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ビリヤードとダーツと、8年後のある夜

学生のころ、ビリヤードとダーツにハマっていた時期がある。

きっかけは何だったか。思い出せないけど、まあ多くの学生がそうであるように、バイトの先輩なんかに連れられて〜だったと思う。

女子会よりは男っぽい遊びのほうが好きで、男友達とそういう遊びをしているほうが楽しかった。普段は女扱いなんてしないくせに、ゲームのときだけちゃんとハンデを付けられて拗ねていた気がする笑

そのうちに大学の友達にもハマる子が増えてきて、学内のコミュニティでもやるようになった。ふつうの大学生の、極めてふつうの遊び方。


ビリヤードは2〜3人でナインボールやエイトボールをやり、壁を使ったり違うボールに当てて間接的に狙ったり基本的なテクニックを教わった。

上のほうを突くと進み続けるスピンがかけられ、逆に下を狙うとバックスピンで戻ってくる。シンプルな力学が面白くて、ぴょんと跳ねさせるジャンプショットくらいまで習得した。

ダーツのほうは全然うまくならなかったけど、ルールはひと通り覚えて夜通しプレイし続けたりした。

まずはカウントアップから。飽きてきたら、ゼロワンやクリケット。たまにまぐれでBullに入っても、いつまでも笑えるくらい上達しなかった。なにかが根本的に間違っていたのかもしれない笑


北海道にふらふらときて、ニセコの雪山を拠点にする人たちと、久しぶりに何も考えずにビリヤードとダーツで遊んだ。

最初は悲しいほどに忘れていたけど、3夜連続くらいで遊んでいたら徐々に感覚が戻ってくる。「雀百まで踊り忘れず」とかいうけれど、20歳前後でもけっこう身体に染み付いているものだ。

何のしがらみも制約もなくただダラダラと遊ぶ機会は、すっかり少なくなった。なんだか「これでいいなあ」とか思ってしまって、ここ最近の欲の薄さに放心した。


ずっと気を張って、気を遣って、やってきたような気がする。「本来の自分」とかいうと若干気持ちわるいけど、もともと私はこうやって自由に遊んでいる人だった気がする。大人になると、無駄に真面目なところばかりが出る。何者でもなくても、ほのぼのとしあわせだったらそれでいいのに。

そんなことを思い出すには、この2つのゲームは絶好のツールだった。初めて会った人とも仲良くなれて、共通点がひとつもなくてもただその時を楽しめる。どうでもいい遊びも、案外大事かもしれないなあ。


こういう遊びって何の身にもならないように見えて、けっこう生きていくのに必要なんじゃないかと思う。仕事に役立ったこともあったし、知っていることでスムーズになった人間関係もたくさんあった。

海外では社交ツールでもあるし、大人になってろくにルールもわからないようだとけっこうツライ(言いたくないけど、特に男性は)。そう考えると、わりと人生の教養レベルで必要なことなのかも。


最近の学生たちは、スキルアップや仕事経験をすることに躍起になって、あまり遊んでない人が多いなあとわりと深刻に感じる。

プログラミングを身につけたり、休学して週5でインターンをしたり、それで得られるものも大きいと思うけど、そのぶん失っているものにも少し目を向けたほうがいい。たぶん、社会人になってからでも全然遅くない。


ビリヤードやダーツなんてほんの序の口。カラオケやクラブオールもいいし、病院送りにならない程度にお酒を飲みすぎることも大切だ。あてのない旅に出てみるのもおすすめ。健全にアウトドアもいいし、不健全なあれこれでもいい。ちょっとくらいハメを外すのもよい経験。

大人になったら遊べないから今のうちに遊んでおけ、という意味ではなくて。私のまわりの大人たちは、社会人のほうが楽しいと言うような人ばかりだから、それは心配しなくて大丈夫。

けど面白いことに、そういう大人たちほどしっかり遊んできているし、仕事の企画ひとつにも遊びの要素をサラッとかましてきたりする。遊びゴコロは、遊んだ経験しかうまれない。引き出しをたくさん作るのは遊びだ。

躊躇なく手当たり次第バカみたいに手を付けられるのは、やっぱり若いうちだなあとも思う。

年を重ねるほど、何かをやるためには何かを捨てなければならなくなるから。そして、その取捨選択を誤らずにできるかどうかは、昔どれだけちゃんと遊んだかにけっこう依存する気がしている。


いつだって、今しかできなくて、かつ意味があるかわからないことをすべきじゃないかな。最終的に人間に深みを出すのは、何の役に立つかもわからない「寄り道」や「無駄」と思える経験だと思う。

脇目もふらずに最短ルートを突っ走ると、たしかに早くは着ける。けど、そのうち壁にぶち当たったときに、壊す道具をひとつも持ってないかも。寄り道して拾い集めたガラクタに、きっといつか救われる。

意味ない寄り道、もっとたくさんしよう。そんな今日の価値観でした。


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