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夜を使いはたして

ただの日陰なだけのくせして、 夜は詩的なふりをする。

    • 全ての風景を重ねてこうなんて

      子どもを連れて散歩にでかける。 近所の大きな公園にむかう。 妻の運転する車にのり、 後部座席で子供と戯れて、 ついたらトランクからベビーカーを下ろす。 冬の公園は人もまばらだ。 犬の散歩をするおばさんが二人いる。 ジョギングをするおじさんに追い抜かれる。 小さな子供がお父さんにむかってボールを蹴っている。 僕と妻は子供を乗せたベビーカーを順番に押しながら、 公園の中を歩いていく。 夕飯は何にしようとか、洗剤切れてたねとか、 そういう話をしながら歩いている。 お年寄りがバード

      • Welcome to my room

        ユニクロ着て ユニクロ来て ユニクロ買って ユニクロの袋に入れて ユニクロから帰って ユニクロだらけのクローゼット開けて ユニクロの店で買った ユニクロの服を掛けて ユニクロの店に着てった ユニクロの服を脱いで ユニクロの服に着替える (吉岡透著『あるいはユニクロでいっぱいのクローゼット』)

        • むきだしのロマンスはクレイジー

          職場の健康診断の日だったので、 朝起きて尿を取った。 いつもはスーツにシャツで通勤するが、 どうせ今日は健康診断、 短パンにポロシャツ、ビーチサンダルで職場に向かった。 職場につくと、どうも様子がおかしい。 みんなスーツをきてパリッとしている。 楽園ベイベーな恰好をしているのは僕だけ。 「あの…、健康診断って今日じゃ…?」 「え、いや明日ですよ?」 私一人、浮かれた格好で浮いている。 自分のバカさ加減に拳を握りしめる。 検尿の容器がギュッと音を立てる。

        夜を使いはたして

          僕は死んでもいいから

          死ぬのが怖い。 6歳の春に、死の概念を学んだ。 僕は家の廊下で遊んでいて、外は晴れていた。 どういう流れだったか忘れたが、父が僕に言った。 「この世で生きているものは、いつか、最後は、 全員、必ず、永遠に眠るんだ」 僕は今一つ意味が分からなかった。 多分幼い僕に死を理解させるために、 「眠る」と比喩を使ってくれたんだろうが、 そのせいで死の本質が見えてこなかった。 父は随分深刻な顔をしているが、 眠ることなら、僕だって毎晩しているし、 だったらあまり怖くないやと思った。

          僕は死んでもいいから

          あれから毎日がレイニー・デイ

          物語において天気は主人公(及びその場面での中心人物)の心情を表す。 「こんな家、出て行ってやる!」と飛び出せば、 必ず雨が降ることになっているのだ。 晴れの日がつらい時がある。 「お前も頑張れよ!」と、 背中を強くたたかれている気持ちになることがある。 いや、はあ、あはは……はい。 陰気な人間は日の光に重さがあることを知っている。 梅雨である。 気分は晴れない。 外は雨で、なんだか強くなってきた。

          あれから毎日がレイニー・デイ

          僕は君のHero

          朝起きたときに、 「あ、今日はもう、無理だ」と分かったから、 職場に電話して仕事を休んだ。 時間が生まれたから、映画館に行った。 「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が観たかったんだ。 チケットを買って、受付に行った。 ら、 受付に人がいなかった。 そりゃそうか、金曜の真昼間だ。 こんな時間からアニメ映画見る奴なんているわけない。 だから店員さんだってバックヤードで休憩でもしてるんだろう。 何をするともなくしばらく待っていたら、 「すみません!」と言いなが

          僕は君のHero

          首吊り台から

          今夜寝るのが怖い。 俺は今夜寝たら死ぬ気がする。 頭の中がカチャカチャ言うんだ。 俺を吊るす首吊り台を設置する音だ。

          首吊り台から

          痛覚は孤独を感知して

          気分が鬱々として晴れない。 なんだ、人を殴ればいいのか。 乱暴なセックスをすればいいのか。 酒は無駄だ。それは知ってる。 心に薮が茂って、人の言ってることが聞こえない。 お前はさっきから何を言ってるんだ。

          痛覚は孤独を感知して

          誰かが「ねぇ」私に向かって叫ぶの

          モー・シズラックはケイティ・ペリーにクンニリングスしたことがあって、 僕はそれを見ていたから、とても羨ましかった。 でもモーの人生は羨ましくない。 ケイティ・ペリーの女性器の味ぐらいじゃ覆せない。 君が高校生の頃好きだった子とセックスしたことがある。 彼女の服の匂いも、柔らかい陰毛の手触りも、 まばたきの音も吐く息の温度も、 あの秋の午後6時のことは全部君にあげる。 だから僕の人生と君のを交換してくれないか。

          誰かが「ねぇ」私に向かって叫ぶの

          短針が

          短針が 若い素数を 指して居る 「生活」なんて したくなかった

          短針が

          できるなら

          できるなら 今日この夜を セーブして 死にたい夜に ロードするのだ

          できるなら

          この世界のことだったら

          実家に帰省した。 少し前に母から 「久しぶりに食事でもしよう」と呼ばれていたからだ。 仕事が忙しい頃だったから、ずいぶん断ろうかと悩んだけど、 思えば、最後に帰省したのはいつだったか思い出せない。 もうかれこれしばらく経つものだから、 久しぶりの母の誘いを断るのも気が引けて、 「わかりました」と返事をした。 母に会うのは久しぶりだ。父に会うのも久しぶりだ。土産でも買ってくか。 僕には姉が二人いる。少し歳が離れている。 だから小さいときはずいぶんいじめられた。 姉が家に

          この世界のことだったら

          昨晩の

          昨晩の 夢で聴いてた ラジオでは 今日は午後から 猫が降るって

          昨晩の

          すみません

          すみません 今日は少しだけ 遅れます 昨夜はやけに 星が綺麗で #短歌

          すみません

          世界のにっぽんおとぎ話

          昔々あるところにこぶのついたお爺さんと継母がいました。 ある日お爺さんがカチカチ山に芝刈りに、 継母が川に洗濯をしにいくと、 川の上流から光る竹がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。 継母が家に帰り金の斧で竹を割ると、 中から一寸しかない男の子が生まれました。 男の子はとりあえず太郎と名付けられました。 太郎はすくすくと成長しました。 体中から異様に垢の出る体質で、 その垢を使って人形を作って遊んでいました。 太郎は大きくなり、ある日お爺さんと継母に

          世界のにっぽんおとぎ話