかどうかの分かれ目は、以下のほーんのちょっとの2つの”教養”を持つことができるかどうかです。(かの山下達郎先生も『ジャズは理解するのに”教養”が必要な音楽である』とおっしゃってました。)

①ほーんのちょっとのルールの理解

②ほーんのちょっとの歴史と経緯の理解

これだけです。これさえ勉強すれば、ジャズを楽しめるのですが、多くの入門書はこれをすっ飛ばしていきなり名盤の名盤たるゆえんであるとか、レコードショップでのディグり方や、ライブハウスやジャズ喫茶でのお作法を紹介してくるので「?????」となってしまうのだと思うのです。(落語も同じようにほんのちょっぴりの教養が要ると思うのですがたくさんいい入門書があるからいいよなあ。)

この連載コラムは上記の①②の

ジャズを聴くのに必要な”教養”を、あんなジャズやこんなジャズで人生の色んなシーンを乗り越えてきたアラサーミーハージャズ愛好家が、自身のジャズ論の整理がてら、皆さんにできるだけわかりやすくお伝えしていきたい。

という趣旨のものです。

「ジャズ聴いてみようかな」「ジャズ、昔聴いてみたけどよくわかんなかったなあ。」という方に読んでもらえたら嬉しいなー、と思っています。

ちなみにこういった趣旨にかなり近いコンテンツとして、ほぼ日刊イトイ新聞の『はじめてのジャズ』という連載があります。糸井重里さんと、日本のジャズピアニスト第一人者の山下洋輔さんと、早大ジャズ研出身ジャズマニアとしてもお馴染み、タモリ(!)さんのトーク&ライブイベントの模様がテキスト化されています。めちゃくちゃ面白くてわかりやすくて最高です。きっと実際にイベントに足を運んだ方の多くはジャズの扉をすんなり開けたんじゃないかと思います。しかし、誠に恐れ多いながらも、10年以上の時間が経過したこともあって、ちょっぴり不親切な部分もあるかなあ、という思いもあり。そんな部分を補完できたらいいな。もちろん、予習がてら『はじめてのジャズ』をご覧になってもよろしいかと思います。

さて、今回は果てしなく長い前置きでした。

次回はジャズにおける『①ほーんのちょっとのルールの理解』について書こうと思っています。

今回を含め全三回を予定していますが、①②それぞれ前後編に分かれたりするかもしれません。特に回数や内容、更新頻度を決めて書いているわけではありません。なぜなら、次回の伏線的に言っておくと

アドリブがジャズの醍醐味だから!

それでは、もし興味を持ってくれた方いらっしゃれば、次回をお楽しみに。


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