見出し画像

どどまるくんの小道


(私の体験をもとにしたフィクションです)

あるところに
未熟な占い師 どどまるくんがいました

どどまるくんは、無知で無謀で無茶で幼稚なおばかさん
占いを知る前、何度も何度も失敗しては
同じところをぐるぐるまわってばかりでした

そんなあるとき、星の理(ことわり)を教えてもらい
その深遠さ、神秘さ、楽しさにすっかりはまり込み
夢中になってしまったのです

何より、自分がどうしてこんな運命なのか
何度も失敗ばかり繰り返してしまうのか
それを知りたくて…
たくさんの本を読み 話を聞き 同好の友と語らい合いました

最初は自分の星のかたちを観るのが楽しかったのですが
もっとたくさんの星のかたちが観たい!と
お友達や知り合いの生まれた日を教えてもらい
夢中で読み解きました

大きな事件や災害、悲しい出来事やスキャンダルなども
どういうかたちが出て、どうしてこんな結果が出るのか
それを確かめるため、何度も、何度も読み解いたのです

そしてある時、気が付きました
「なんと!こういう事故や事件には、こんな共通点がある!」
「地震や水害が発生する時にも共通点が!」

すっかり星に魅せられたどどまるくんは、
これをうまく使えば、災難を事前に防ぐことが
できるのではないか!と胸がドキドキしました。

他の星をみるお友達も、同じ考えでした。
星を見る楽しさだけでなく、もっとそれを有意義に使える!と。

それから どどまるくんは
たくさんのデータを持ち寄り、並べて研鑽して
そして今度は未来の星のかたちを出して並べて
これは?という日を見つけ
「よし!このかたちは危ないぞ!みんなに警告するんだ!」と
大きくラッパを吹き鳴らしたのです。

さてその日…

何も、起こらなかった。

それはとても良かったことのはずなのに、
なぜかどどまるくんは悔しかった。
彼は、当たることばかりを考えていたからです。

おろかな どどまるくんは、何度もそれを繰り返しました。
そのうち、どどまるくんのラッパを聴く人は、誰もいなくなりました。
どどまるくんに石を投げる人もいました。

お友達もみんな離れていきました。
なぜなら、どどまるくんはお友達の星のかたちを見る時
星のかたちに吉凶を決めつけて
それで人のかたちも決めつけるようになったからです

「君はね!犯罪者を引き寄せる星のかたちを持ってるんだよ!
 だから人より気をつけなきゃ!それも一生だよ!」

ほとんどのお友達は、悲しい顔をして静かに離れていきました。

どどまるくんは、不思議でした
どうしてだろう?みんなの幸せのために言ってるだけなのに…
トラブルを防ぐためには、必要なのに…

どどまるくんは、続いて、大きなニュースになっている事件や事故を
星で読み解いてラッパを吹き鳴らしました
災害とは違い、自分に直接関係のない人や集団のことは
興味を持つ人も多かったので、そのラッパは人気がありました
たくさんの往来の人が立ち止まって聞いてくれるようになりました。

どどまるくんはすっかり得意満面
自分は間違ってなかったんだ!
気がついた共通点をもとに、どんどん読み解いていったのです

ある日、久しぶりにあったお友達のひとりに、
どどまるくんは慌てて呼び止めて警告しました。

「会いたかったんだよ!えーと、危ない日を言うね、それは…」

「もういいよ!どどまるくんひどいよ!そんなこと言ってどうするの?
 君がいうことばには、救いがないよ!
 悪いかたち があるって!それが消えないって!
 それを聞いて、どれだけ怖かったかわかる?」

その騒ぎを聞きつけ、大きな人だかりができました。
その中でひとりが、泣きながら言いました。

「先日のラッパね、被害を受けた人、僕は本当は親戚だったんだよ。
 大怪我をした人やその家族が、どれほどラッパを聞いて苦しんだか…!
 自分が持っていた かたちが悪かったの!?って
 本人や家族は自分たちを責めて、こんなことなら死にたかったって…
 苦しんでいるんだよ…!」

ええ…?
そんな馬鹿な…?

救い?
僕は人を救うために星を読んでいるのに…

違う…
どどまるくんは気が付きました

僕は、相手の星のかたちばかり見ていて
相手のことを、ちゃんと見ていただろうか
ちゃんと、聞いていただろうか

相手のことなんか、ホントはどうでもよくて
星が観たいっていう好奇心だけで読んでなかっただろうか

相手が振り向いてくれるのが嬉しくて
つい、大げさに話を膨らませて話してなかっただろうか

僕は…いったいなんのために……

すっかりしょげかえり
どどまるくんは丸まって
ダンゴムシになってしまいました

どれだけ時間がたったことでしょう

しずかな声がどどまるくんの耳に届きました


どどまるや、よくお聞き
これほど数多の星が織りなす理を
小さなお前が全て読み解けるわけがない
星は無限だが、お前は有限だ
小さくて、無知蒙昧な人間なのだ
それを決して 忘れてはならない

お前がもっている鍵は、その中の一部の筋をやっと読み解けるもの
万能の魔法ではない、道具なのだ
道具にはできることに限界があり
危険な面もある
それを知らないものが、どうしてそれを正しく使うことができよう


「正しく…?
 正しくってなんだろう?」


それこそ、星の数だけある「正しさ」だが…
お前自身の正しさ、とは。
それはもうお前は、気づいているはずだ

眼の前の人がどうやって幸せになれるか
それが「お前の正しさ」だ

たとえそれが小さくかすかなものであったとしても、
迷った者には間違いなく目印となる

そのための灯明とならんことを…


どどまるくんが丸まりから解けた時
頭上には満天の星空が広がっていました

ああ、星はたくさんあって。
そこから降りてくるものは、ほんと限られてて。
それを完全に見つけることは、難しい。

かたちのルールも、たくさんあるんだ。
いろんな角度から、見なきゃいけないんだ。
だから、決めつけちゃ、だめなんだ。

眼の前の旅人が求めるかたちはいろいろ。
それをしっかり見つめて 聞き出して
彼が迷わないように、
彼がくじけないように
一生懸命、言葉を探して、
小さな明かりを伝えなきゃ、ならないんだ。

いろんな占い師がいるけど
少なくとも、ぼくは、そんな占い師になろう。

どどまるくんは、ラッパを足元に埋め
星空の下、小さな明かりだけ携え、とことこ歩き出しました。

星の理が導く小道へ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?