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日本の夏に帰ってきて思うこと

お盆前のある日、ちょっとだけ久しぶりに日本に帰国した。

房総半島に広がる田んぼを見降ろしながら「うわー、こんな田舎だっけ」と感激し、飛行機から一歩外に出ると、むわっと暑い空気がまとわりついた。一瞬、東南アジアかな?と思ってしまった。なんだか、匂いまでバンコクっぽかった。

もはやおなじみとなった某うどん@第三ターミナルで念願の日本食を堪能し、家へ向かう。どうでもいいけど、このうどん屋は昔、仕事で担当していたことがある。かつて取材対応に追われていたうどんが、今では母国を感じるソウルフードみたいになってしまっているのだから、なんだか人生は皮肉に満ちている。



翌日コメダ珈琲に行ったら、キンキンに冷えたアイスコーヒーに無料でトーストが付いてきた。サクッとあたたかいパンに、じゅわっと染み込むバター。たまごペーストを塗って食べる。お水とおしぼりも付いてきた。なんて最高なんだ!

そんな感動をよそに、相変わらず仕事は続く。昨日までは微妙に寒いゴールドコーストのカフェで遅いWi-Fiに悩まされながらやっていた仕事を、今日は神奈川県のコメダ珈琲で自分のモバイルWi-Fiをつなぎながら片付ける。

自分以外のすべてが何もかも変わりすぎているのに、自分だけが圧倒的に変わっていない。なんだか私の肉体とMacBookがまるごとヴェールに包まれ、真空パックのままタイムスリップしてきたような感覚に陥った。すごく変な感じ。

飛行機から延々眺めていた茫漠とした海を思い浮かべ、「リモートワーク」という言葉を心のなかで浮かべる。やっぱり滑稽で、みんなよくこんなことやってんな、と吹き出しそうになる。



夏のテレビは、戦争のことばかり。終戦から74年だという。

20年以上も夏休みの風景として流し見していたものたちに、今は自然と感謝があふれる。すごくありきたりな言葉になってしまって悔しいけれど、「平和」は当たり前じゃない。こうやってひとりの人生分くらいの時間を語り継ぎ、紡いできたから今がある。きれいごとでも何でもなく、素直な気持ちでそう思っていた。

一方で、ずっとネットで見ていた吉本騒動が取り上げられていて妙に見入ってしまった。ああ、これって、この国で本当に起こっていたことだったんだな、とようやく繋がる。ネットですべてを追えるけれど、海外にいるとどこかリアリティに欠けるものだ。


ツイッターのなかの世界は変わらず動いているようなので、改めて覗いてみる。

とあるツイートを見た。日本に一時帰国中の人が、日本のおかしなところについて意見を言っている。これだから日本は……などと。海外在住者からは共感の声が集まっていた。

こんなに素晴らしい国に帰ってきているのに、日本の嫌なところばかり目についてしまうのは、純粋にかわいそうだった。美味しいごはんをちゃんと食べたかどうか心配になった。

もうひとつツイートを見た。海外在住女性が、日本で流行っている女性のファッションが理解できないと写真をあげて批判していた。クソ暑いのにマキシワンピの下にデニムを履いてなんとか……など。こちらも海外在住者から「日本のトレンドがわからない私自慢」が集まっていた。

これも本当にかわいそうだな、と目が細くなった。型にハマらない自分に価値を感じている本人が、誰より型にとらわれている。型にハマらない私という型に見事にハマってしまっていることに気づいていないのだ。日本を批判することで、グローバル思考が身についた自分に酔いしれる。そうやって相対化することで自分のランクが上がったかのように錯覚して、なんとか正当化しないと生き延びられないのかもしれない。

そんな傍ら、私はスーパーでビニール袋に包まれまくった野菜たちを見て、たまらなく愛おしい気持ちになったりしていた(オーストラリアでは野菜はすべてむき出しだ)。まるでエコではないけど、このビニール袋は日本人の思いやりの権化である。日本は日本なりに頑張っているし、自分たちの基準で正しいと思うことをしているだけなのに。何がそんなにわるいんだっけ?



「みんな日常に感謝するのを忘れすぎ」

帰ってきてたった2日で、これがものすごく感じたこと。こんなに素晴らしい国に生まれ落ちておきながら、みんな、何を贅沢言ってるんだか。

生きづらいとかなんとか、文句を言って。世界の良いところを自慢しては、日本を下げて。いやいや他の国に住んでみた?って言いたくなる。もちろん海外ならではのよさもたくさんあるけど、日本で暮らすのはハイパーイージーモード。めちゃくちゃ暮らしやすいし、すべてが整ってる。最高のサービス、クオリティ、安心安全であたたかい人々。本当に、いろんなことへの感謝があふれる。

こんなに素晴らしさに気づけるのなら、何度だって一時帰国したい。

もっと、良いところに目を向けたほうが、ハッピーじゃないですかね。そんな気持ちに落ち着いちゃって、令和初のお盆を迎えようとしています。






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