PR=経営っていうけど、社長自ら広報しろってわけじゃない

広報計画は経営戦略のなかに組み込むべきとか、PRは経営メンバーが考えるべきこととか、「経営」と「PR」の距離がお近づきになりつつあります。このふたつは、本来一緒に考えたほうがいいものですよね。

でも、PRは経営そのもの!という考え方に基づくと、こういう意見が生まれてきます。

「PR=経営っていうなら、社長が自分で広報やればいいんじゃないの?」

「広報よりも社長の言葉で伝えたほうがダイレクトに響いてよくない?」

「社長ブログやnoteで、社長自ら発信しまくるのが一番いい広報では?」

広報、社長が自らやればいい説。

どうもこれは……って感じです。PR=経営って、社長が自ら広報活動するってことなのかな?てことと、広報担当の存在意義についてお話します。

(ちなみに、企業の形も本当にいろいろなので、一部にしか当てはまらないかもしれません。スタートアップ、ベンチャー的な事業会社寄りの視点です)

社長にPR視点は超大事だけど

社長自身がPR視点を持つことは、とても価値が高いです。

PRとはPublic Relationsのことで、会社の価値観や考え方、ビジョンやストーリー、目指したい世の中の在り方などをしっかり伝え、コミュニケーション通じて社会と関係をつくっていくこと。この視点を社長が持てば、社会の反応ありきで事業計画や開発スケジュールを立てるなど、世間からどう見られるかを常に意識した意思決定ができるようになります。

たとえば、AmazonではWorking-Backwardsという開発手法を取り入れていて、プロダクト開発のまえにまずプレスリリースを作成してしまいます。「エンドユーザーの反応」から逆流して開発を行っていくことで、社会に求められない製品を作ってしまうリスクを減らせるからです。

PRに注目する経営者はだんだん増えていて、たとえばメルカリの小泉社長は、「PRをおろそかにする会社は絶対に勝てない」とおっしゃっていたり。感覚ですが、これからの時代、経営者自身のPR理解度がクリティカルに事業の伸びに影響するようになっていくだろうなと思っています。

ちなみに、PR=広報でもないし、広報=情報発信でもないので注意です。

最近はオウンドメディアやSNS、noteなどで簡単に情報発信ができるので、社長が自ら発信活動を行うのは時代にあったいい動きです。でも、それを「社長自ら広報(PR)」と言っているなら、かなり全力で訂正したい。

PRパーソンは情報発信屋さんじゃないんだよ……。

社長がやってはいけない、広報の役目がある

社長という生き物は、自社のカルチャーや製品・サービスに、絶対的な自信と誇りをもっていないといけません。

自信をもって会社を打ち出し、ビジョンとストーリーを掲げ続けることが社長の仕事。世の中も社員もひっくるめて導いていくリーダーという存在なので、「素晴らしいでしょ!」と言い続けなければなりません。社長が弱気なことを言い出したら、メディアも世の中もついてきません。

でも、広報担当はそれではダメです。

PRパーソンには愛と共感が必須ですが、広報に必要なのは「冷徹な愛」なんです。会社のことを心の底から愛しつつも、ときに客観的に欠点や落ち度も見つめ、冷徹に突き放す。自社ベタ褒めでは通用しない仕事です。

「自社」と「メディア」の中間に立って、情報をチューニングするために広報がいます。だから広報担当はメディアに自社のことを紹介するとき、あくまで客観的にファクトを伝え、社会背景の上に自社のストーリーを成り立たせ、世の中の流れと自社がもつファクトを関連付けなければなりません。自社の面白くない部分や足りない部分もしっかりと認めて、それを補うための切り口や周辺情報も提供できるくらいじゃないと。

これは社長にはできない、というか社長がやってはいけないことです。繰り返しますが、社長の役目はビジョンとストーリーを掲げ続けること。広報に求められるスタンスとは相反する部分があります。

ポジティブに発信し続けるべき社長と、批判的な視点をもってニュートラルに情報をコントロールすべき広報。2者の役割がきちんと棲み分けられてはじめて、PR活動は統合的にうまくいくと思います。

PRパーソンは社長直下に置き、経営との連携を

では、社長はどこにPRを取り入れるべきかというと、

「PRの視点をもって、経営の意思決定をすること」

これに尽きます。あくまで社長がやるべきは、PRの概念と視点をもったうえで意思決定をすることで、PR実務は任せておけばいいはずです。PRには、

①概念…Public Relationsの考え方・在り方
②戦略…①を取り入れた長期的な広報計画
③手法…②に基づいて行われる実務・施策

という3つくらいの階層があり、社長がやるべきは①と、②の上流部分くらいまで。③の部分は、経営者がタッチするとおかしなことになるんじゃないかな。

まずはPRの概念を理解して、広報担当と一緒に戦略を考えていく。その全体的な戦略のなかで、経営の判断が必要なところをちゃんと拾って、意思決定をしていきます。

現場レベルの戦略は広報担当でも実行できるけど、どうしても経営からの落とし込みが必要な領域ってあります。たとえばスタートアップの広報ネタづくりの常套手段として「他社とのコラボ」というものがありますが、あれは広報担当の意見を汲みつつ、経営層が判断してくれないとできません。

営業活動をするにしても、長期的なPRの視点をもつと、「すぐに利益は出ないけれど、この案件は注力して獲得しよう」といった方向性の判断ができるようになります。資金調達のリリースばかりバシバシ出すとか、サービスローンチタイミングを見誤るとかもなくなります。

あとは実務とかぶるところでいうと、広報担当に頼まれたら一緒にメディアに会いに行くことくらいですかね。社長が直接来てくれることでまとまる話もあります。同行、お願いします!

社長は黙ってビジョン語っててください、と言える関係性

「社長」と「広報」の距離感って、「社長」と「秘書」くらいになるべきだし、近いうちになっていくと思っています。マーケティング部隊の中の一部でも、並列の広報チームでもなく、社長室に広報を置くべき。

広報担当は、PRの力を使って経営環境をよりよく整えて、社長をストーリーテラーで居続けさせることに徹しましょう。広報は社長に物申せるくらいでいるべき、というのはPR界隈ではよく聞く話。「何も気にせず語り続けてください、あとは私がやっとくんで!」くらいの関係が、理想的だと思います。

実は、ここまで書いておいてなんですが、社員数10〜15人くらいまでは、社長もしくは社長と同じレベル感で事業に取り組んでいる2番手くらいが広報をやってうまくまわるケースもあります。

まだその段階では、ビジョンや会社の目指す方向に強く共感して集まってきた精鋭のみで、日頃のコミュニケーションのなかでいくらでも社長のマインドに触れられるから。それに、まだそういう軸みたいなものが流動的で、任せるに任せられない現実もあるある……。

ですが、10人、最大でも15人を超えたころから、それだとおかしくなってきます。社長が一人ひとりと密にコミュニケーションを取れなくなって、心が離れてしまう社員が出てくるからです。(もう、スタートアップのセオリー通りすぎて、泣ける)

従業員数が増えてくると、社内に向けた語りがほんとうに大切です。会社の業績が思わしくないとすぐ営業やマーケティング強化に走りがちですが、意外とインナーコミュニケーションが一番大事。

丁寧なエンプロイ―リレーションでビジョンを浸透させ、従業員のエンゲージメントを高めていけば、圧倒的に社員ひとりひとりのパフォーマンスが上がるからです。実はこれが採用にも営業にも聞く、一番コスパのいい施策だったりして!

社長をいい意味で“使いこなす”ことができる広報担当がいると、成長に伴ってドロドロしがちな企業内の血流をヘルシーに保てるのです。

さいごに

結論、社長が自ら広報することで失われてしまう価値もあるし、広報というポジションはいつまでも必要、という話でした。

経営者って基本的に優秀だから、シャチョーがPRスキルまで身につけたらコーホーがなくなっちゃうよ……!という不安もあったかもですが、それぞれに重要な役割があるはずなので、そこは安心していいかなと思います。

今でこそ、マーケティングチームの中に含められてしまったりする広報ですが、社長が自らやるという発想が生まれてしまうくらいには、本来はレイヤーの高い職種です(レベルが高い低いとかの話ではない、企業活動全体のなかでのレイヤー的な)。

これからはPRがビジネスパーソンの基礎教養になるはずなので、日々高めておいて損はないです。社長も広報も、それぞれの役割でがんばっていきましょう!

おわり。


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Ryoko Wanibuchi

#PRの現場から

PRや広報のについて考えているあれこれ、企業経営との絡め方などを現場目線でお届けします。
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